セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

屍の願い

2016年10月08日 18時33分58秒 | クエスト184以降
完全に土曜日更新時間じゃないかー!ごめんなさいごめんなさいの追加クエストもどき。家では全く書ける余裕が無くファーストフード店に逃亡してようやく仕上がりました・・・。今回はドラクエ3のグリーンオーブを手に入れる際のエピソードが元ネタですが、ヨシ○コでオーブの話が出たからこのネタにしたのでは非ずです。ヨ○ヒコを見る前からこのネタを考えていたのですほんとです(言えば言うほどウソくさくなるような)。使命を果たす為に自分の死にも気付かず待ち続けるって悲しいけれど、そういう無駄で不器用なひたむきさも悪くないと個人的に思います。

 盗賊の「おたから」スキルのひとつに、「おとしあな」がある。あらかじめ落とし穴を掘っておいて追跡してくる魔物や人を落としてその間に逃走するのが本来の目的だが、冒険者たちの間では、もっぱら仲間や知り合いを落としてからかう目的で使われていることが多い。もちろんうまく作ってあるので、はまった方でも驚くが怪我などの実害はほとんど無い。
 ある日人里離れた場所を歩いていたミミは、突然そんな「おとしあな」の中にすっぽりとはまりこんだ。・・・と初めは思ったのだが、人里離れた場所におとしあなもおかしいよね、と考え直した。と、考えている間に、底だと思っていた部分が更に崩れて、もっと深いところに落ち込んでしまった。
 とっさに体勢を整えたので怪我も無く本当の底に着地して、ミミは上を見上げ、足元を見下ろし、周りを見回した。上は丸く切り取ったようにぽっかりと空が見えて、足元には草や土や腐った木の板の破片が散らばり、周囲はゴツゴツした石積の壁だった。そのことから判断するに、どうやら長い年月ですっかり表面が埋まっていた古井戸の上をたまたま歩いてしまったらしい。
「ミミー、だいじょーぶー?!」
 上からサンディの声がして、ひょいと彼女の顔が覗き込んだ。彼女は大概ふわふわと浮いて移動しているので、一緒に落下の憂き目に遭わずに済んだのである。
「うん、大丈夫。壁はでこぼこしているから、簡単に上れそうだし」
 そう言ってミミは、手をかけるのに良さげな箇所は無いか探したが、そのとき、石積の壁の一部が落ちていて、ぽっかりと穴が空いているのを見つけた。何が飛び出してくるかもわからないので用心深く覗き込んでみると、穴の奥には通路があって、更に奥には鉄格子があるのが見えた。牢なのかそれとも宝物庫なのか、いずれにせよ隠し部屋らしい。
「サンディー、ちょっと待っててー。何か怪しい隠し部屋があるのー」
 ミミが上に向かって大声で言うと、サンディは明らかにうろたえた声で答えた。
「げげっ、また何かヘンなもの見つけちゃったワケ?トラブルのニオイが超するんですケド!・・・しょーがないわね〜、ったく〜」
 ミミが「せいけん突き」で石壁を壊して隠し部屋への通路を確保している間に、ぶつぶつ言いながらもサンディも降りてきた。
「サンディ、来てくれたの?」
「アンタはすぐにトラブルに巻き込まれるんだから、しっかりもののアタシが見張ってなきゃデショ!全く世話が焼けるんだから〜」
「ありがとう」ミミは濃い紫の瞳を感動でうるうるさせながら言った。「ずっと思っていたけれど、サンディみたいな人のことをツンデレって言うんだよね?」
「それ褒めてるつもりー?!しかもいろんな意味で超今さらなんですケド!」
 そんなやりとりをしながら鉄格子の前まで来てみると、それはやはり牢だったらしく、床の上には白骨化した屍が横たわっていた。冒険者かつ元守護天使という経歴柄、このような屍に遭遇することは多かったが、やはり痛ましいことに変わりはなく、ミミは屍の傍らに膝を着いて祈りを捧げた。
 すると、屍の指先の床に、何かが書いてあるのが見えた。ランタンを近付けて読んでみると、こう書かれていた。
『生きている間に、オーブを渡したかった・・・』
 何のことだろうとミミは首を傾げたが、屍が手にオーブを握っている様子は無いし、ぼろぼろになっている衣服のポケットにしまってある様子も無い。以前この牢を見つけた誰かが、既に持ち去ったのだろうか。できれば死者の願いを叶えてあげたいな、と彼女は思った。どこの誰に渡したいのかわからないけれど。オーブを届けてあげたいと心から思った。ミミはクエスト「屍の願い」を引き受けた!

 屍を外に運び出して埋葬しようと思っていたミミだったが、どれくらい長い間放置されていたのか、白骨は触れるだけでほろりと朽ち果てるほど脆くなっていた。このままでは運べそうもないので、ミミは改めて壺か何かを持って出直してくることにした。棺桶ではこの穴の中には入らないのだ。
「ミミ〜、アンタってホントお人好しよね〜」
「だって、死んだ後も牢屋の中に居るよりは、外に埋葬された方がましでしょ?・・・たぶん」
 また来ますと言い残して、ミミはサンディと共に穴の中から出た。
 それからセントシュタインに戻って準備を整えた頃には、もうすっかり夜になっていた。明日にしようか迷ったが、イザヤールが一緒に行ってくれると申し出たので、喜んで共に出かけることにした。サンディも「めんどいけど成り行き上仕方ないし」と言いながらついてきてくれた。
 穴の底から続く例の隠し牢に着くと、驚いたことに屍の姿は消えていて、代わりにやつれた顔の青年が座っていた。自分たちが帰った後に誰かが来たのかと一瞬驚いたミミだが、すぐに青年は生きている人ではないと覚った。おそらく屍の魂が、夜になって現れたのだろう。
 青年は、幽霊にもかかわらず、今にも力尽きそうなほど苦し気だった。牢の扉が開くと、彼ははっと顔を上げた。やせ衰えた顔に、かすかだが希望の光が現れた。彼は、かすれた弱々しい声で尋ねた。
「君たちは・・・もしかして、私がずっと待っていた、世界を救う勇者なのか?」
 その問いに、ミミはかすかに困惑して傍らのイザヤールと顔を見合わせた。この問いから察するに、この青年はおそらく『勇者』にオーブを渡すという使命を果たす為に、幽霊となった今も夜はこうして死んだ場所に現れてしまうのだろう。つまり、勇者が現れ使命を果たすまで、彼は安らかに眠ることができないのだ。だが、世界は今や平和になっている。世界を救う英雄を必要としていないし、当分現れることもないだろう。ずっと待ち続けた彼にそれを正直に告げることは、酷に思われた。
 自分は世界を救ったかもしれないが勇者ではない。常々そう思っているミミは、思いきって答えた。
「おそらく、私たちは、あなたが待つ勇者ではないわ。でも、あなたをここから出して、願いを叶える手助けはしたいと思っているの」
「そうなのか、ありがとう・・・」青年の幽霊は、ほとんど聞き取れないほど弱々しい声で言った。「私は・・・おそらくもう夜明けまでももたない命だ。その前に使命を、君たちに託したい。それに、私を逃がしたら、君たちまで帝国に追われる身となる・・・。私は、オーブを帝国に渡すことを拒んだ為に、こうして牢に繋がれたのだから」
「そんな・・・」
 帝国とはおそらく、確証は無いがガナン帝国のことだろう。それではこの人は、とミミは胸が詰まる思いで思った。自分が死んだことに気付かずに、おそらく毎晩、使命を果たせぬまま絶命する絶望を繰り返しているのだ・・・。
「わかりました、どうすればいいの?」
「世界を救う勇者に、魔を払う最強の防具を作る材料になるオーブを、届けてもらいたい。オーブは、これから言う場所に隠してある・・・」
「でも、私たちは、勇者がどこに居るか、知らないわ・・・」そこは正直にミミは言った。「誰に渡したらいいのか、わからない」
「それは心配しなくていい、オーブは、勇者の手に渡ったときに、星のような輝きを放つだろう・・・そして、その人のもとへ、自然と導いてくれるだろう・・・」
青年はそう答えて、続けて言った。「オーブは、オンゴリの崖という地の、ルビーの原石の岩の下に埋まっている・・・頼んだぞ・・・。これで、やっと、いつ、死んでも・・・」
 青年の声がほとんど聞き取れなくなり、彼は床に崩れ折れた。ミミとイザヤールは、慌てて彼を抱き起こして介抱しようとしたが、幽霊は見えても幽霊に触れられる術は無い。青年は、人差し指を少しの間床に這わせてから、がくりと首をねじ曲げた。そして、そのままスッと姿が消えてしまった。

 青年の居た場所には、ミミがせんに見た通りに、白骨の屍が横たわっていた。ミミは当初の予定通り、その骨を地上に葬る為に拾い集めようとしたが、ためらいがちに手を止めて、呟いた。
「先に、引き受けたことを果たしてからまた来た方が、いいのかな・・・。なんだか、そんな気がするの」
「わかった」イザヤールは頷いた。「ではさっそく、オンゴリの崖に向かおう」
「よっしゃー、じゃあ今回はアタシが箱舟呼んじゃうワヨ!」とサンディ。
 天の箱舟ですぐにオンゴリの崖にたどり着き、普段ルビーの原石が落ちている大きな結晶の根元を注意深く深めに掘ると、泥にまみれた箱が出てきた。蓋を開けると、なんとグリーンオーブが出てきた!
「あの人が託したかったのは、きっとこのグリーンオーブだったのね・・・」
 ミミが呟いてオーブを手に取ると、オーブは星のようなやわらかな光を放って、輝き始めた!
「これ・・・どういうこと?私は、あの人が待っていた勇者ではないのに・・・」
 ミミが戸惑って呟くと、イザヤールは静かに首を振って言った。
「おそらくあの青年も、勇者は誰かを知ってはいなかったのだろう。人間が人間を恐怖によって支配する時代を終えることができる者、そして魔王が世界を滅ぼす脅威を食い止めることができる者、それこそが誰であろうと彼の待っていた勇者だった。ミミ、彼はそうとは知らずにずっとおまえを待っていたんだ。・・・自分が死んだことも、おまえのおかげで世界が滅びを免れたことも、知らないままで、な」
「そう・・・そっか・・・」
 偶然ここを通りかかって穴に落ちなければ、牢の中の幽霊は、まだずっと自分の死を毎晩繰り返していたのだ。もっと早く見つけてあげられたらよかった、呟いて、ミミはぽろりと涙をこぼした。
「おまえのせいじゃない。・・・そしておまえは、ちゃんと見つけてやれたんだ」
 そう囁いてイザヤールはミミをそっと抱きしめ、サンディも慰めるようにミミの頭を軽く小突いた。

 牢のある穴に戻り、当初の予定通り骨を集めていて、ミミは床に書かれた文字が最初に見たのと変わっていることに気が付いた。
『生きているうちに、オーブを渡せて、よかった・・・』
 全て集めた骨は外に運び出し、花が溢れる小高い丘に埋葬した。もうこれで、穴の底の隠し牢に毎晩幽霊が現れることはないだろう。〈了〉
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