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★新元号は動きだしている=『平成紀』を読む(21)

2016年10月01日 | 新聞/小説

(9月30日付の続きです。写真は本文と関係ありません)

青山繁晴さん(1952〜)の『平成紀(へいせいき)』(幻冬舎文庫、税別540円)を読んだ。
青山さんが、あの1987(昭和62)年から共同通信政治部記者として「Xデー」を担当した最前線リアルを活写した情報小説。
わずか195ページ、とても面白かった。
というわけで、Xデーをめぐり、あのとき共同通信社の深奥で、さらに官邸で何があったのか、そして僕たち新聞社サイドでは……の第21回。
*青山繁晴(あおやま・しげはる)さん
1952年、神戸市生まれ。
慶應義塾大学文学部中退、早稲田大学政治経済学部卒。
共同通信記者(1979〜1997年)、三菱総研研究員を経て2002年、日本初の独立系シンクタンク「独立総合研究所」社長兼、首席研究員に就任。
2016年、参議院議員に当選。

*幻冬舎文庫『平成紀』主な登場人物
▽楠陽(くすのき・よう)=通信社の政治部記者。
青山さんの等身大キャラ、35歳
▽常石功(つねいし・いさお)=別の通信社の政治部記者
▽元寇=佐藤元行(さとう・もとゆき)=楠が勤務する通信社の政治部デスク。
元行から元寇(げんこう)と呼ばれている
▽吉野庄一(よしの・しょういち)=通信社の官邸キャップ。岩手県花巻生まれ
▽赤錆(あかさび)さん=崩御に関して政府が動くマニュアルを司る実務責任者と評される高官
▽中曽根康弘(なかそね・やすひろ、1918〜)=第73代総理大臣。この小説では第3次内閣(1986年7月〜87年11月)


【幻冬舎文庫『平成紀』107ページから】
マニュアル作成が進むにつれ、元寇は項目を天皇陛下の崩御後にも❶広げた。
大喪の礼での拝礼は「二礼二拍手一礼」の神道方式で行うか「一礼」だけに略すか、鳥居は立てるか、御陵はどこにするかと、ほとんど無限に元寇は項目をつくった。
楠は項目の紙を黙って受け取るだけで、中身の議論は一切せずに九階の政治部別室を立ち去った。
意見をあくまで自分の頭でつくりたい。赤錆に対して、それがせめてもの良心だ❷と思っている。

(中略)
楠は、元寇の突きつけた四つの難題の残り三つのうち、天皇の容態を正確に摑むこと、天皇崩御の瞬間を発表前に知ることの二つについても赤錆との信頼関係を築いていくことで自然にアプローチできると判断していた。
例外は、元号だ。
元号について赤錆にどんな「意見」を言っても、「元号は私の担当じゃない」という寸分違わない一言が返ってくる。
新元号をどう決めるか、その手続きは、赤錆さんからそれでも次第に分かる❸だろう。
しかし新元号そのものは考案者に直接、当たるしかないと考えるようになった。


❶項目を天皇陛下の崩御後にも
「崩御後にも」にはYデーも含まれるはず。
去る6月25日に亡くなられた藤森昭一・元宮内庁長官(享年89)は、
「私自身は在任中の日記、メモ等は絶対に公表しないつもりだ。天皇、皇后両陛下や皇族方がわれわれ側近を信頼してものが言えなくなる」
と語っていたという(日経新聞9月2日付「追想」から)。
大喪の礼から即位の礼に至る天皇の代替わりを最高責任者として取り仕切った藤森元宮内庁長官。
昭和天皇の死去前に進めていた準備作業など、けっして公にできないことも数多くあったはず。
(なんとなくだけど)小説に出てくる「赤錆さん」は藤森元長官か、前任者の富田朝彦元長官、近しい幹部だったのではないだろうか。

❷意見をあくまで自分の頭で……せめてもの良心だ
小説を読むかぎり、楠記者(=青山さん)は礼儀を慮り、誠意をもって取材対象者と対応しているのが読み取れる。
……これ、大事ですよね。
どっこい、共同通信社内抗争や上司には、あるときは批判的に、あるときはため息をつきながら厳しい視線で見ている。
……人間だもの。

❸新元号をどう決めるか……それでも次第に分かる
新元号選定——小説の後述に、びっくりしたところがあった。
新元号選定者のひとりである、京都のある学者は
「元号を考えてくれと政府から正式に頼まれたのは、4年ぐらい前」
だったと言う。
つまり、政府は1984年ごろには新元号選定に着手していたことになる。
……となると、すでに政府は(「平成」後へ)動きだしていることになる。

というわけで、続く。
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▼1988=昭和63年参考データ
▽2月10日=「ドラゴンクエストⅢ」発売。初日で100万本完売
▽3月17日=東京ドーム落成
▽7月6日=リクルート江副浩正会長、未公開コスモス株譲渡で辞任
▽9月19日=天皇が吐血・下血し容体急変
▽9月24日=ソウル五輪でベン・ジョンソンの金メダル剥奪。
鈴木大地さんが100m背泳ぎで金メダル
▽11月17日=東京外為1㌦121円52銭の戦後最高値更新
▽12月5日=天皇の最大血圧が40台まで落ち「極めて危険なご容体」に

▼1989=昭和64=平成元年参考データ
▽1月2日=天皇は体内出血があり、計1,400ccの輸血を受けた。
前年9月吐血以来の輸血総量は30,865ccに

▽1月4日=大発会で東証平均が 30,243円66銭の最高値更新。
米海軍機が地中海上空でリビア軍機2機撃墜。
▽1月5日=天皇、最大血圧が60に降下。
輸血を受けるも回復遅く、尿毒症の症状
▽1月7日=午前6時33分、十二指腸部の腺がんのため、昭和天皇87歳で崩御。
皇太子明仁親王が即位。
翌8日施行の新元号を「平成」と発表
▽1月8日=竹下首相を委員長に大喪の礼委員会設置
▽2月24日=大喪の礼。
164カ国の代表・使節参列

▽4月1日=消費税3%スタート
▽4月26日=民主化を求めて天安門広場に集結していた学生市民を、中国戒厳部隊が武力制圧
▽6月3日=歌手・美空ひばりさん死去。52歳
▽11月4日=横浜の坂本堤弁護士一家3人が行方不明に
▽11月9日=「ベルリンの壁」崩壊
▽12月29日=東証平均株価 38,915円の史上最高値
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