セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

知恵熱、恋熱

2017年03月13日 02時15分12秒 | 本編前
毎回ほぼ同じ内容の話と言っても過言ではありませんが懲りずに書いちゃいます天使界時代両片想い話。両片想いって、どちらかがかなり想いを匂わしてしまったとたんに想いが通じてしまって片恋じゃなくなってしまいますから、結局同じようなところでぐるぐるしちゃうような。文中の医療担当天使は、学校の保健室の美人先生的なイメージです。セリフだけだとラフェットさんとあまり区別つかない(笑)なんか女性の天使には両片想いとかめちゃくちゃバレそうな気もしますが、どうなんですかね天使の恋愛アンテナ。妖精だと絶対バレてアウトっぽい。

 その日、天使界では日頃あまり目撃されない珍しい光景が繰り広げられることになった。普段は恐ろしいほどに沈着冷静で有名な上級天使イザヤールが、珍しく動揺と心配の表情を浮かべていたのだ。これだけでも異常事態だが、その上彼は、毛布にくるんだ弟子のミミを抱えて回廊を全速力で移動していて、突き当たる者をなぎ倒すくらいの勢いだった。すれ違った書物を運んでいた見習い天使が、驚いて本を取り落としそうになった程だ。
 彼が弟子を毛布でくるんで全速力移動自体は、弟子を立派な守護天使にする為の修行の一つ、「寒中着衣泳特訓(人間を助ける側の天使が溺れては本末転倒なので、守護天使を目指す見習い天使たちには必須の訓練の一つだった)」の直後にいつも、風邪をひかせないよう急いで屋内に運ぶのでさほど珍しいものではなかった。だが今回の場合の、近道できるなら壁すら壊しかねない勢いは、日頃の彼に全く似つかわしくない行動だったので、見る者全てを驚愕させたのだった。
 イザヤールをそこまで動揺と心配に陥らせた原因は、弟子のミミが突然高熱を出したことだった。原因のわかる熱なら彼もそこまで慌てることはなかっただろうが、風邪や感染症の兆候も全く無い発熱により勉強中いきなり椅子から崩れ落ちたというのは、ただでさえ弟子想いの彼にはかなりの衝撃だった。それに彼女は、華奢な見た目に似合わず丈夫で非常に健康だったが、ごくごくたまに具合を悪くすると重症化してしまうことが多かった。よってイザヤールの過保護なくらいの心配もあながち大げさではなかった。
 とにかく彼らは驚く程の短時間で医務室に到着し、イザヤールはこれまた破壊する勢いで扉を開けて中に入ったが、日頃の守護天使としてのトラブル処理能力の賜か、弟子の病状は冷静簡潔的確に伝えた。医療担当の上級天使は、弟子を持つ上級天使たちが駆け込んでくるのはよくあることなので、扉の激しい開閉音には驚かなかったが、それを起こしたのがイザヤールであることと日頃あまり医務室の世話にならないミミが患者であることには驚いて、勢いに呑まれるように診察を開始した。
 半ば眠っているかのようにくったりとしているミミに、医療担当天使は額に手を当てておおよその熱を調べたり、脈を取ったり、喉だけでなく体のどこかに炎症が無いか調べていたが、やがて安堵の表情を浮かべ、にっこり笑ってイザヤールに告げた。
「ご安心なさい。これは、悪い病気ではないわ。熱もちょっと高いけど、薬を飲んで二、三日休めば、すぐに良くなる筈よ」
「そうか、よかった・・・」イザヤールもまた安堵の息を吐いたが、それでもまだ心配そうな顔で尋ねた。「だが、何の病気だ?風邪にしては、他に異常は無いし」
「そうねえ、集中し過ぎとかによる疲労とか?あなた、この子に訓練やお勉強させすぎたんじゃないの?」
「じゃあ結局何の病気かはっきりわからないということか?そんないい加減な!」
「う〜ん、強いて病名付けるなら・・・知恵熱、とか?」
「知恵熱?!乳児のかかる病気だろうがそれは!」
「まあ要するに、ゆっくり休ませてちやほや面倒見てあげればすぐに治るってことよ。薬を調合するから後で取りに来て。一晩経っても熱が下がらなかったらまたいらっしゃい」
 そう言うと、医療担当の天使はミミを丁寧に毛布にくるみ直し、熱で頬を真っ赤にし瞳を潤ませている彼女に、「心配しなくて大丈夫よ、いつも頑張りすぎて体が休みたいって言ってるだけよ、ゆっくりしなさい」と微笑みかけて、いいこいいこするように優しく頭をなでた。上級天使の癒しの力でこれでだいぶ楽になるらしく、ミミの頬は真っ赤なままだったが苦しそうな息遣いは消えた。
 イザヤールは釈然としない表情で毛布にくるまれたミミを再び抱え上げて、見習い天使たちの寮にではなく自室に向かった。医療担当天使の見立てを完全には信頼しておらず、万が一伝染性のものである場合の用心をしたのである。・・・というのは建前で、自らを一番欺いているのだと、心の奥底ではよくわかっていた。少しでも傍らに居たい。だから・・・寮に帰したくない・・・それが本音なのだと。心配の動揺が落ち着いた代わりに、彼の表情は憂いで曇った。
 一方ミミも、密かに想う人の傍らに数日居られるということをぼうっとした頭で嬉しく思いながらも、「知恵熱」と診断されたことと、そもそも発熱してしまったことにしょげていた。
(知恵熱だなんて、赤ちゃんみたい・・・)
 本当にまだまだ子供なのかも、それに特に頑張りすぎた覚えもないのに熱が出てしまうなんて、イザヤール様と居たいからって体がズルしちゃったのかな・・・。そんな全てが子供っぽさの表れな気がして、一人前にまだまだ程遠い気がして余計に悲しくなり、ミミはますます濃い紫の瞳を潤ませた。

 自室に戻るとイザヤールはミミを寝室のベッドに寝かしつけ、柔らかなタオルでくるんで冷たすぎないようにした「こおりのけっしょう」を詰めた氷嚢を彼女の額に載せ、水分補給に良さそうな飲み物の調合を始めた。熱を下げるには額より脇などを冷やした方が有効なのは重々知っていたが、寒さも訴えるミミに少しでも心地よい方を選んだのだ。
 透明な水差しに蜂蜜と薬草類と清らかな水が混ぜ合わせられていく。その混ぜ合わせるマドラーを持つイザヤールの指先、そして彼の横顔をぼんやり眺めながら、ミミは小さく息を吐いた。熱でやはりいつもより薔薇色を濃くした唇の間を、小さな熱い風が流れる。それは心に秘めた想いが溢れ逃げ出してしまったようで・・・。
 自分自身の筈なのに、体も心もコントロールできないことに、彼女はいつもより更に怯えた。見習いから一人前の天使になれたら、心も体も、もっと強くなれるのだろうか。きちんと管理し、自在に制御できるくらいに・・・イザヤール様みたいに?ミミから見た師はいつでも強く精神も安定していて、重い任務もあるであろう悩みも、一人で抱え、見事に処理していた。早くそうなりたいのに、ならなくてはいけないのに、焦れば焦るほど、こうして到達は、遅くなる。
 いつしか、ミミは眠ってしまっていた。うっすらと浮かんでいた涙が、長い睫毛に押されて、ひとしずく零れていく。イザヤールはそれを見て、苦しいのだろうかと眉をひそめ、そっと指先で彼女の頬に触れた。熱い。決して冷たくない己の指先でも、わかるほど。
 努力家で、優等生で、師である自分を怒らせるようなことをほとんどしないミミ。手がかからなさすぎると言っていいくらいで、最近ようやく、彼女なりの控えめな甘え方がわかってきたと思っていた。だが・・・。イザヤールの目に切なそうな色が浮かんだ。だが、結局自分は、彼女が安心して悩みや苦しみを訴えられる存在には、なり得ていないのではないか・・・。
 虫がよすぎるとはわかっていた。己の気持ちを隠している者を心から信頼してくれるなど、あり得ない。・・・弟子に許されぬ片恋をしている男に。その当の対象である弟子が、何の屈託も無く悩みを打ち明けるなど。
 それでも、自分は心苦しいながら、ミミにある程度は信頼されているとは思っていた。むしろその天真爛漫な信頼が辛くさえあった。こんなに信じてくれている弟子を、はからずも恋慕の対象にしてしまっていること・・・何故よりによって彼女なのだと。幾度となく自問しても無駄だった、不覚そのものな片恋は。愛しさを覚える度に苦さも引き起こす。それでも・・・甘えてくれること、信頼されることが、とてつもない幸福だったというのに。
「・・・もっと、おまえに安心して甘えてもらえる師匠にならなくては、な・・・」
 イザヤールは自嘲気味に、だが優しく微笑んで呟き、先ほど医療担当の天使がしたように、ミミの頭をそっとなでた。
 まどろみの中、その声が届いたかのように、ミミは熱に浮かされた心で思う。お師匠様に片想いしてしまう、悪い弟子で、ごめんなさい・・・。知恵熱じゃなくて恋煩いだったらどうしたらいいのだろうと不安になる心は、頭を幼な子みたいになでられていることで、少しずつ穏やかになっていく。
 零れた涙が乾く頃にはミミの唇に安らかな微笑みが浮かんでいて、それを見たイザヤールもまた、嬉しそうに目を細めた。〈了〉
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3 コメント

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理想と現実 (神々麗夜)
2017-03-14 00:09:27
女性天使なら気付くかもしれないですね。でも二人の今を壊し未来に進むのは二人に任せて見守るぐらいですかね?
男子生徒憧れの保健室の美人先生…現実は中年のおばちゃん先生
何処かにいるのかしら?若い美人の保健室の先生
現代社会では大人の知恵熱というものがあるそうですよ。心身の疲労やストレスが原因との事。ミミちゃん頑張りすぎちゃったかな?
でも恋煩いかもしれないのかぁ…恋愛感情はどうしようもないですからね。良い子でも悪い子でも

船旅中にリリンが熱を出したら
リリン「うぅ…ごめん」
ククール「だからあの時ルーラで帰ろうって言っただろ、レレン、イザやん…お前らが暖炉や浴室やキメラの翼を使い物にならなくしたせいだぞ!さっさと掃除してこい!」
レレ「ククールさん鬼!」
イザやん「怒りんぼ!」
クク「…じゃあ何か軽い食事持ってくるから寝てろよ。」
リリ「はーい」

レレ「お姉ちゃんにね、お粥作ったの」
お粥?「ウォォ…ン…ォオ」
クク「…味見したのか?」
レレ「してないや。パク…ウゲェ!まずい〜!」
クク「掃除は?」
レレ「お姉ちゃんの看病しないと!」
クク「リリンには俺がついてるから…お前が看病したら姉ちゃん悪化する!」
レレ「ひどーい!」

イザやん「少しでも温かくなるように」
リリ「いつも冷たくあしらっているのに…ありがとう師匠」
イザやん「火吹き芸いっくぞー!」
リリ「前言撤回!今すぐ出て行け!」
イザやん「遠慮するんじゃない♪うぎゃ!」
クク「船内で火吹き芸するな!それとパーティに馬鹿を二人以上入れると化学反応を起こして大変危険だからな!」

ちなみにシェルル君は故郷に帰省中
わりとどーでも追記w (神々麗夜)
2017-03-14 07:49:44
妖精だと間違いなくバレそうです…
『そんなに好きなら告っちゃえ!アタシが言ってきてあげる!(悪気なし』なんて言い出しそうwなんとなくですが天使は見守る、妖精はとにかく進展させようとしそうです。
リリンが熱を出したのはまだ冷たい海を自力で泳いできたゴンタが船に飛び乗ってリリンを海に突き落としたのが原因です。
(ゴンタは暴走バギムーチョで吹っ飛ばしました)
彼女も着衣泳出来るのですが船に付けた風呂や暖炉をお馬鹿二人に使い物にならなくされてしまいルーラで戻るにも意地を張りストックのキメラの翼はスライムゼリーと一緒に煮込まれ使い物にならなくされてしまい結果熱を出してしまいました
いくら元天使でも女の子が身体を冷やしっぱなしでは風邪ひいちゃいます
不運?は重なるのですね(泣) (津久井大海)
2017-03-14 10:25:27
神々麗夜様

いらっしゃいませおはようございます☆二件分まとめてお返事させて頂きます☆

なるほど〜天使見守り系、妖精お節介系、確かにそんな感じしますよね。

保健室の美人先生はバニーさんやメイドさんなどのカテゴリー、すなわちロマンの一種!自分で言っててわけわかりません、すみません。

ほほう、大人の知恵熱もあるんですね。そういえば昔、友人(社会人)が体調を崩した際、医者に知恵熱と言われたと苦笑していたことを思い出しました(笑)

うう、そちらの女主さんの発熱の原因が辛すぎて泣けます。熱で苦しむ女の子は可哀想だけど萌えもありますが(おい)、この場合萌えてるどころじゃないのが(泣)
お粥?怖いです、絶対動いてるし!師匠せっかくの見直されるチャンスが、あ〜あ。キメラのつばさを煮込んでもダシは出ません。彼氏さんこんなときに留守ですか!泳いできてパーティリーダーを落水させるなんてもはや大事件!ツッコミしきれず失礼しました〜。

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