すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

吾妻ひでお「失踪日記」

2005-11-10 08:39:40 | 書評
放浪編 その一


家庭のいざこざで、九泊十日の家出をしておりました。
もう三十。家族への抗議を、家出という手段に訴える男。


で、なにをしていたのかと言うと、東日本をウロウロしておりました。

が、元来、出不精。旅行など好きではない。
一番の楽しみと言えば、家でゴロゴロして、昼から酒を飲みながら本を読んだり、映画を見ること。

そんなわけで、せっかくの長期の休暇でしたが、やっていることと言えば、ホテルや公園で本を読むこと。


そんな最中に読んだのが、吾妻ひでお「失踪日記」。
失踪中に「失踪日記」を読む男。


この本は、著者自身が失踪、及びアル中での入院体験が描かれている漫画です。冒頭から、
この漫画は人生をポジティブに見つめ、なるべくリアリズムを排除して描いています
吾妻ひでお「失踪日記」5頁 イースト・プレス
と書いてある通り、コミカルです。

が、「リアリズムを排除して」と書かれていますが、エピソードの一つ一つは、体験した本人でなければ分からないことばかり。
問題は昼間 何もすることばないので 時間をもてあますんだよね
吾妻ひでお「失踪日記」69頁 イースト・プレス
あぁ、分かる分かる。

昼間、拾ったスポーツ新聞を読む
日付の表示無しの時計しか持ってなかったので その日が何日か知るのに重要 天気予報も大切だ
興味ないし 知らないけど 読む物無いので 競馬の予想も読む
生活のペースも安定してきた
水汲み場も2~3確保
暖房はまた新しく拾ったりして暖かく眠れる
雨対策は今いち 時々浸水
雨の日はなにより一日中外出できず シートにくるまってなきゃならないのが辛い
食い物はだいたい どのゴミ捨て場にどんな物が出るか予測できるようになった
吾妻ひでお「失踪日記」45~46頁 イースト・プレス
あぁ、分かりたくない分かりたくない。

というわけで、今、家出・失踪中の方。または、これから家出・失踪希望の方。後、アルコールを朝から飲んでしまうような方。
そういう人間には、非常に勉強になる本でした。


失踪日記

イースト・プレス

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