以前は吹奏楽部で運動経験はまるでない、オールを持って水上を駆け回っている姿を誰が想像できただろう。
その成長には運動能力に自信がない未経験者に勇気を与える。
体育会にはそぐわなさそうな女の子感を備える大平玲奈、みんなからはレナちゃんと愛と尊敬を交えて呼ばれている。
部内では入部して以来、真面目でしっかりした女の子という印象を守り続けてきたが徐々にその牙城も崩れつつあり要所要所で毒を撒き散らしている、これはハブに匹敵する。
普段はクォドに乗っているがどのシートに座ってもその仕事を卒なくこなす。
どこに座ろうが丁寧にそして頼りになる漕ぎをする。
その静かそうな見た目からはかけ離れた闘志を持ち、飽く無き探究心で日々向上を目論む。
僅かな成功者達は須らく勇気と知恵を武装する、と言われるが彼女には勇気がある。
作り上げた漕ぎを変えることも厭わない、レートを上げろと言われれば遮二無二上げる努力をする、つまり攻める勇気を持つ。
必要条件は満たす。
これ以後、彼女がボートを知り、このまま上を求め続ければそこから得られる知恵は必然と備わってくる。
十分条件を満たす見込みは大きい。
彼女とボートが必要十分な関係となった暁には女子のトップを張ることはまず間違いないと言っていいだろう。
その寡黙さから漂う空気は侍以外の何者でもない。