判例紹介
家主から借家人に対する建物明渡請求訴訟継続中でも、更新料債権の消滅時効の進行は妨げられないとされた事例および更新料支払の合意は法定更新の場合には効力がないとされた事例 (東京地裁平成3年5月9日判決、判例時報1407号80頁)
(事例)
不動産賃貸・管理を業とする会社が、家主として借家人との間で、昭和55年1月30日、期間5年で建物を賃貸したが、その際契約更新時には最終賃料の2倍相当の更新料を支払うとの合意が成立した。
ところで、家主は、昭和55年7月、借家人に対して、債務不履行があったとして賃貸契約を解除して建物明渡請求訴訟を提起したが、昭和62年5月、訴訟上の和解が成立した。
その後、家主は、平成2年4月、借家人に対し、昭和60年1月31日の更新および平成2年1月31日更新を理由とする更新料の支払を請求した。
(争点)
1、昭和60年の更新を理由とする更新料債権について商事消滅時効が成立するか。
2、平成2年の更新(法定更新)を理由とする更新料について、更新料支払の合意は賃貸借が法定更新された場合にも及ぶか。
(判決の要旨)
1について、判決は、家主が借家人に対して建物明渡請求訴訟を提起していたとしても、これによって権利行使について法律上の障害はないから、更新料債権の消滅時効の進行は妨げられず、商事消滅時効5年の経過によって消滅しているとした。
2について、判決は、本件建物賃貸借契約書の文書上、更新料支払義務は合意更新の場合を念頭に置いて定められたものと認められることおよび建物賃貸借契約では法定更新されると期間の定めのない賃貸借となり借家人はいつでも解約申入れを受ける危険を負担することを理由として、更新料の支払の合意にはその効力がないとした。
(短評)
更新料債権が、他の債権と同様に一般には10年、商事について5年で時効消滅することについては、事新しいことではないが、家主が賃貸借契約解除を理由として建物明渡請求訴訟を提起している場合である点に問題がある。
この場合、家主としては明渡を請求しているので、他方で更新料の請求をすることは賃貸借契約の存在を認めることになるため実際には更新料を請求することができない立場になる。
しかし、更新料を請求できない立場といっても、それは事実上の問題にすぎず法律上権利行使をすることの障害になるものとはいえない以上時効の進行を妨げないというべきであり、本判決は、妥当な判決といえる。
なお、本判決は、更新料支払特約の合意が法定更新の場合に及ばないとする事例の1つである。
(1992.05.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
東京・台東借地借家人組合
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