goo

心象スケッチ 林中乱思

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)

   心象スケッチ
    林中乱思
      
   火を燃したり
   風のあひだにきれぎれ考へたりしてゐても
   さっぱりじぶんのやうでない
   塩汁をいくら呑んでも
   やっぱりからだはがたがた云ふ
   白菜をまいて
   金もうけの方はどうですかなどと云ってゐた
   普藤なんぞをつれて来て
   この塩汁をぶっかけてやりたい
   誰がのろのろ農学校の教師などして
   一人前の仕事をしたと云はれるか
   それがつらいと云ふのなら
   ぜんたいじぶんが低能なのだ
   ところが怒って見たものの
   何とこの焔の美しさ
   柏の枝と杉と
   まぜて燃すので
   こんなに赤のあらゆる phase を示し
   もっともやはらかな曲線を
   次々須臾に描くのだ
   それにうしろのかまどの壁で
   煤かなにかゞ
   星よりひかって明滅する
   むしろこっちを
   東京中の
   知人にみんな見せてやって
   大いに羨ませたいと思ふ
   じぶんはいちばん条件が悪いのに
   いちばん立派なことをすると
   さう考へてゐたいためだ
   要約すれば
   これも結局 distinction の慾望の
   その一態にほかならない
   林はもうくらく
   雲もぼんやり黄いろにひかって
   風のたんびに
   栗や何かの葉も降れば
   萓の葉っぱもざらざら云ふ
   もう火を消して寝てしまはう
   汗を出したあとはどうしてもあぶない

     <『校本宮澤賢治全集第四巻』(筑摩書房)>
 
《鈴木 守著作案内》
◇ この度、拙著『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)が出来しました。
 本書は『宮沢賢治イーハトーブ館』にて販売しております。
 あるいは、次の方法でもご購入いただけます。
 まず、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければ最初に本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円、送料180円、計680円分の郵便切手をお送り下さい。
       〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守    電話 0198-24-9813
 なお、既刊『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』につきましても同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。

『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』   ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』   ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』

『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』            ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著)

◇ 拙ブログ〝検証「羅須地人協会時代」〟において、各書の中身そのままで掲載をしています。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 〔降る雨はふ... 〔鉛いろした... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
 
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。