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東レ 繊維成熟超え世界へ…日経新聞8月13日11面より

2011年08月13日 14時34分17秒 | 日記
地場の技術力を結集

文中黒字化は芥川。

かつて日本経済の屋台骨を支えた繊維。「成熟」「斜陽」というイメージがすっかり定着したが、東レは今期から始まった中期経営計画で成長を目指す「基幹事業」に位置づけを変えた。

突破口は北陸など国内の繊維産地に息づく技術集積の活用だ。低コスト生産を得意とする中国勢にまねできないハイテク繊維で世界市場に攻勢をかける。

もうかる事業に  

「生産中ヒートテック」「生産中シルキードライ」。東レの石川工場(石川県能美市)にずらりと並ぶポリエステル原糸の量産設備が24時間フル稼働している。

多くがファーストリテイリングの「ユニクロ」の機能性肌着などに使われる。超極細だったり断面が三角形や星形だったり。独特の機能や風合いを表現するために最先端の製造技術を惜しみなく投入した。

東レの繊維事業は連結売上高の4割弱を占める。ただ基幹事業に据えるのは規模の大きさのためだけではない。2~4%にとどまっていた繊維事業の売上局営業利益率は2011年3月期に5・6%に上昇。12年3月期には6・9%に積み上がる見通しで、もうかる事業になってきた。


東レは原糸に加え、生地や縫製品でも着実に利益を稼ぐ。原糸を織ったり編んだりして生地にし、染色するのは資本関係のない国内の加工会社。東レは加工工程を委託する。日覚昭広社長は「外部の技術力を結集することで革新的な素材を消費者に訴えられる」と強調する。

付加価値を担う存在だけに、パートナーは国内から選りすぐる。
例えば織物で国内最大級の生産規模を誇る丸井織物(石川県中能登町)。全国のアパレル企業の調達担当者が「こんな生地を作ってくれ」と足を運ぶ。軽くて吸汗性、速乾性に優れるスポーツウエア向け生地など、毎年約1800種類もの新製品を考案する。

「ハイテク生地をこれほど多品種少量生産できる企業は中国にはない」と宮本徹社長は胸を張る。作った生地の9割は東レに納入する。

東レは加工会社を組織化し04年に「東レ合繊クラスター」を発足。強みを持ち寄り素材開発や市場開拓に励む。合繊の最大産地、北陸の地場企業中心に今では全国99社が参加する。


危機感が背押す 

合繊織物の国内生産で6割を占める石川、富山、福井の北陸3県で、従業員4人以上の事業所数は02年に比べて4割減った。だが加賀の織物として培われた織物や染色の技術は競争力を失っていない。

淘汰の波が激しいからこそ、生き残った企業は明確に他社と違う技術を持つ。東レ合繊クラスター会長を務める小松精練の中山賢一会長によると 「かつては発注者の指示通りに動く下請け企業ぽかりたった」。

中国など新興国企業の追い上げで状況は一変。「危機感が断トツの技術開発へと背中を押す」縮んでいるとはいえ、国内には年10兆円近い衣料品市場がある。

中国では世帯当たり可処分所得が年1万5000~3万5000ドルの層が09年で9000万人。品質にこだわりを持つアッパーミドル層だ。

15年には2億2600万人に膨らむ。成長市場を巡る競争はこれからが本番だ。
「東レとは唯一無二の関係」。世界展開を急ぐファストリ幹部は絶対の信頼を寄せる。

「川上」の原糸メーカー、「川下」のアパレルメーカーの間で隠れがちだった織物や染色など「川中」の役割。ここが活気づけば繊維復権への大きな一歩となる。(鳳山太成)

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