書、燃ゆる。

ここから始まる王者への道

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ウルトラニャンコの旅物語

2017-02-09 06:02:08 | 物語
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…… …… ………… ………… ……… ……


長い… 永い… 沈黙
押し寄せては押し黙る 言葉

僕の今の気持ちは、ジグソーパズルが完成する間際の気持ちに近い。嬉しいような、少し悲しいような。何とも切ない気持ち。

「リワイルド先生。」
「ん?うむ…。」

「様々な気持ちが去来する。何とも言いようのない感情だ。だが単純に捉えるなら、君は殺人を犯した犯罪者ということになる。」
「はい。」
「しかし今更その事件のことを表沙汰にして裁くことは不可能に近いだろう。」
「はい。」
「だからというわけではないが、私は君を犯罪者として見ることはしない。ある意味君も被害者であるわけだから。こんな言い方をしたら、君の人生を冒瀆することになるかね?」
「いいえ。先生のお心遣いに、照れに近い喜びを感じます。」
「さて、そこでた。私はやはり、いちカウンセラーであるわけだから、君の心と向き合うことが責務であるので、今後も君の状態の経過を見守ることとする。」
「はい。ありがとうございます。」
「また何か思い出したら連絡してくれたまえ。ではな。」
「お忙しい中、わざわざ来ていただいて、本当にありがとうございました。」
「うむ。」「無理はしないように。」


次の日、僕は退院した。
失われた期間のことを思い出したら、何かが埋まると思っていた。確かにピースは揃い、パズルは完成した。だが、何だろう。このぽっかり空いたような気持ちは。何かが…足りない。何だろう?
休日の午前中、公園を一人歩きながら心が彷徨う。特に目的もなくただ遊歩道沿いに歩く。
まるで、自分で道を選ぶなど人間の驕りだと諭されているかのようだ。ただ決められた道をぶらぶらと歩いているだけ。違いがあるとすれば、その道を信じて疑わない時と、迷いながら歩く時があるだけ。

「そうか。」ふと呟く
足りないものがわかった。気持ちだ。
最愛の人を自らの手で殺めたのに、それに対する感情が欠如しているんだ。
悲しいけど涙は出ないし。申し訳ない気持ちはあるが反省にまでならない。寂しいといえば寂しいが、もはや起きたことが遠すぎて浮き彫りにはならない。
「ケアン。」「君はあの時何を思った?」
「君は死の間際に僕をちゃんと憎んでくれたかい?」

人生は決められた道。だが、誰にも予測のつかないものがある。出会いだ。

たまたま座ったベンチ。ボーッとしていると、向かいのベンチにホームレスらしき気配を身に纏った男が座った。ボロボロになったトレンチコートが、男の生きてきた道を想像させる。
男もこちらに気付いた。そして目を丸くしてこちらを睨んでいる。もともと迫力のある形相に加え、ホームレスだという先入観から、多少の不審な挙動は当たり前だと思い。見て見ぬ振りをしていた。すると、男がこちらに近付いてくる。
身の危険とまではいかないが、警戒心で体がこわばる。だが平気な顔は崩さず、僕は先制攻撃を仕掛ける。
「こんにちは。」挨拶をした。反応を見る。
「あ…あ…あ…あんた……。」
「ん?」「どうかしましたか?」
「こ…これを…。」
男は言うに事欠いてお札を出して私に渡そうとしてきた。
「ちょ…困ります…!」拒むと男は強引に私の手のひらにそれを握り込ませ、満面の笑顔でこう言った。
「今日はなんて日だ。こんなとこで初代に会うなんて。ありがたや。ありがたや。」
そう言いながら男は身を翻し去って行こうとする。
「初代?」「いったいなんのことですか?」
返事はない。
「あなたは私のことを知っているんですか?」
男は立ち止まり、こちらを振り向いて言った。
「知っとるも何も、ワシとあなたは同じじゃないですか。」
「同じ?」
「そう。神さま。」
神さま?神さま…。神さま!?神さま!!
男の顔を僕はかつて見たことがあった。

一番最近では、あのアルバムの僕の写真の隣で。
もっと前なら、自己啓発セミナーで。

僕は立ち上がり、去り行く男のあとを追った。
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