空蝉ノ詩

蝉は鳴く。地上に生きる時間は儚く短い。それでも蝉は生きていると。力の限り鳴き叫ぶ。私も今日、力の限り生きてみようか。

332編 「止み」のblog

2017-12-28 04:40:13 | 阿呆烏
不安な空
「止み」のblog 

心の病は
闇であり
止みでもあった

大寒波で
外は白銀の世界
穢れた心や地上の醜いもの汚いものまで
真っ白な雪は
覆い隠してくれる
だれも歩いていない路を
散歩するのは気持ちがいい

止みが続いたblog
どこかで途切れるかもしれないが
北風に飛ばされた凧みたいに
消えぬよう気をつけなければ


331編 自分が嫌になった

2017-12-23 15:05:54 | 阿呆烏
惚けた人が写したら、一枚の枯葉も惚けて映った

自分が嫌になった 

自分が嫌になった
自分が嫌になっては
もうどうしようもない
では
生きるのが嫌になったのか
生きるのが嫌になったわけではないが
世の中ままならず 嫌になった
嫌になるほど お前は何をしたか
悩むだけで  何も行動しなかった
だから
自分が嫌になった
自分が嫌になったまま
死を待つのは虚しい
心が疲れた
何もしていないのに
何もしていないからこそ
お前は疲れたのだ

自分を好きになってみろ

327編 『霧笛荘夜話』の幸せ

2017-12-19 04:39:58 | 読書ノート
『霧笛荘夜話』の幸せ

港町にある運河の辺にある古アパート
半地下の湿った部屋に
訳ありで行き場を失った人生
誰もが不幸に見える暮らし
自分は対して幸せでもないのに
他人の幸せを思う
自分の幸せのために
他人の幸せを犠牲にするのは
畜生以下。
不幸の分だけ、ちゃんと幸せはあるもの。
男も女も
幸せは相手次第なのか・・・・
幸せは与えられるものではなく
自分で行動しつかむもの
相手を思いやる行動のなかに
小さな幸せがある
不幸、幸せって何かを考えさせてくれた
『霧笛荘夜話』であった

325編 牛肉ならぬ牛糞

2017-12-16 05:52:21 | 阿呆烏
牛肉ならぬ牛糞に参った

いまは農閑期にあり
田圃は稲の切り株が残っている
その風景は長閑に見えるのだが
田圃に栄養をつけようと
農家のおじさんは
田圃に牛糞を撒き散らした

高台にある我家
住宅街の真ん中を通り抜ける道路は
東西に向かい下り坂になっている
東の路を降りても
西の道を降りても
田圃に遭遇するのだが
いまのその田圃は牛糞の臭いで充満し
風が吹くと
空腹に沁み込み気持ち悪くなってしまう
あとひとつき
朝夕の散歩は
我慢しなければならない



320編 帰る旅

2017-12-13 04:12:56 | 読書ノート
旅を終え 西の空に沈む夕陽とはかない川の流れ

帰る旅 

高見順 「帰る旅」  
詩集『死の淵より』講談社文芸文庫 24頁~26

帰れるから
旅は楽しいのであり
旅の寂しさを楽しめるのも
わが家にいつかは戻れるからである
だから駅前のしょっからいラーメンがうまかったり
どこにもあるコケシの店をのぞいて
おみやげを探したりする

この旅は
自然へ帰る旅である
帰るところのある旅だから
楽しくなくてはならないのだ
もうじき土に戻れるのだ
おみやげを買わなくていいか
埴輪や明器めいきのような副葬品を

大地へ帰る死を悲しんではいけない
肉体とともに精神も
わが家へ帰れるのである
ともすれば悲しみがちだった精神も
おだやかに地下で眠れるのである
ときにセミの幼虫に眠りを破られても
地上のそのはかない生命を思えば許せるのである

古人は人生をうたかたのごとしと言った
川を行く舟がえがくみなわを
人生と見た昔の歌人もいた
はかなさを彼らは悲しみながら
口に出して言う以上同時にそれを楽しんだに違いない
私もこういう詩を書いて
はかない旅を楽しみたいのである



死と対峙しながら生きてきた高見順 
まもなく土に帰る自分を受け入れようと
自然へ帰る旅に出た
昔は土葬であった
生命の旅が終われば
土に帰れる
蝉のようにはかない生命を思えば
自分のために最後の旅を楽しみ終えたい
心の旅

元気だったときの旅は
お土産店で
どこにもあるようなお土産を買って
家に帰る
長い旅や遠い旅を終え
家に帰ると
蜘蛛の糸やすすけた天井や壁を目にすると
懐かしく感じてしまう
住み慣れた我家こそ
心の宿

短い夏
蝉のけたたましい鳴き声が
聞こえても
地上のはかない蝉の生命を思えば
許せる

空蝉も
死ぬ瞬間まで
必死に鳴き叫び
自分はいま生きていると
このblogのタイトルを
『空蝉ノ詩』にした由来は
高見順の「帰る旅」から生まれた





319編 抱きしめて

2017-12-12 16:48:44 | 阿呆烏
抱きしめて

両手はしっかりと握り
母親の胸に抱かれている赤子
一抹の不安もなく
まどろみの心地にある

老いたあたしは
膝小僧を抱きかかえ
ひとりわびしく寝るさまは
野良犬のようだ

やりきれない刹那さ
どうしようもない不安
すがれるものはなく
思わず
愛犬を抱きしめ
気持ちの時化を静めた