7月2日2009年
57. 澱
ドアが開いて入ってきた者が、ある男に迫る病を告げる。
様々なことの辻褄が簡単に合うが、それはもう5年も前から聞いている事実。
発病が告げられても、その男に対する同情は深くは起こらない。
世の中の不幸という不幸を背負いながらようやく歩く者達のことを思えば、、、
たった一人住まいの不治の病を承知で、病と共に
ようやく生きている老人を思えば。。。
この者が一体何をしたというのか。
夫に家族にと、献身意外に。何をしたというのか。
その見返りが、孤独と不治の病と死への恐れとは。
話す相手も誰もいない老人の深い孤独を思えば、
病を告げられたその男に対する思いは、
彼の日常の些細な出来事と共に、
沸き起こる優しさが相殺されてしまう。
醜いことをすれば、自分に返り、自己の利のみ考える者には友もなく、
優しい言葉や励ますということを知らない皮肉屋に迫るもの。
湧き上がりつつある同情を
さえぎるものがはっきりとある。
湧き上がりつつある心配の念ともろもろの心を
押さえようとするものがある。
はっきりとある。
それは、溜まりに溜まった心の中の澱。
溜まった澱は長い年月の間に固くなり
優しさや同情の液体を今ほんの少し注いでも
もはや溶かすことがかなわない。
心の中に積もった薄いどす黒い澱は
自分の中のものだけでは
取り除くことができない。
この男に、
たった一度、
たった一つ、
真摯な言葉が出てくれば、
この澱は
嘘のように消えてなくなるものを。
それもかなわないであろう。
この男がそうしてきたように、
同じことが誰かによって自然に返されていく。
自然には見えない掟が確かにある。
57. 澱
ドアが開いて入ってきた者が、ある男に迫る病を告げる。
様々なことの辻褄が簡単に合うが、それはもう5年も前から聞いている事実。
発病が告げられても、その男に対する同情は深くは起こらない。
世の中の不幸という不幸を背負いながらようやく歩く者達のことを思えば、、、
たった一人住まいの不治の病を承知で、病と共に
ようやく生きている老人を思えば。。。
この者が一体何をしたというのか。
夫に家族にと、献身意外に。何をしたというのか。
その見返りが、孤独と不治の病と死への恐れとは。
話す相手も誰もいない老人の深い孤独を思えば、
病を告げられたその男に対する思いは、
彼の日常の些細な出来事と共に、
沸き起こる優しさが相殺されてしまう。
醜いことをすれば、自分に返り、自己の利のみ考える者には友もなく、
優しい言葉や励ますということを知らない皮肉屋に迫るもの。
湧き上がりつつある同情を
さえぎるものがはっきりとある。
湧き上がりつつある心配の念ともろもろの心を
押さえようとするものがある。
はっきりとある。
それは、溜まりに溜まった心の中の澱。
溜まった澱は長い年月の間に固くなり
優しさや同情の液体を今ほんの少し注いでも
もはや溶かすことがかなわない。
心の中に積もった薄いどす黒い澱は
自分の中のものだけでは
取り除くことができない。
この男に、
たった一度、
たった一つ、
真摯な言葉が出てくれば、
この澱は
嘘のように消えてなくなるものを。
それもかなわないであろう。
この男がそうしてきたように、
同じことが誰かによって自然に返されていく。
自然には見えない掟が確かにある。









