セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

年のしっぽ

2016年12月31日 19時31分22秒 | クエスト184以降
たいそう遅くなりましたが、年内には間に合った〜の追加クエストもどき。また不思議話ですが、来年も良い年になりますよう願いを込めて♪今年も当サイトをご覧くださってありがとうございました!来年もよろしくお願い致します☆

 もうすぐ一年も終わる。ロクサーヌの店の年越しケーキの配達を終えたばかりのミミは、ついでに近くの錬金の材料を拾って帰ろうと思い、ルーラを使わず歩いていた。するとその途中で、洞穴らしきところから出ている何かを、懸命に引っ張っている人に出くわした。格好から察するに、農夫のようだ。
 その何かは、一抱えはありそうな丸太のように太いが、出ている先端の方に行くに従って細くなっていて、最先端には金属のように光る円錐形がくっついている。小悪魔のしっぽにも似ているが、少し違う。ミミはふと、時計や量りの針を連想した。その先端は時折ぴこぴこと動くので、どうやら生き物ではあるらしいのだが、世界中の動物や魔物に詳しいミミも、こんな生き物は見たことが無い。
「あの、何を引っ張っているんですか?」気になって、ミミは尋ねてみた。
「年のしっぽを捕まえているだよ」男は答えた。
「年のしっぽ?」
 ミミが首を傾げると、男は更に説明しようと振り向きかけたが、その拍子に、抱えているものがずるずるとまたいくらか穴に潜り込んでしまった。
「あちゃ〜、また進んでしまっただ〜」男は嘆いた。「このままでは、年に逃げられちまうだ〜」
 なんだかよくわからないが、この謎の何かを逃がしてはならないらしいので、ミミは男の後ろに立って、それを抱えて引っ張ってみた。すると、見た目より全く非力でない彼女の力をもってしても、それがびくともしないことに、少し驚いた。それでも、その何かは、ミミが持ったことでそれ以上穴に潜ることは止まった。
「ありゃあ、お嬢ちゃん、そんなめんこくてか弱そうなクセして、えらい力持ちだなあ〜!年のしっぽを押さえて止められる女の子なんぞ初めて見ただよ」
 男は感心して頷いていたが、ミミがまた首を傾げているのを見て、説明に戻った。
「年のしっぽは、年神さんのしっぽだよ。今年の年神さんが、この穴にすっかり潜っちまうと、今年も終わっちまう。そして、新しい年神さんが来て新年が始まるだ。だから、こうして捕まえておけば、今年はまだ終わらないで済むだよ」
 そんな話は初耳だったので、ミミは濃い紫の瞳をぱちくりと瞬かせた。年神とは時間の流れをコントロールできる何者かで、それを捕まえておけば時間の流れを留めることができるということなのだろうか。ミミのきょとんとした顔を見て、男は言った。
「あー、その顔は、信じらんない、って顔だんべー?まあ信じなくてもいいんだけんどよう、とにかく、おらはこうして年のしっぽを捕まえておかねばなんねえだよ」
「それはどうしてですか?」
「今年中にやんなきゃなんねえことが間に合わなそうなんだ〜」
「大切な用事なんですね?」
「おお、わかってくれるだか!今年のグビアナのダンスホール納めをしなければならないだ!ビビアンちゃんのダンスはサイコーだっぺな!」
 この男もグビアナのダンスホールの大ファンらしい。他の者なら呆れてさっさと帰ろうとするところだろうが、ミミはそれより別のことが気になったので、おずおずと言った。
「あの・・・でも、ここでこうして年のしっぽを押さえていると、ダンスホールに行けないんじゃ・・・?」
「あー!そーだったー!」 男は頭を抱え、その拍子に彼曰くの「年のしっぽ」を放したが、ミミが押さえていたのでそれは動かなかった。その様子を見て、男は言った。
「お嬢ちゃん、あんたすげえだなあ!悪いけど、ちょっとの間、そのしっぽを持っててくんねえか?」
「それは構いませんが、私的な用事の為に、今年の終わりを先延ばしにするって、良くないと思います」
 ミミが優しい声ながらもきっぱり答えると、男は慌てて言った。
「おらの為だけじゃないだ!あるものを育てる為に、ダンスホールに漂う幸せの空気が必要なんだよ!それは幸せの種と言ってな、今年は幸せの空気をたくさん集めたんだが、あとちっとばかり足りないんだ。幸せの種は、幸せの空気を栄養にして発芽するだでな」
 幸せの種というのは形而上的なものの詩的表現だと思っていたミミは、発芽すると聞いてまたきょとんと濃い紫の瞳を見開いた。だが、とにかく男の真剣な様子から、ただ遊びに行くわけではないことは信じた。
「わかりました、お帰りになるまでこれは捕まえておきますけれど、でも、なるべく早く戻って来てくださいね」
「助かるべ!恩にきるよお嬢ちゃん!」
 ミミはクエスト「年のしっぽ」を引き受けた!男は、駆け足で去っていった。
 ミミは捕まえている「年のしっぽ」を見つめた。感触としてはドラゴンのしっぽを持っている、という感じで、神々しいとかそんな感じは特に無い。先に進みたそうにときどき動こうとするが、ミミがしっかり押さえつけて動けないので、苛立たしげに先端をふりふりするのが何となく可愛い。
「ごめんなさい、なんだかよくわからないけれど、大切なことらしいから、もう少しだけ待っていてくれませんか」
 ミミが優しい声でそう言うと、それの前に進む気配がほんの少し弱くなって、先端のぴこぴこした動きが、どことなく嬉しそうなぱたぱたに変わった。そして心なしかすりすりと身?をすり寄せてきた。ちょっとなつかれてしまったようだ。そんなわけでミミは、なんだかよくわからない何かを抱っこして待つ、というような状況になった。

 こちらはそれからしばらく経った頃のリッカの宿屋。リッカは年の瀬なのでいつもより更に念入りにカマエルを磨いていたが、ふと首を傾げて時計を眺めながら呟いた。
「気のせいかなあ。今日はなんだか、時間が進むのがゆっくりな気がするんだけど」
「今年が今日で終わってしまうのが名残惜しいからではありません?今年も、とても楽しい一年でしたもの」
 ロクサーヌがにっこり笑って答えた。
「そうね、確かに今年もとても楽しかったね、みんなやミミとたくさん冒険もできたし・・・そういえば、ミミ、ケーキの配達に行ってたんだっけ?」
「そうなんです。思ったよりたくさんご注文がありまして、ミミ様が配達を手伝ってくださって本当に助かりましたわ・・・お帰り、少し遅くていらっしゃいません?」
「時計はそれほど進んでないよ。ほら、ロクサーヌさんも時間長く感じてない?」
「あら、そうですわね」
 そこへセントシュタイン城から戻ってきたルイーダが、慌ててカウンターに駆け寄ってきて言った。
「ごめんね、遅くなって、すぐに交代・・・あら?まだこんな時間なの?時計壊れてない?」
「全部の部屋の時計も確認したし、教会の鐘の音ともちゃんと合ってるよ。ルイーダさんも時間の経ち方おかしいと感じる?」
「そうねえ、なんだかいつもより時間の経ち方が遅く感じるわ」そこへ、自室から降りてきたイザヤールが通りかかった。「あら、イザヤールさん、もう出かけるの?」
 彼のミミとの待ち合わせには、まだかなり時間があるのだ。
「ああ、時間がなかなか経たないし、することも全部済ませてしまったから、ミミを迎えに行こうかと思ってな」
 少し照れくさそうにイザヤールは答えた。
「ミミに会うのが待ち遠しいから、そう感じるんじゃないの?」
 みんなはそう言ってからかって、イザヤールは苦笑したが、少し不思議そうに時計を見上げた。
「いくら待ち遠しいと言っても、しかし・・・」
 彼は僅かに眉を寄せながら、ロクサーヌに聞いたミミの最後の配達先に向かった。配達が終わっていればもう帰ってきている筈なので、まだ配達は終わっていないだろうからそこで待てば会えると判断したのだ。
 彼は天の箱舟を使って目的地に向かった。サンディが運転席の前に居て、イザヤールの顔を見るなりからかい口調で言った。
「イザヤールさん、ミミのお迎え?今年も徹底的にチョー優しいカレシっぷりだったね〜」
 からかいに閉口しつつすぐに目的地に到着したが、イザヤールが着陸したちょうどそのとき、その家から子供が嬉しそうにケーキの半分を持って出てくるところに出くわした。巨大ケーキのお裾分けといった風情で、そのケーキはデザインから見てもロクサーヌの店のものに間違いなかった。
 ということはもう配達は終わっているということだ。では何かあったのだろうかとイザヤールは眉をひそめた。まあ待ち合わせまでまだ時間はあることだし、ミミだったら錬金の材料集めをしている可能性が一番高いだろうと、さすが長い付き合いだけあってよくわかっていて、彼はこの近くの錬金材料がある場所に向かって歩き始めた。
 道中、イザヤールは途中で畑仕事をしている男を見かけてふと立ち止まった。こんな時期に種まきか?とも思ったが、それよりその蒔いているものが、キラキラと輝く光の粒子に似ていて不思議に思ったのだ。星のオーラにどことなく似ているような輝きだった。
「何の畑なのか、教えてもらって構わないか?」イザヤールは尋ねた。
「構わないけんど、信じてくれるかどうか」男は答えた。「ここは、幸せの畑だあ。キレーな紫の瞳のめんこいお嬢ちゃんが助けてくれたから、無事幸せの種蒔きができるだよ」
 幸せの種というものは初耳だったが、イザヤールは紫の瞳のめんこいお嬢ちゃんの方に食い付いた。
「その子は、今どこに?私の探している人かもしれない」
「その子なら、今、あっちで年のしっぽを押さえていてくれてるだ。行ったら伝えてくれないだか、もうすぐ種まき終わるから、もうしっぽを放してもいいって」
 年のしっぽという聞き慣れないものも気にはなったが、イザヤールはそれよりもと教えられた方に駆け出した。
 行ってみると、案の定ミミが、洞穴に潜り込んだなんだかわからない何かのしっぽのようなものを抱えて立っていた。イザヤールはミミの姿を確認して安堵と嬉しさで微笑み、彼女の傍らに駆け寄って言った。
「やはりおまえだったか、ミミ。畑仕事をしていた男から伝言だ、もうすぐ種まきも終わるから、しっぽを放してもいいそうだ。またクエストを頼まれたな?」
「イザヤール様・・・!よくここがわかったのね、嬉しい・・・」
 ミミは瞳を輝かせて、年のしっぽをそっと放した。すると、年のしっぽはほんの少し名残惜しげだったが、また少しずつ洞穴の中に潜り始めた。
 ミミとイザヤールは畑の方に向かい、その道中ミミは年のしっぽのことを説明した。
「でも、何なのかよくわからないままだったの・・・。本当に年神様とかいう神様だったのかな?」
「聞いたことはないが・・・でも確かに、今日は皆で時間の流れが遅いような気がしていたようだから、それはおまえが年のしっぽとやらを押さえていたから、ということになるのかな。不思議な話だな」
「幸せの空気が、幸せの種の栄養になるんだって。私の幸せも、栄養になるのかな?・・・イザヤール様が来てくれて、とっても幸せだもの・・・」
「ミミ・・・。私も、おまえを無事見つけられて、嬉しいぞ。今年も、幸せな一年だったな」
 ミミは花が開くような笑みを浮かべて頷き、二人は寄り添って歩いた。
 二人が畑のあった場所にたどり着くと、奇妙なことに畑は影も形も無くなっていて、代わりに立て札だけがぽつんと立っていて、それに「しあわせのぼうし」「しあわせのくつ」それにラッキーペンダントがかかっていた。
「おかしいな、確かにこの辺に畑があって、男が農作業をしていた筈だが・・・」
 イザヤールが不思議そうに呟いたが、ミミはほんのり頬を染めて立て札を読み、言った。
「イザヤール様、これを見て」
 立て札にはこう書かれていた。『最後の最後に、ものすごく大量の幸せの空気が流れてきて、おかげさまで幸せの種がたっぷりと収穫できただよ。来年は幸せ満載の年になるだ、ありがとな!この札にかかってるものは全部お嬢ちゃんへのお礼だよ』
「あの男、何者だったのかな・・・まあいいか、さあミミ、帰ろうか」
 ミミはイザヤールの差し伸べられた手をしっかりと握り、笑顔で頷く。来年もいい年になりそうだ。〈了〉
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