レンズの向こうに・・・PART2

きままな写真ブログです。ホッとする写真、懐かしい写真、ニコッとする写真、感動する写真、そんな写真が撮れたら楽しいですね。

Vol.2023  日南の野鳥達にも春の動きが・・ (Photo No.14069)

2017年03月01日 21時21分39秒 | 風景
家の前の酒谷川で、ヤマセミのつがいが仲良く並んでいます。先日、交尾を済ませたば
かりですが、まだ産卵までいかないようです。ところで写真に向かって右側がオスで左
側にいるのがメスなのですが、ヤマセミのオスとメスの見分け方は意外と簡単なんです
よ。オスは胸に茶色っぽい毛が混ざっていて、メスは羽根を広げた時に、脇の下に茶色
の毛が混ざっているのです。鳥の仲間は、生涯、伴侶を代えない種類が多いですよね。
ツルの仲間、カモの仲間、そしてこのカワセミ、ヤマセミの仲間がそれに該当します。
家の前に現れるヤマセミの巣の場所はわかっているので、今年はぜひともヤマセミの親子
の写真を撮ってみたいと思います。

【撮影日】2017/02/19 15:48:45.08
Nikon D300 レンズ:VR 70-300mm f/4.5-5.6G
焦点距離:300mm f/7.1 1/200秒

今日の日南は朝から曇り空でした。昼前には雨が降り出して、そんな訳で今日は終日
肌寒かったですね。3月になって春が近いと思っていましたが、太陽が顔を出さないと
まだまだ底冷えのする季節だと、今日の天気が教えてくれたような気がします。

先日の「NHKスペシャル 又吉直樹 第二作への苦闘」をご覧になった方も多いと
思いますが、あれ、良かったですよね。お笑い活動を続けながらも、2015年1月に小説
「火花」でデビューして、その処女作がいきなり芥川賞を受賞しました。その「火花」
はちょうど今、NHKでドラマ化されて放送されています。「火花」は累計290万部という
驚異的な発行部数を記録した事は、まだ記憶に新しいですよね。税込1296円の小説価格
ですから単純計算でも、印税は 1296円×290万=37億5840万×10% =3億7584万 と
なると思いますが、彼の所属している吉本興業がかなり割合の金額をとっているようで
すから、どれくらいの印税が彼の手元に残るのかわかりませんが、普通のサラリーマン
が一生働いて稼ぐ金額と同じくらいの金額を、この一冊の小説で手にした事は間違いない
でしょうね。そんな彼の第二作の小説が、いよいよ3月7日に発売される月刊「新潮」で
発表されます。月刊「新潮」の値段は\980のようですが、おそらくかなり売れると予測
されていて、その発行部数は通常の1万冊の4倍にあたる4万冊なんだそうですよ。この
「劇場」は、売れない劇作家の苦悩と恋愛をテーマにしているそうです。NHKスペシャル
でも、その小説の一部分が紹介されていましたね。テレビを見ていなかった人の為にも、
今日はその中身をちょっとご紹介しましょう。「劇場」は、こんな出だしで始まります。

【 まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。
 もう少しで見えそうだと思ったりもするけど、眼を閉じた状態で見えているのは、
 まぶたの裏側の皮膚にすぎない。
 あきらめてまぶたをあげると、あたりまえのことだけれど、風景が見える。  】

デビュー作の「火花」は、お笑いタレントが書いた小説という事もあって、多くの若者
も読んだようですが、彼は「たしかに本を読まない若者も手に取ってくれたが、“むず
かしい”という人が多かったことにがっかりした。」とも言っていました。それで、二
作目はもっとわかりやすくしよう、と思ったそうですが、この二作目の小説の出だしが
先ほど紹介した出だしです。どうでしょうか。こんな出だしで始まる小説って、なかなか
ないですよね。

この第二作目の「劇場」の中の主人公である劇作家は、自分には才能があると信じている
ものの、誰にも認めてもらえない挫折感や焦燥感に襲われた時に、その時の自分の顔を見

【暗い窓ガラスが、鏡のように自分の姿を映した。そういえば誰かに幽霊と呼ばれた事
 があったが、まさにそれだと思った。】

と又吉直樹は書いています。さらにこの小説の中の売れない劇作家が恋した相手と初めて
出逢った時の表現が

【僕はその人をじっと見ていた。この人なら自分のことを理解してくれるのではないか
 と思った。次の瞬間、僕はその人の横にいた。その人は緊張で強張った顔を僕から遠
ざけ、赤い髪を揺らした。
 「靴、同じやな」
 いつの間にか僕は小さな声で変な事を言っていた。僕は知らない人に話しかけたこと
 などなかった。
 「えっ」
 その人の表情から緊張の色は消えない。
 「靴、同じやな」
 その人は僕の汚れたコンバースのスニーカーを見た。そして
 「違いますよ」と言った。
 「同じやで」
 同じであってほしかった。】

私もそうでしたが、たったこれだけの文章で、又吉直樹の第二作「劇場」に引き込まれた人
も大勢いた事でしょうね。さらに印象的だった文章がこれです。

 【どこでもないような場所で、乾ききった排水溝を見ていた。誰かの笑い声が
  いくつも通り過ぎ、せみの声が無秩序に重なったり突然消えたりもしていた。】

「乾ききった排水溝」なんて言葉は、恐らく凡人には思い浮かばないでしょうね。又吉直樹
の非凡さが、この文章だけ見てもわかるような気がします。みなさんは「嫉妬」と言う言葉
は、もちろん知っていますよね。では、この「嫉妬」という言葉をわかりやすく表現しなさ
い!と言われたら、いったいどういう風に表現しますか。私だったら、自分が持っていない
才能を相手が持っていたと気づいた時に思う感情、とでも言うかも知れませんが、又吉直樹
は「劇場」の中で、ライバルの劇作家の活躍を耳にし、独白する場面を「嫉妬」として、こ
う表現していました。

【嫉妬という感情は何のために人間に備わっているのだろう。自分の持っていないものを
 欲しがったり、自分より能力の高い人間を妬む精神の対処に追われて、似たような境遇
 の者と集まり、嫉妬する対象をこきおろし、世間の評価がまるでそうであるかのように
 錯覚させようと試みたり、自分に嘘をついて感覚を麻痺させたところで本人の成長とい
 うものは期待できない。他人の失敗や不幸を願う、その癖、そいつが本当に駄目になり
 そうだったら同類として迎え入れる。その時は自分が優しい人間なんだと信じ込もうと
 したりする。この汚い感情は、なんのためにあるのだ。】

凄い描写でしょう。1回読んだだけじゃ、なかなか理解できない所がありますよね。私も何度
も何度も読んで、初めて彼の言わんとしている事がわかったような気がしました。この第二作
の小説の中のキーワードが「本当によく生きて来られたね」という言葉なのだそうです。この
部分の文章が、小説の中の沙希という恋人との会話の中で、こんな風に表現されていました。

 【「なあ」
  「ん」
  「寝た?」
  「起きてるよ」
  「手つないでって言うたら明日も覚えてる?」
  「うん?どういうこと?」
  「明日、忘れてくれるんやったら手つなぎたいと思って」
  「手をつなぐことを恥ずかしいと思ってる人、永くんだけだよ」
  沙希の手はとても温かかった。
  彼女が目を開ける。
  「永くん、不思議そうにしてんの?。自分がつなぎたいって言ったんでしょう?。」
  「まだ迷ってんけど」
  僕がそう言うと沙希は笑いながら、
  「本当によく生きて来れたよね」と言った。】

わかりますか?。この一節の文章。まさに売れない劇作家の心情をうまく表現していると思いま
せんか。NHKスペシャルを見た人は、きっと彼の第二作の「劇場」を読むんだと思います。あの
放送を見たらきっと読まずにはいられないと誰もが思ったに違いありません。私もぜひとも読み
たいと思いました。3月7日が本当に楽しみですよね。

今日のお薦めの焼酎は薩洲濱田屋の「花の頃」という焼酎です。鹿児島の芋焼酎です。
数種類の焼酎をブレンドしてできているそうです。飲んでみると、奥深い味わいです。
香りがいいので、黄麹の焼酎の割合が多いような気がしますね。焼酎の名前がいいで
すよね。「花の頃」なんて、これから花見のシーズンを迎えますから、桜の木の下で
この「花の頃」を飲むのもいいでしょうね。

今日のお薦めの曲は阿部真央の「母である為に」です。母親の強さや優しさがよく
わかる歌です。何よりも母親というものは「我が子の為に」が第一優先なんだと言う
事がよく伝わってきます。これは父親にはなかなか理解できない感情のひとつなのか
も知れません。もちろん父親だって子供の為に命を投げ出すこともできるのですが
母親の愛情というのは、何というか、それよりももっと奥深い愛情というか父親の愛
情とは次元が違う愛情なんだと思います。それはきっと、自分のお腹の中で一年近い
日々を一緒に過ごして来たという「絆」があるからなのでしょうね。


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