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【カフェ ―vision―】〈31〉

2017-06-14 23:02:33 | 【バルセロナの紺碧(azul)】
そしてロヨラが、カトリックへの信仰に目覚め、想いを育み、黙想したのがここマンレザにある聖イグナシの洞窟「ラ・コバ・サン・イグナシ」。そんな聖地が目前にあるとは露知らず、お腹を空かせた二人は朝食が食べられるところを探していた。もちろんその洞窟のある教会を目指していたわけではなかったが、ちょうどその裏手の一画に朝から営業しているカフェがあった。まだ時間が早かったせいか観光客はもとより地元の人もいないところに二人はお邪魔した。完全に貸し切り状態だった。ロヨラの洞窟の話は知らなかったが、このカフェもどこか洞窟のような作りだった。

そこでは両腕に孔雀のTattooを入れて、右目が白濁しているマダムが笑顔で迎えてくれた。その笑顔の向こうにその日の最初の客がアジアの外国人であることであることへの戸惑いが微かに垣間見えた。ただそれは接客業であろうとなかろうと、違う言葉を話す、違う人種の、違う文化圏の人に遭遇すれば誰しも感じる違和感でそれはナチュラルな反応とも言えた。そこに嫌な感覚はなかった。ピザトーストと紅茶(Black tea)を頼むと、レンジの中に入っている受け皿のような器にえらく大きなピザトーストが出てきた。朝にはちょっと重たかったが、これからの濃密なスケジュールをこなすには、この高カロリー摂取も意味があるような気がした。朝食を食べながら午後と帰りの予定を二人で考えた。残された時間はこれからの午後と夜そして明日の午前中に限られていた。ややもすればせわしなく、せかされるような気分になりそうなものだったが、このカフェが持つ独特な時の流れと紅茶が気持ちを落ち着かせた。もうホテルの心配もいらないという安堵感が心を穏やかにさせた。私たち二人とマダムの3人、その空間は二人のために用意された場所だった。

そうこんな感じ。こんなイメージと思いながらこのカフェの時間を味わっていた。

自分がやりたいcaféの広さや天井の高さ、造りや素材。
住むとは違う非日常があり、でも居心地がいい。
自分の家や部屋とも違う、自分に浸れるその時間が、自身を浄化し新しい自分を生む心のスペースを作る。
時の流れを1.5倍遅くする。
ため息ができる。あくびができる。深呼吸ができる。胸を打つ鼓動すらも穏やかになる。
吸う息、吐く息も普段より少し深くなる。
コーヒーの湯気が見える。トーストにバターを塗り、サクッとほおばる。
お茶を飲んで手帳を開いたり、お気に入りの雑誌をぱらぱらと捲ってみたり。
飾っている絵をぼーっと眺めていたり。
いつもなら手にしない詩集に触れてみたり。
三日坊主の日記を思い出したように書いてみたり。
パウダールームも清潔で、花が活けていて、リセットできた自分を確認できる。
帰りにはマスターや店のスタッフと軽く世間話。
そんなことを妄想・夢想していた。

午前中の陽の光が優しく店内に差し込んでいた。午後の予定のメインどころは、ランブラス通りの散策にした。昨日は彼女の希望のモンシェラートだったこともあり、今日は自分が行きたいところに行くことを勧めてくれた。本当はビーチに行きたかったが時間のことを考えてそのことを言うのは控えた。その代り一ケ所行っておきたいところがあった。それがダリ美術館。サルバトール・ダリの美術館と言えば、カタルーニャ州のフィゲラスにあるダリ美術館が本家本元だったが、バルセロナ市内にもプライベート美術館ではあったがダリの作品ばかりを集めたダリ美術館があった。2006年に上野のダリ回顧展に行って以来のダリの作品群との再会。ガウディと同じ位ダリの世界観もカタルーニャで見ておきたかった。彼女はその案に関しては二つ返事で賛成してくれた。胃も気も十分に満たされた。

マダムに勘定を済ませ、お別れを言ってから店を後にした。空は相変わらず快晴で気持ちがよかった。カフェを出てから数分でカルデネ川に着き、川沿いの道を歩きレフォルマ橋を渡るとそこはもうマンレザの駅だった。10分ほど待つとバルセロナ行きが到着、慌てることなく列車に乗れ、向かい合わせの席に無事座れた。切符も例の地下鉄の回数券が使えて有難かった。順調だった。自分がここカタルーニャで流れている。カルデネ川の流れに同調し、何の阻害もなく抵抗もなく流れている。

流れている。
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