セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

マデュラ狩り

2012年06月29日 23時59分54秒 | クエスト184以降
本日ギリギリ金曜日更新捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき~。本日は、ドラクエモンスターズジョーカーネタ。スライムマデュラは、あのゲームの「マデュライト」と関連絶対あるよな、ということで書いた話です。まだ未消化気味なので、マデュライトのことはまた改めて少しずつ書いてみたいです。

 宝の地図の洞窟探検は、相変わらず人気だ。レベルによっては比較的楽に探検できる手軽さもあるのだろう。だがそれだけに、素人がうっかり飛び込んで、かなり危険な目に遭うことがある。
 ミミは今日、ロクサーヌに珍しい装備品の収集につきあってくれるよう頼まれて、遺跡タイプの宝の地図の洞窟を訪れていた。夏の繁忙期に入る前のチャンスということで、リッカとルイーダもパーティに加わっていて、サンディ言うところの「女のコパーティ」だった。
「やりましたわ、『ふしぎなボレロ』ですわ☆」宝箱を開けて、ロクサーヌが華やいだ声を上げる。
 と、そこへ、「スライムマデュラ」がこちらに向かってきた。ただしよく見ると、スライムマデュラだけでなくそのすぐ前には、必死の形相で逃げる学者風の男性が居た!これはどう見ても「魔物に追われてます」光景である。
「たいへん、助けなきゃ!」
 リッカが叫び、すかさずミミとルイーダがバッグダンサー呼びをして、あっという間に撃破した。
 学者風の男は、まだぜえぜえと息を切らしていたが、せいいっぱいの威厳を取り繕って咳払いし、礼を言った。
「ありがとう、お嬢さん方。おかげで助かった」それから彼は、ミミたちをしげしげと見つめた。「それにしても、スライムマデュラを一ターンで撃破なさるとは。凄い強者でいらっしゃいますな。ううむ、雇ったへなちょこ冒険者どもに頼むより、あなた方に頼んだ方がいいかもしれん」
 ミミたちは、とりあえず魔物の出ない一角にその男を連れていって、話を聞くことにした。
「実は私は、魔物を魔物たらしめるナゾの物質について研究しておる者でな。その物質は、『マ素』と呼ばれておる」
「マ素?」
 初耳だ。ミミたちが首を傾げていると、男は説明を続けた。
「これはまだ、仮説の段階なのだが、魔物を魔物たらしめているのは、どうやら『マ素』というエネルギーらしいのだ。私は、それを証明する為に、マ素の塊を集めたいのだよ」
「マ素の塊?」
「マ素は、稀に結晶化することがある。それは『マデュライト』と呼ばれる美しい結晶だが、めったにお目にかかれない。スライムマデュラは、どうやらスライム属がマデュライトを取り込んであのような魔物になったようで、ごくごくたまにマデュライトの破片を落とすことがある。私は、それを手に入れようとスライムマデュラを追っていたのが・・・逆に追われてしまって、あなた方に助けられたという訳だ」
「では、私たちは、スライムマデュラから、マデュライトを手に入れるお手伝いをすればよろしいのですね?」
「さすがに話が早い。よろしく頼みますぞ」
 ミミはクエスト「マデュラ狩り」を引き受けた!

 こうしてスライムマデュラを狙って戦い続けることになったミミたちだったが、めったにお目にかかれないと言われるだけあって、スライムマデュラはなかなかお目当ての物を落とさなかった。
 マデュライトは、スライムマデュラと同じ色をしている美しい結晶らしい。依頼人も、話は聞いたことがあるが、見たことはないと言う。
「本当にめったに落とさないし、落としてもごく小さなカケラだろうから、そのつもりで見てないと冒険者の方が気付かないのも無理もありませんな」
 依頼人はそう言って溜息をついた。
「今まで私たちが戦ったスライムマデュラも、落としていたのかもしれないけど、気が付かなかったわね」
 ルイーダが呟いた。
「落としてても、単にスライムマデュラのカケラだと思ってたかも・・・」
 ミミも言って、今倒してよれよれ逃げていったスライムマデュラの居た場所を探したが、やはり何も落ちていなかった。
「残念ですわね。攻撃方法を変えた方がよろしいのかしら」
 ロクサーヌはそう言いながら「大地くだき」を取り出したので、物陰から見ていたスライムマデュラが密かに怯えていた。
 結局その日は、マデュライトらしいカケラを見つけることができず、引き上げることにした。
「明日も引き続き探してみます。見つけたらお届けするということでいいですか?」
 ミミが依頼人に尋ねると、依頼人はよろしくお願いしますぞ、と頭を下げた。
「よかったらうちの宿屋でお待ちになってはいかがですか☆」
 リッカがにこにこして勧め、そうすることになった。

 その夜ミミたちがリッカの宿屋に帰ってくると、剣術指南に出かけていたイザヤールも同じ頃に帰ってきていた。食事や入浴を終えて、部屋で寛ぎながら、彼はミミから今日のクエストの話を聞いた。そして、腕組みをして言った。
「マデュライト、か・・・。実は昔、聞いたことがある。文献にいくつか記録が残っていて、大量に集めると魔界への入り口を開く力があったとか、人間を魔物に変えた等の伝説があったそうだ」
「魔界の、入り口を開く・・・」
 ミミは心配そうに目を見開き、その顔が憂いを帯びた。
「あくまでも伝説だ。だが」彼は少し眉をひそめて言った。「天使界でも、マデュライトの実物の存在は確認されなかった。だが、そのような物質があるのではないかと言われてはいた。魔物が何故生まれるのか、何が魔物を魔物と化させているのか、それは天使たちにとっても重大な関心事だった」
「魔物を魔物たらしめるエネルギーの結晶・・・」
 ミミは呟き、思った。人間の感謝の念の結晶である星のオーラの言わば塊、女神の果実を食べた生き物は・・・魔物と化した・・・。生き物だけでなく、無生物や死者までも。何か関連があるのだろうか。・・・まさか。彼女は思わずかすかに身震いし、イザヤールの肩に頬を寄せた。
 彼は黙ってそっとミミを抱き寄せた。彼女が何を連想したかわかったのだろう。やがて、彼は呟いた。
「魔物を魔物たらしめるならば、邪悪な力の筈だが、不思議だな、スライムマデュラからは、それほど邪悪な力を感じない。魔物が魔物であるのは、単純に邪悪な力によるものだけではなさそうだな。・・・依頼人の研究結果が楽しみだな」
「・・・はい」
 ミミの顔から憂いが消え、微笑んでイザヤールを見上げた。彼もまた微笑み、安心させるように唇に軽くキスを落とした。
「明日は、私もマデュライト探しに協力させてくれ」
「ありがとう、イザヤール様」

 翌日は、リッカの代わりにイザヤールがパーティに加わり、再びスライムマデュラの居るダンジョンを訪れた。
 スライムマデュラは呪文が一切効かないし守備力も高い。それでも、もしかしたらバックダンサー呼びより、直接攻撃の方がまだマデュライトを落とす確率が高いかもしれない、ということで、武器での直接攻撃中心で行くことにした。バックダンサー呼びを使うより、苦戦することになる。それでもパーティ全員で攻撃すれば、スライムマデュラの硬さも敵ではない。
 もちろんスライムマデュラも黙ってやられっぱなしではない。ごろごろと転がって押し潰してきたり、光線を放ってきたりした!これはかなり痛い。
「この光線も、マデュライトの力なのかな・・・」
 ロクサーヌにべホマラーをかけてもらいながら、ミミがぽつりと呟いた。考えてみたら、レーザーを出せるマシン系を除けば、こんな光線を出せるのはスライムマデュラだけなのである。
 気は心ということで、全員ハンマーを装備し、もぐらたたきならぬマデュラたたきのような光景になってきた。メタル属には劣るとはいえ、スライムマデュラも素早い。きゃーきゃー言いながらも避けてミミたちをまた押し潰し、受けたダメージを自分たちもまたべホマラーで回復する。
 そんなことを繰り返して、今日も夕方になってきた。ダンジョン内では時間感覚はあやふやだが、これまでの経験から、戦闘時間と回数を考えるともうそれくらいになっていそうなのである。
「今日も無理かな・・・」
 ミミが残念そうに呟いた。
「ミミ様、諦めるには早いですわよ。まだまだ大丈夫ですわ」
 ロクサーヌがいつもと変わらない笑顔で言った。ロクサーヌが疲れたところは、誰も見たことがないので、大丈夫という言葉には説得力があるようなないような。イザヤールとルイーダも、まだまだ大丈夫だと頷いた。だが、フィールドより魔物が多いダンジョン、無理は禁物だ。
「じゃあ、あと一回スライムマデュラと戦ってから、今日は帰りましょう」
 ミミはパーティリーダーらしくきっぱり宣言して、呼吸を整えてハンマーを握りしめた。
 するとそこへ、ひときわ鮮やかな色でぴかぴかしたスライムマデュラが現れた。そして、張り切ってごろごろ転がって攻撃してきた。
 コンボを決める為に、ミミは「ラストバッター」で攻撃するよう全員に指示を出した。今日最後のチャンス、何だかいけるような予感がする。
 スライムマデュラの攻撃に耐えてから、次々に小気味よくこちらの攻撃がヒットする。最後にイザヤールが4ヒット目を決めて、スライムマデュラはホームラン状態に吹っ飛んでいった。
「イザヤールさんたら、吹っ飛ばしちゃってどうするのよ~」
 ルイーダが笑って言い、イザヤールは面目なさげにハンマーを下ろした。
「すまない、つい思いきり振ってしまった・・・いやあ、気持ちよく飛んだな」
 広いフロアであることが、スライムマデュラにとって不運だった。
「あれ?でも、あれ・・・」
 ミミは呟き、スライムマデュラの居たところに駆け寄った。小さいが、鮮やかな濃いピンク色の、透き通った結晶がキラリと光っている。
「やりましたわね、ミミ様!きっとこれがお探しのものですわ!」
 ミミはマデュライトを手に入れた!
「綺麗・・・」
 ミミはうっとりと手の中の結晶を見つめた。宝石だと言ってもおかしくない。スライムマデュラ自らたちが、自分たちを宝石のようだと自惚れるのも無理もないと思う。
 早く依頼人に届けようとミミたちは急いで帰路についた。

 依頼人は大喜びでマデュライトを受け取った。
「これでマ素の研究に、また一歩近付ける、いやいや、ありがとう!研究成果は、あなた方にも逐一ご報告させて頂こう!」
 彼はお礼にと、「ミネルバミトル」をくれた!
 帰っていく依頼人の姿を見送りながら、ミミは微笑んで呟いた。
「マ素の研究、楽しみですね。マ素のことがわかれば、魔物たちとももっと仲良くなれるかも」
「そうだな」
 イザヤールも微笑み、頷いた。伝説では、魔物と心を通わせ、浄化させる力があった者たちも居たと言われている。ミミにも、その才能があるのかもしれないな。彼は内心呟き、そっと彼女の肩に腕を回した。〈了〉

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 可愛い猫になりたい | トップ | キングと散歩とトランク »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿