空蝉ノ詩

蝉は鳴く。地上に生きる時間は儚く短い。それでも蝉は生きていると。力の限り鳴き叫ぶ。私も今日、力の限り生きてみようか。

22編 石のぬくもり

2017-07-01 11:41:28 | 老イ楽ノ詩
石のぬくもり

左手は握り拳の如く曲がったまま拘縮
両膝は「く」の字に曲がり脚を伸ばせない
ひとりで寝返りも行えず
染みついた天井を一日中眺めている

握りしめた左手の指を解き解し
掌を握り 言葉のかわりに握り返す
老人のぬくもりが微かに伝わってくる

老いた妻は仕事に出かけ
老人はベッド上で留守番
黒電話は鳴ることもなく
じっと耐えながら寝ている

路傍の石も動くこともできず
ジッと地面と空を見つめている
小石を掌にのせ
小石を握ってみた
小石にもぬくもりが伝わっていった

ジッと寝ている
老人の体と心は寂しく
石のように冷たい
温かいタオルで体を拭きながら
癒しの言葉をかけていく
老人にもぬくもりが伝わっていった

路傍に咲いていたマーガレットを一輪
老人の枕元に飾ってきた

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