セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

最後の一顎

2017年10月20日 23時59分07秒 | クエスト184以降
珍しくギリギリ間に合いました〜の追加クエストもどき。最後の葉っぱ一枚で有名な名作をおちょくるつもりは一切ごさいません念のため。アーゴンデビルのアゴが伸びて死ぬ云々はモンスター図鑑アーゴンデビルの項二ページ目より。悲劇なんですが・・・悲劇なんだけど・・・悲喜劇なところが、更に悲劇な気がしますアーゴンデビルって。

 アシュバル地方のとある一家は、大きな悲しみに包まれていた。この家の年頃の一人娘が、病の床に就いていたからである。娘は、可愛らしい天蓋付きベッドに、極上のレースのネグリジェを着て横たわっていたが、その顔色は病気にしても文字通り真っ青に青すぎた。何故なら、彼女も、彼女の両親も、アーゴンデビルという悪魔系の魔物だったからである。
 娘は、窓の外の木をじっと眺めていた。アシュバル地方の木は針葉樹が多いので、落ち葉がひらひらと舞い散るということはあまり無いが、やはり秋独特のもの悲しさは避け難いらしい。娘は、小さく溜息をつき、それから、手鏡を取り出してしげしげと自分の顔を眺めた。それから、静かな諦めとでも表現したいような表情を浮かべて、呟いた。
「ねえ、お母さん・・・」
「どうしたの、私の可愛い赤ちゃん、そんな顔をして?ほら、サンマロウのお友達が、お花を送ってくれたのよ。綺麗でしょう?早く元気になって直接見にいらっしゃいってお手紙も付いてるわ」
 母親は努めて明るく言いながら、娘に花瓶に生けた花を見せたが、娘の表情は晴れなかった。
「直接・・・。そうね、行けたらいいのにね・・・。でも・・・」娘は、手鏡でしげしげと顔を眺めながら言った。「でも、私、もうすぐ死ぬんでしょう?わかっているの。・・・だって、こんなにアゴが急に長くなってしまったんですもの」
 母親はそれを聞いて、思わず叱りつけるように叫んだ。
「何を言っているの!少しも長くなんかないわ!あなたはまだ若いのよ!死ぬわけがないでしょう!」
「いいえ、お母さん、隠さなくていいの」娘は首を振った。「私、アーゴンデビル族の不治の病、『急性顎伸長症』にかかってしまったんでしょう?お父さんがお医者さんと話しているのを、聞いちゃったの」
 それを聞いた母親は、青い顔を真っ白にしてよろめいたが、なんとか涙を堪えて叱りつけた。
「まだその病気かもわからないし、気力があれば、病いは乗り越えられるのよ!弱音を吐いちゃだめ!・・・あなたは私たちの大切な宝物なのよ。お願いだから、そんなこと言わないで」
「そうね、ごめんね、お母さん・・・」
 娘は素直に謝り、痛々しい笑顔を浮かべた。母親も笑顔を返したが、台所に駆け込み、泣き崩れた。扉の外に居た父親も、沈痛な表情を浮かべていた。

 そんな事がすぐ近くで起きていたとはつゆ知らず、アシュバル地方を訪れていたミミは、目的の「みかわしそう」の採取にせっせと勤しんでいた。
「これくらいあればいいかな・・・」
 ミミは満足そうに手にしたみかわしそうの束を見つめた。
「よかったじゃんミミ、これでこの後イザヤールさんと心置き無くデートができるよね〜☆」
 サンディがニヤニヤしながらミミの頬をつついた。
「え、デートじゃなくて、エルシオン学院で待ち合わせてるだけだもの・・・後の予定決めてないし・・・」
 と言いつつ頬を染めるミミ。
「どーせデート気分デショ!否定する意味わかんないし!ほらほら、葉っぱとかくっつけちゃって〜、彼氏に会う前に鏡でチェックしときなさい!」
 サンディは笑いながら言って、ミミの髪の毛にくっついた草の葉の切れ端や綿毛などを取ってやった。なんだかんだ言って面倒見が良いのである。
 ミミはロクサーヌの店で買った小さなコンパクトタイプの鏡を取り出し、頬に泥んこが着いていないかチェックした。この鏡はロクサーヌによると少々魔力がある鏡とのことで、若干真実の姿を映すとか映さないとか言われているが真相は定かではない。とにかく、曇りひとつ無い鏡の向こうのミミは、濃い紫の瞳を輝かせ、頬を淡い薔薇色に染めてとても愛らしかった。
 だが、ミミは鏡に映った自分の背後に何者かが居ることに気付いて、素早く身構えて振り返った。長いツメで切り裂き攻撃をしてくる魔物、アーゴンデビルが映っていたのだ。
 しかし、そのアーゴンデビルは、攻撃をしてこないで、はらはらと涙を落とし始めたので、ミミは戸惑い、とりあえず様子を見た。すると、アーゴンデビルは、泣きながら呻くような声で呟いた。
「友情、恋、青春・・・。娘にも、味わわせてやりたかった・・・」
「娘?」
 ミミが首を傾げると、アーゴンデビルは言った。
「ワタシの娘は、不治の病にかかってしまったと思い込んで、生きる気力を無くして、ずっと寝込んでいるのだ。ワタシのせいだ、娘が聞いているとも知らずに、うっかりその病かもしれないという話をしてしまったから・・・。いくら違うかもしれないと言っても娘は、ワタシたちが隠していると思い込んで、健気に振る舞ってはいるが、日に日に弱っていく一方だ・・・」
 アーゴンデビルは泣き崩れた。魔物とはいえとても気の毒になって、ミミは憂いを浮かべて尋ねた。
「それは・・・。娘さん、どんな病気になってしまったと思われているんですか?私が用意できるお薬の中で、少しでも効くものがあればいいのだけれど・・・」
「残念ながら、人間の薬が効く病気ではない。我々アーゴンデビル族特有の病だからな。知らないだろうが、我々アーゴンデビルは、年齢を重ねるごとにアゴが伸びていき、アゴが地面に着くと死ぬ。だが稀に、若くしていきなりどんどんアゴが伸びることがあるのだ。ワタシたちはそれを、『急性顎伸長症』と呼んでいる。娘は、自分はその病にかかってしまったと思い込んでいるのだ」
 アーゴンデビルのアゴが伸びきると死ぬという悲喜劇はモンスター図鑑にしっかり記録されていたので、ミミはよく知っていた。いろんな意味でなんとも悲しい死に方である。ミミは更に心から同情したが、サンディは笑っていいのか泣いていいのかわからない、と言いたげな表情をしていた。
 そのとき、ミミの鏡が陽光を受けてキラリと光った。それを見て、アーゴンデビルは何か閃いたらしく叫んだ。
「そうだ、鏡、鏡だ!人間の娘よ、キミの持っている鏡は、少し魔力があるようだな。ということは、魔力のある鏡の材料を集めてこられるんじゃないか?頼む、娘の為に、鏡の材料を集めてきてくれ!なんでもするから!魔力のある鏡で、娘のアゴを短く見せることができれば、娘も生きる気力を取り戻すかもしれない!」
 魔力のある鏡を持っているのと、その材料を集めてこられるということは別問題だと思うが、ミミはアーゴンデビルの父娘にすっかり同情していたので、既にできるだけのことはしようという気になっていた。
「わかりました。材料を教えてください」
 ミミはクエスト「最後の一顎」を引き受けた!

 アーゴンデビルは、ミミが引き受けてくれたことで、今度は嬉し涙を流した。
「ありがとう、ありがとう!材料は、『ミスリルこうせき』二つ、『まほうのせいすい』三つ、『かがみ石』三つ、『つきのめぐみ』一つ、『デザートタンクの油』一つだ。ワタシ自ら集めに行きたいところだが、留守の間に娘に何かあったらと思うと遠出もできず・・・うっうっ、ワタシは情けない父親だ・・・」
 材料の大部分は、道具袋にストックしてあったり、錬金をすれば手に入るものばかりだったが、デザートタンクの油だけは、デザートタンクを会心の一撃で倒さなければ手に入らないレアアイテムなので、手持ちが無かった。知っていれば一瓶とっておいたのになとミミは少々悔やんだ。
 まだ泣いているアーゴンデビルをそこに残して、ミミはとりあえずエルシオン学院に向かうことにした。イザヤールに、クエストを引き受けてしまったので待ち合わせに遅れる由の伝言を残す為だ。
「アンタもホントつくづくお人好しよね〜。しかも助ける相手魔物だし〜」
「だって、いくら魔物でも、自分が病気って思い込んで悲しんでいるって辛いと思うの・・・」
「そっかな〜?案外、『不治の病の薄幸な美少女の悲劇のヒロインなアタシ』的な感じで自分に酔ってたりして〜」
「それくらい余裕があるのだったらまだいいんだけれど・・・」
「いいんかい!ホントお人好し過ぎるわ!」
 ミミとサンディがエルシオン学院に着くと、何故か学院内はがらんとしていた。生徒や教師たちは、校外に実習授業に出ていると購買部の職員が教えてくれた。生徒に伝言を頼もうと思っていたのでミミは少々困ったが、購買部の職員にイザヤールへの伝言を伝えてもらうことにした。すると、職員は意外なことを言った。
「おや、特別講師のイザヤール先生から、逆にミミさんに伝言を預かっていますよ。急に『ガマの油』が必要な生徒に付き添ってグビアナに行くことになったが、何かなんでも一時間程で戻るので、すまないが学院内で待っていてほしいって」
「グビアナですか?!」
 ミミはキラキラと目を輝かせ、すぐにルーラを唱えた。職員は呆然と呟いた。
「だから、学院で待っていてほしいって・・・。あ〜あ、行っちゃった・・・」
 あっという間にグビアナに到着すると、サンディは心配そうな、呆れたような顔でミミに言った。
「いくらアンタの目的地もグビアナだからっつったって、グビアナめっちゃ広いじゃん!入れ違いになる確率の方が高いデショ!」
「うん、そうかもしれないけれど・・・もしも会えたら嬉しいなって思って」
 そしてミミはグビアナ砂漠に出て、デザートタンクの油を得るべくデザートタンクたちに戦いを挑んだが、会心の一撃がヒットしても、気絶したデザートタンクたちはなかなか油を落とさなかった。
 だが、ミミがまたデザートタンクの群れを見つけたとき、その背後に、見覚えのある制服姿の子供たちと、ものすごく見覚えのある逞しい体躯の男の姿を見つけた。
「イザヤール様!」ミミは瞳を嬉しさで輝かせて叫んだ。
「ミミ、ミミなのか?どうしてここに?」驚きながらも嬉しそうなイザヤール。
「マジで会えた・・・。ご都合主義にしたってスゴすぎるんですケド・・・!」呆れ驚くサンディ。
「あれ〜、ミミ、どしたの?もしかしてイザヤール先生のお迎え?」とエルシオンの生徒たち。
 その間無視されていたデザートタンクは、怒り狂って攻撃してきたが、イザヤールがにおうだちで攻撃を一身に引き受けて(レベル99のパラディンの守備力でほぼノーダメージだった)、はりきってテンションが上がっている生徒たちに倒されてしまったのだった。
 戦闘終了後、ミミはイザヤールに簡単に事情を説明して、先に学院に戻ってくれるよう頼むと、イザヤールは懐から何かを取り出した。
「デザートタンクの油なら、ガマの油獲得のついでに手に入ったぞ?一瓶でいいか?」
 ミミは瞳にハートを浮かべているような表情でイザヤールを見上げ、サンディは「何この引き続きのご都合主義ー!」と叫んだが、その叫びはもちろんエルシオン学院の生徒たちには聞こえなかったので、経緯をよくわかっていない彼らは、彼氏から油もらってテンション上がってるミミって変わってるな〜と思ったのだった。

 ミミとイザヤールは学院に生徒たちを送り届けると、すぐに鏡の材料をアーゴンデビルに渡しにアシュバル地方に行った。父親アーゴンデビルはまたもや涙を流して鏡の材料を受け取り、お礼にとエルフののみぐすりとこうもりのはねで作ったカチューシャをくれた!
「娘が作ったものだ、よかったら使ってくれ」
 ハロウィンの服装にとても合いそうでミミはとても喜び、アーゴンデビルの娘が元気になることを改めて願った。
 アーゴンデビルの娘は、魔力のある鏡のおかげでアゴの長さが短く見えたことで安堵し、元気になった。だが、元気になりすぎて青春恋愛三昧の日々となり、逆に父親を嘆かせたという。〈了〉
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