年暮るる 12-31-06

年暮るるあれやこれやの沈思かな
明日は明日年あらたまる思いなり

街路樹の根元固むる冬つつじ
庚申の塚に誰がおく冬の菊

大晦日三句
除夜の鐘古へからの音がする
年越しの蕎麦に今年も舌鼓
大晦日どこの家にも懐かしさ

冬の月 12-30-06

冬日落ちともに消えゆく茜かな
群青の空にぽかりと冬の月
寒風に瞬く街灯峠道

富士 12-27-06

富士三句
夕映えの富士に今年も暮れ行きぬ
寒風に気もあらたまる富士の峰
寒晴れに富士を戴く喜びよ

柚子湯 12-23-06

柚子湯香に年の想いの浮き沈み
じんわりと芯まで癒す柚子湯かな
冬至柚子影は見えねど匂いたつ

冬日 12-19-06

冬日差す池に明るき苔の青
葉の残る並木に淡く冬日かな

生ぬるき風はいらぬわ寒鴉
世事多く過ぎて気のつく漱石忌

小春日 12-16-06

小春日の律儀な空の佇まい
寒空に微動だにせぬ蒼き月
土手沿いに緑の続く冬の川

漆黒の大きな体(てい）で山眠る
轍沿い霜に照りこむ朝陽かな
凍てついた空気は朝のしじまかな

リヤカーを押す土手道に冬の祖母
急流に真横に倒る冬の葦
送られしみかんの甘さ母の顔

冬座敷 12-10-06

しとしとと霙か雨か冬座敷
畳には寝てもしばらく冬座敷
山茶花に月の光はなお白く