映画と自然主義 ジャン・ルノワールはこう言ったのですが

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

にっぽん泥棒物語

2017年07月11日 23時25分04秒 | 邦画その他
『にっぽん泥棒物語』
1965年 117分

監督 山本薩夫
企画 植木照男、宮古とく子
脚本 高岩肇、武田敦
撮影 仲沢半次郎
美術 森幹男
音楽 池野成

出演
三国連太郎
佐久間良子
伊藤雄之助
江原真二郎
緑魔子
市原悦子
千葉真一
西村晃
北林谷栄




裁判での証言を求められて東京まで出てきはしたが、結局は証言を拒んで逃げるようにして帰ろうとした上野駅.
彼はその上野駅で、被告人の親子と出会ったのだった.
親しく言葉を交わす刑務所仲間.皮膚病の薬を塗った話にもなった.話をすれば当時のことが思い出され、被告人の男が間違いなく無実であることも、また思い起されることになったであろう.後ろ髪を引かれるような想いからであろうか、子供にお菓子を買い与えて別れようとした彼であったのだが、その彼に『どこで薬を塗ったの?』と、子供が聞いたのだった.彼は周りをはばかりながら小声で『刑務所』と答えたのだが、けれども子供は『おじさんも刑務所にいたの?』と、大きな声で聞き返すように言った.周囲の皆に刑務所と言う言葉が聞こえてしまった.彼は思わずおろおろしかけたのだけど、この時彼は気がついたのであろう.被告人の子供が、父親が刑務所にいることで、学校でいじめられると言ったら、『馬鹿野郎、殴ってやれ』と言ったのは彼であった.その彼が、自分が刑務所に居たことを周囲の人に知られたのではと、おろおろして居る.....本当の勇気とは何なのであろう、自分は子供より意気地なしではないのか、と.
そして、そして.....
正しく考えれば、『馬鹿野郎、殴ってやれ』は、勇ましいだけで頂けない言葉である.この子の場合は父親は無実であり、虐められるのは全くの不当.虐められて殴り返すよりも、父親の無実を証明することの方が遥かに大切なことのはずなのでは.....
この子は、学校で虐められても、父親が刑務所に居たことを隠そうとしない.自分は一度はその気になって証言するために東京までやってきたのに、刑事(検事)に過去の犯罪をバラすと脅されて、否脅されたことよりも、前科者、刑務所に居たことを知られることを怖れて、証言を止めて逃げ帰ろうとしている.

なぜ彼が小声で言ったかと言えば、刑務所に居たことを恥ずかしく思っているから、隠そうとしているからに他ならない.では、子供が大きな声で(普通の声で)刑務所と言えたかと考えれば、それは、父親が刑務所に居ることを恥ずかしいことと思っていないからであり、なぜ恥ずかしくないかと言えば、子供は父親を信じているから、と言うことが出来る.
あの子は、父親が刑務所にいるために、学校でいじめられていたけれど、けれども、父親を信頼しているので、刑務所にいることを決して恥ずかしいこととは、思っていなかったのだった.
彼は考えたはず.この男の子と同じように、刑務所に居たことを恥じることなく話せるようにならなければならないのではないのか.否、自分の場合は前科4犯なので、刑務所に居たことは恥ずべき事である.が、その事実を自分の子供に秘密にすべきことなのかどうか.それはまた別の問題なのではないのか.
自分も、自分の子供から信頼されるようにならなければならないとするならば、刑務所に居たことも秘密にすべきではないはず.父親が刑務所にいたことが知れれば、子供は学校で虐められるかもしれないけれど、けれども、父親が刑務所に居たという事実を子供が知る事が、子供にとって恥ずべき事なのか.....

被告人の子供の場合は、父親が無実なので、子供は父親を信頼できたけれど、彼の場合は前科四犯なので、それを知ってしまったら子供は父親を信頼できない、このようにも思える.事実、妻もそう考えて、子供を連れて逃げ出してしまったのだった.

けれども、信頼は真実によって成り立つものである.裁判の席で、面白可笑しく犯罪の話をする夫を、妻は軽蔑の眼差しで見ていたが、裁判が進むに連れて、刑事が嘘つきで夫よりも悪いやつだと知るに連れて、真実を話そうとしている夫が正しいことをしているのだと、理解することが出来たのだった.
無実なら信頼できるけど、前科者は信頼できない、子供から信頼されないと考えるのは、間違っていた.人から信頼されるには嘘を言ってはならないのであり、つまりは法廷で真実を証言することは、被告人の無実を晴らし、子供の信頼に答えること、子供から信頼される事だったと言うことが出来る.
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