鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

大学跡地利用の明暗

2017年03月10日 | 議会活動

平成29年3月10日(金)

 

 今日の朝刊に載っていた、地元市議会の論戦の記事に注目しました。

 正式な質問内容についてはどのようなタイトルかは判りませんが、地元の大学の閉鎖・撤退に関連し、その影響と新たな高等教育機関の立地誘導に対する市の考え方を質したようでした。

 

 影響に関しては、市の試算では下宿費が年間2億1千万円の損失となり、学生数は現在1,266人でそのうち市内出身者は約23%で、市内高校生の進学の受け皿として一定の役割を果たしているといいます。以前、私がこの件に関連したブログを書いたところ、同校の在校生から「地元にある大学だから入学したのに残念」というメールをいただきました。学生達にとっても「地元の大学」に大きな期待を寄せていたことが判ります。

 また、市内に本社を置く企業への卒業生の就職人数はここ数年15~20%ほどで、雇用促進や定住にも効果が及んでいるとしています。

 そのほか、教員の地元行政への参画は、平成21年度以降、延べ115人が157の審議会などで委員を担うなど、また、市に関連した研究に取り組んでいます。

 そのほか、教員による市民向けの講座などの講師、学生によるまちづくりへの貢献など、経済効果への影響はもちろんのこと、まちを支えるシンクタンクとしての役割は、相当大きかったことがうかがえます。

 

 私立大学の経営状況は大変厳しく、少子化や立地などに由来して学生数が減少し、閉鎖・撤退に至るケースは少なくないと思われます。仮に新たな誘致の話があるとすれば、立地は大きな要因になると想像します。新たな誘致先は、交通の便の良いところが必須条件ではないでしょうか。

 とはいえ、当面は跡地利用をどのような視点で進めていくのか、土地や建物は学校法人が所有するものですから、行政が理想とするまちづくりとの整合性も図りながら、調整を進めていかねばなりません。

 私はこの大学で数年間の非常勤講師を務めたことがあり、今でも一部ですが先生達と繋がりがあります。短大から4年制に移行したときに、日本で初の「環境防災」と「流通経済」という、時代のニーズに応えた最先端の体制を整え、地元との連携などで大きな期待を担ってきただけに、閉鎖は大変残念でなりません。

 大学は、静岡市に移転ということで無くなるわけではありませんが、跡地利用や新たな大学などの誘致に焦点は絞られます。街の灯りを早く取り戻してほしいものです。

 

 さて、現在開催されている県議会2月定例会の平成29年度予算には、「先端農業プロジェクト」について触れています。

 ご承知の通り、本県はお茶をはじめとする農産物では全国屈指の生産県でありますが、社会情勢の大きな変化のなかで苦戦を強いられ、農業振興策は急務です。本県農業の生き残りをかけた「革新」を一気呵成に進め、競争力を高めるとしています。

 先端農業プロジェクトの拠点となるのは、沼津市の東海大学旧校舎を改修した「先端農業イノベーションセンター」で、その整備が進んでいます。慶応大学や理化学研究所と協働し、世界が認める革新的な技術開発を進めるため、既に県内外の企業による12件の研究テーマを採択し、本年夏の開所に向け準備が進んでいます。

 

 県では、このプロジェクトのエンジンとなる農業版オープンイノベーション・プラットフォームの運用を担う「一般財団法人アグリイノベーション推進機構」を来年度早々に立ち上げます。拠点内の研究にとどまらず、県内外の企業や学術・研究機関など産学官金の幅広い参画を得て、農業の飛躍的な生産性向上につながる研究や、関連ビジネスの展開を狙うとしています。

 

 ご存じの方いるとお思いますが、拠点となる東海大学旧校舎のある場所は、富士市の大学と比べ、さらに条件の厳しいところに立地していました。大学経営の立場から、そこからの撤退は理解できるものです。また、愛鷹山の麓にいくつもあった下宿は大変な打撃を受けたことは明白です。

 閉鎖・撤退が動き始めた頃から、地元行政と大学とは何らかの交流を図り、県などにも打診するなどスピーディーな動きが水面下であったことは想像がつきます。撤退から新しい拠点構想が浮上するまでは短時間であったことがその答ではないでしょうか。

 

 このように、明暗を分ける事象はどこにでもあり得ることです。行政や議会が、市や県がもっと頻繁に情報交換しながら連携していく大切さを実感しています。

コメント
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