セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

氷の中の金剛石

2017年01月21日 12時10分48秒 | クエスト184以降
相変わらず遅更新追加クエストもどき。イザヤール様無双&運の良さが高(笑)

 アイスバリー海岸でさとりそうを拾って帰る、今日はそれだけで終わる筈だった。ミミは、この落ち着く香りの草を摘んで、再びアギロホイッスルを吹いてすぐに帰ろうとした。だが、ふと波打ち際に目を向けた彼女は、冷たい海水が、小さな瓶を打ち寄せていることに気が付いた。
 瓶を拾い上げてみると、中には筒状に巻かれた紙片が入っている様子だった。
(瓶に入った手紙かな?)
 彼女は瓶の口を固く塞いでいた栓を抜いて、紙片を取り出した。しっかりと巻いて紐で結わえてあるからか、紙片は容易に瓶から滑り出てきたので、中に何が書いてあるか見てみようと紐を解こうとしたが、吹雪の中では見えにくいと思い直して、天の箱舟に戻ってから見てみることにした。
 ミミはアギロホイッスルを吹き、暖かい天の箱舟内部に戻ってきた。
「ミミ、おかえり〜」爪を磨き中のサンディが、一応顔をちらっと上げて声をかけた。アギロは後ろの車両の点検に行っているらしい。「外、激烈寒かったデショ?アタシ今日は外に出なくてマジ正解〜」
「今日は、っていうより、サンディの格好はアイスバリーやエルマニオンじゃいつも寒いと思うな。サンディ、冬服要らないの?」
「あ〜、デボラワンピなら着てもいいワヨ」
「あれも寒いんじゃないかなあ・・・」
「そんなことよりさ〜」爪磨きを終えたサンディは、ミミの手にしている瓶と紙片に気付いて言った。「ソレ何よ?」
「海岸で拾ったの。瓶に入れたお手紙かなと思って」
「でなきゃ宝の地図かもよ〜。だったらラッキーじゃね?ねえねえ、アタシにも見せてよ〜」
「うん。でも、その前に、さとりそうをロクサーヌさんに届けに行かなきゃ」
「マジメかー!いーじゃん、ちょっとくらいー!」
「じゃあ私がロクサーヌさんのところに行っている間、サンディがこの紙と瓶を預かってて。先に見てもいいから」
「さすがミミ!好奇心でウズウズなアタシのハートをよくわかってるじゃん☆」
 そう喋っている間にセントシュタインに着いたので、ミミはサンディと紙片を箱舟運転席前に残して着陸した。

 リッカの宿屋カウンターに居たみんなにただいまを言い、ロクサーヌにさとりそうを渡して間もなく、セントシュタイン城からイザヤールも帰ってきた。ミミはハートマークがいっぱいの声でおかえりなさいを言い、海から来た謎の紙片を手に入れたことを話した。
「サンディに預けてきたの。箱舟でお茶でも飲みながら、何が書いてあるか調べてみませんか?」
「それは面白そうだな」
 そこで二人は、サンディとアギロの分も含めたお茶うけを用意し、箱舟へと移動した。
 だが、箱舟に戻ってみると、サンディの姿は無く、床に爪やすりと、長いこと丸められていた為か紐を解かれてもまた筒状になっている紙片と、それが入っていた瓶だけが落ちていた。
「サンディ?」
 ミミが首を傾げて辺りを見回すと、後ろの車両の扉が開いて、サンディではなくアギロが来た。彼はミミとイザヤールがサンディと一緒でないのに不思議そうな顔をした。
「おっ?サンディのヤツ、おまえたちと一緒じゃあなかったのか?」
「え?サンディ、お部屋の方にいるんじゃないの?」
 わけがわからないままミミは爪やすりと瓶と紙片を拾い、そして紙片をイザヤールに見せた。
「ほら、イザヤール様、これ」
 と言いながらミミがイザヤールと並んで丸まった紙片を広げた途端、辺りを一瞬眩しい光が包み込んだ!そしてミミとイザヤールの姿は消えた。後には紙片と瓶と、呆気にとられたアギロだけが残された。

 ミミとイザヤールは、視界が戻ったと思ったら氷の洞窟の中に立っていたので、驚いて顔を見合わせた。
「確かに箱舟の中に居た筈なのに・・・」
「あの紙切れは、宝の地図か何かで、しかもダンジョンに引きずり込む効果がある地図だったということか?」
 イザヤールの言葉に、ミミは広げた紙片が手の中に無いことに気付いた。サンディの爪やすりだけ、しっかり握っている。
「じゃあサンディも、あれを広げたからこの洞窟の中に?・・・サンディ!サンディー!居るなら返事をしてー!」
 しかしサンディの返事は無く、がらんとした氷の壁と床に響き渡るだけだった。
 では洞窟の奥に居るのかと二人がとりあえず進んでみると、やがて氷でできた扉に突き当たった。鍵がかかっている様子はなかったので、用心しつつ開けてみると、なんと!部屋の奥の方に、氷でできた大きな鳥籠のようなものがあって、その中にサンディが閉じ込められていた!
「サンディ!」
 ミミが叫んで駆け出そうとすると、サンディは顔をぱっと輝かせて言った。
「ミミ、イザヤールさん!早くこのムカつくバカでかいデビルスノーやっつけて、ここから出してー」
 そう言われて二人は、確かに巨大なデビルスノーが居ることに気が付いた。大きすぎて氷の壁と一体化していて、一見目に入らなかったのだ。ミミとイザヤールが剣を抜いて構えると、巨大デビルスノーは目をぎろりと剥いて言った。
「ここは氷の世界だ。おまえたちが如何に強かろうと、オレには絶対勝てないでそこの虫みたいに閉じ込められるだけだぞ」
「ちょっとー!なに虫扱いしてんのよー!」
 サンディの叫びを全く無視して、巨大デビルスノーは続けた。
「勝ち目の無い闘いをするより、どうだ、オレと取引しないか?」
「取引?私の友達をいきなり閉じ込めちゃうようなあなたと?」
 ミミがデビルスノーを睨み付けて言うと、デビルスノーはニヤニヤ笑った。
「まあそう怒るな。簡単なことをやってくれたら、おまえたちもこいつも無事に帰してやる」
 そう言うとデビルスノーは、部屋の隅にあったやはり氷でできた宝箱に歩み寄り、蓋を開けた。中には、そっくり同じ形と大きさの、美しく輝く栗の実くらいに大粒のダイヤモンドが十個、並んでいた。ミミとイザヤールが訝しげに見ていると、デビルスノーはダイヤモンドを全て取り出し言った。
「実はこの中に、本物のダイヤモンドは一つしかない。後は、オリハルコンより硬いとはいえ、全て氷でできている。その氷は、人間の体温でしか溶かすことができない。氷を溶かして本物のダイヤモンドを見分けてくれたら、おまえたちを外の世界に帰してやろう。やらねば、おまえたちはここで仲良く氷の像になる運命しかないぞ」
「・・・それはどうかな」
 イザヤールは呟いて、いきなり巨大デビルスノーに飛びかかって一気に斬りつけたが、斬った傷口は瞬く間に凍って元通りに塞がってしまった。彼が眼光を鋭くして着地するのとほぼ同時に、ミミは武器をブーメランに変えてデビルスノーが苦手な攻撃「バーニングバード」をしようとして、いつもなら戦闘中でも変えられる筈の武器が、今装備している剣しか無いことに気付いた。どうやらここは特殊な空間らしい。炎の呪文を使える職業に転職するべくダーマのさとりを使おうとしたが、やはり発動しなかった。
「ムダと言っただろう。おとなしく言われたことをしたらどうだ?」
 巨大デビルスノーはげらげらと笑った。こうなればとりあえずは仕方がない。ミミはクエスト「氷の中の金剛石」を引き受けた!巨大デビルスノーは、笑いながらその部屋から姿を消した。ミミたちが宝石を見分けるか、全員すっかり凍りついてしまうかしたときに、また戻ってくるつもりなのだろう。

 ミミはさっそくダイヤモンドのうちの一つを拾ってみた。手袋越しでも、全身が凍りつきそうなほどの冷気と言うより凍気を感じる。それでもサンディを助けたい一心で堪えて手袋を脱いでもう一つも拾って左右両手に一つずつ握る。冷たすぎて低温により手を焼かれてしまうので、ミミの小さな手では握りしめるのは計二つが限界だった。
 イザヤールは、手が大きいからと無理をしたのか、二つずつ握りしめた。冷たすぎる氷が皮膚を焼く音がしたが、彼はほとんど表情を変えずただ唇を真一文字に引き結ぶ。ミミは自分の痛みも忘れて涙を浮かべ、彼に無茶をやめてほしいと哀願するような瞳で見上げた。だが彼はそんなミミを見て微笑み、両手に一つずつダイヤモンドを固く握りしめたまま、その握った腕をミミに回して、思わず震えている彼女を抱きしめた。
 掌中の中の強烈な冷気にもかかわらず、二人の体が触れ合っているところから、徐々にぬくもりの方が勝っていく。やがて二人の手の中からそれぞれ、ぽたぽたと滴が垂れてきた。手の中のものが縮まる感触を感じて手を開いてみると、ダイヤモンドは溶けて縮んでいたので、氷でできた偽物だとわかった。
 ミミは二人の手に回復魔法をかけ、イザヤールは布で二人の手の水分をすっかり拭った。また同じことをするのに水分が手に残っていたら、凍りつく範囲が広がってしまって危険だからだ。そして残りの半分のダイヤモンドをそれぞれ拾って、先ほどと同じことを繰り返した。
 イザヤールの右手の中にあったうちの一つが、他の物が溶けてもそのままの形で残っていた。本物の宝石が見分けられた!二人は焼けた手のひらの痛みも忘れて、思わず顔を見合わせて微笑み合う。その様子を見ていたサンディは、思わずシラケ顔で呟いた。
「またリア充パワーで勝ちました、ってか〜。恐るべしだわ・・・」
 間もなく巨大デビルスノーが戻ってきたので、ミミは一つ残った本物のダイヤモンドを差し出した。
「言われた通り本物を見分けたわ。サンディを解放して」
 すると巨大デビルスノーは、腹を抱えて笑った。
「おまえはバカか?一度捕まえた獲物をみすみす放してやるヤツがどこに居る?」
「約束が違うでしょう」
「知ったことか!三人仲良く氷漬けになってしまえ!」
 ふいにミミとイザヤールの背後の氷壁が腕の形に伸び、二人の剣をもぎ取った!そして、やはり氷でできた大きな鳥籠状の物が落ちてきて、ミミとイザヤールは閉じ込められてしまった!
「そのままじわじわ凍え死ぬがいい、ご苦労さんだったな」
 巨大デビルスノーは言い捨てて、再び姿を消した。

 ミミとイザヤールは氷の鳥籠状の中でしばし考え込んだ。剣は奪われて離れた壁に凍り付けられてしまったし、閉じ込められた場所は二人が立っているのがやっとの広さなので、構えて素手で砕くのも難しそうだ。
「あーもう、何やってんのよー!」
「ごめんね、サンディ・・・」
「これは少々参ったな」
 イザヤールは呟いて、ファイアフォースを発動したが、これですぐ凍えることはなくなったが、氷の檻を溶かす威力は無い。
 手持ちの小さな道具袋しか無い状態で、何か使えそうなものは無いかとミミは身じろぎして、ふとサンディの爪やすりが手に触れた。
「あっ、ちょっとずつ削れるこれなら!」
「いけそうだな」
 ミミはさっそく爪やすりで氷の檻を少しずつ削り、イザヤールは削り屑を握ったり踏みつけたりして溶かした。
「なんせ女神印の逸品だからね〜。呪われた氷だってよゆーだし〜」
 サンディが頷く。
 檻の桟のあちこちが細くなったところでイザヤールが押して二人の入っていた方は壊れ、ミミは出られるとすぐにサンディの鳥籠に駆け寄り、再び爪やすりでせっせと削り出した。サンディも鳥籠から出られると、イザヤールはミミに「おうえん」をしてもらってスーパーハイテンションになり、ばくれつけんで部屋の氷の壁をガンガンに砕きまくった!凍り付いた剣を取り戻したが、イザヤールは壁を砕き続けた。脱出と言うより、何事かとデビルスノーが様子を見に来ることを狙ったのだ。
 案の定デビルスノーは様子を見に現れ、その拍子にイザヤールのばくれつけんの巻き添えをくらい、修復する間もなくバラバラにされて、たくさんの普通のデビルスノーに戻った・・・。
「ごめんなさいいー!宝石が自分たちでも見分けがつかないってバレるとカッコ悪いんでこんな手段使いましたー!」
 デビルスノーたちは謝りまくって「ヘキサグラム」をくれた!
「最初からこーすりゃよかったんじゃね?」サンディが呟く。
 無事に箱舟に帰還した三人は、準備をしいよいよ紙片を広げようとしたアギロと鉢合わせて、彼の目を点にさせてしまったという。〈了〉
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今週のしばらくお待ちくださ... | トップ | てぃしゅーカバー »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿