セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

無くたって、幸せ。

2017年05月18日 12時34分47秒 | クエスト163以降
たまに思い出したように出没する(笑)リッカと女主のしみじみ話。母の日父の日話でもいいかな的なネタ。当サイトでは天使に親子関係は無さそう設定なので、親子のしがらみやぬくもりを想像できても、実感がまだしきれない女主です。そんなときに「遠くに行っちゃう」感じになるのかなと。それでも、欠けてるとか失ったとか『普通』と比べるから悲しかったり不満になるんじゃないか、失ったり最初から持ってなくてもちゃんと幸せになれるんじゃないか、そんなことも思って書いてみました。

 夕食前後の慌ただしさも落ち着いて、リッカの宿屋にも束の間の平穏な時間が訪れた。ルイーダの酒場を手伝っていたミミもひと息つこうと、中庭に出た。
 伸びをして深呼吸しようとしたミミは、リッカが先に中庭に来ていたことに気が付いた。彼女は少し寂しそうな顔で、星空を眺めていた。宿王として世界一の宿屋を切り盛りしつつ冒険者もこなし、いつも元気なリッカだが、まだほんの少女なのだから、時には寂しく思うときもあるだろう。そっとしておくか声をかけるか迷ったミミは、どちらもせずに、リッカの傍らに静かに寄り添い、ただ一緒に星空を見上げた。
「あ、ミミ」
 リッカはすぐにいつもの笑顔になったが、ミミの気持ちを察したのか、しんみりとした表情になって呟いた。
「この頃、親子連れのお客様が多いでしょ。それでね、お父さんやお母さんのこと、ちょっとだけ思い出しちゃったんだ」
 それを聞いたミミは濃い紫の瞳を潤ませ、リッカの肩に優しく手を置いた。
「やだなあ、大丈夫だよ。みんなが居るし、お父さんもお母さんもきっと見ててくれてるもん。ミミ、そんな顔しないで」
 リッカは笑って、肩に置かれたミミの手を取って、楽しげにつないだまま子供がするように大きくぶんぶんと振った。
「うん・・・。でもねリッカ、わかっていても、寂しいときは寂しいよね・・・」
 ミミの言葉に、リッカはおどけて振っている手を止めてから、小さくこくりと頷いた。だが、笑顔は消えなかった。
「うん、お父さんとの楽しかった時間を思い出したり、お母さんと赤ちゃんだった私がどう過ごしたんだろうって考えると、楽しいだけじゃなくてきゅっと寂しくなるけど・・・もうそんな時間は帰ってこないって寂しくなるけど・・・でも、それは無くなって悲しくなるくらいそれほど大切な時間だったってことだから。そんな時間を持ってた私は、やっぱりとっても幸せな子供なんだなって、そう思えるんだ」
「リッカ・・・」
 濃い紫の瞳が、陰影と星を湛えたような煌めきを増して、リッカを見つめた。えらいよ、とか、すごいね、とか、そんな言葉では足りなさすぎる気がして、ミミは涙と微笑みが混じる顔で、ただまっすぐにリッカを見つめるしかできなかった。
 言葉は少なくても、ミミの優しい気持ちは、この綺麗な目を見ればわかるなあ、と、リッカは嬉しさとこんな顔をさせてしまった申し訳なさが入り混じった思いでミミを見つめた。・・・ミミやみんなが居てくれるから、私はもう本当に大丈夫なんだからね。ミミの方こそ・・・はっきり聞いたことはないけど、おそらく親が居ないだろうミミこそ、イザヤールさんが居てくれているとはいえ、寂しかったりしないのかな・・・。そう思い、リッカは思わず尋ねていた。
「あのね、ミミも・・・お父さんお母さんがどんな人だったのかなあ、って考えたり寂しくなったりすること、あるの?変なこと聞いて、ごめんね・・・」
 ミミは小さく息を飲んだ。かつて天使だったミミには、親という概念がほとんど無い。強いて言えば師という存在が親代わりなのだろう。その絆も親子関係に負けず強いものだとミミは思っているが、子が親を慕う気持ちとはまた別で、親への思慕を想像はできても、本当にわかっているかどうかは自信はなかった。だから、そんな感覚や思いをありのままに伝えるしかない。ミミは口を開いた。
「在ったのが途中で喪われたら、在るのが当たり前だったら、当然寂しくて、悲しかったと思うの。でも、私は・・・私たちは・・・。無いことが当たり前で、親ではない人々にあたたかく育ててもらったから・・・。寂しいとか悲しいとか欠落感とかは全く無かったの」
 少なくとも、イザヤール様を喪うまでは、そして、その後故郷を永遠に喪うまでは・・・。それは心の中で呟いて、ミミはそっと星空を見上げた。おそらく人間で言えば最愛の家族であったと言えるイザヤールは、奇跡でミミのところに帰ってきてくれた。だが、その代償として彼もまたミミと同様に、永久に星空に帰ることは叶わなくなったのだ。
「そっか・・・」
 無いことを嘆くこともできるのに、ミミは、えらいね。そう言ってあげたいのに、リッカは相槌を打つしかできなかった。最初から親が無いなんて、ミミは、いわゆる捨て子だったんだろうか。でも、それならミミは、ミミだったら、必ず親を探しに行く筈。そうしないということは、ミミの両親はミミに思い出を本当に何も残さずに、死んでしまったということなんだろうか。それとも・・・?
 星空を見上げるミミの横顔をじっと見つめていたリッカの顔が、彼女には珍しく憂いを帯びたようなものになっていく。そしてリッカは、飛びつくようにミミの腕をつかんで、言った。
「ミミ、帰らないで!」
 ミミははっと我に返り、リッカの顔をきょとんと見つめた。その表情に、リッカもまた我に返ったらしく、どきまぎして慌てだした。
「あれ?何言ってんだろ、私?・・・なんかね、今、急に、ミミが遠くに行っちゃうような気がして焦っちゃって・・・。焦る必要なんてないのにね、ミミもイザヤールさんも、どんなに遠くに冒険に行っても、いつもちゃんと帰ってきてくれるもん!それちゃんとわかっているのに、変だよね、私・・・」
 いつもの笑顔に戻ったリッカ。でも、どこか今にも泣き出してしまいそうにも見えるのは、何故だろう・・・。ミミは微笑み、更に陰影と輝きを増した濃い紫の瞳で、まっすぐにリッカを見つめて言った。
「私は、どこにも行かないよ。どこに出かけても必ず、ここに帰ってくるの。イザヤール様と一緒にね」
 故郷に帰れることは永遠に無くなったけれど、リッカや、仲間たちは、私たちに地上の家庭を・・・帰る場所をくれた。私は、血縁独特のあたたかさもしがらみも両方知らないけれど・・・きっとそれと同じかそれ以上にあたたかい優しさに、いつも囲まれていて。血の絆を知らなくても、とっても幸せで・・・。だから、大丈夫だからね、リッカ。
 そんなミミの思いを感じたのか、リッカの顔が安堵したように完全な笑顔に戻った。寂しさもどこかへ吹っ飛んだようだ。
「うん、そうだよね。ミミとイザヤールさんはいつも、必ず帰ってきてくれるもんね。・・・なんか安心したらお腹空いちゃった〜。ミミ、まかない作ってくるから、ちょっと待っててね」
「私も手伝うね」
 少女たちは、笑いさざめきながら、建物の中に駆け込んだ。
 間もなく戸口から、イザヤールの『有り合わせでグラタンを作ったが、食べるか?』の声、『イザヤールさんすご〜い!すごくいいタイミング!』とリッカの歓声、ミミの『イザヤール様・・・ありがとう♪』という明らかにハートと星のオーラがいっぱい飛んでいそうな声、などが聞こえてきた。
 星たちまでそんな声が届いているのか、星々はいっそう煌めき、楽しげに瞬いていた。そして、中庭にはリッカの両親が、天国からほんの少しだけ戻ってきていて、娘のはしゃぐ声に、目を細めて聞き入っていた。〈了〉
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