事務屋のひとり言

東京都の事務員のひとり言です。

大学管理本部の仕事

2005-08-15 | 都立大改革の日々
表に話が出るたびに横槍が入る状況に、各学部長は一層水面下の交渉に望むようになりました。
結果的にこれが、表に出る情報を抑えてしまい、今現在の批判の種となります。
正面切って交渉し、勝ち取るべきだったという方もいらっしゃいますが、それは難しかったと思います。

近代経済学の3名の先生方への対応について、実は事務側は管理本部はなんらかの名目を開発して、3名を認めるのではないかと考えていました。
COEという対外的にわかりやすい部分で人材流失が起きると、当然イメージに傷がつくのは誰でもわかります。
しかしそれすら「認めない」という文書がわざわざ管理本部長名出ました。これは管理本部長と言うより、さらに上の判断と見て間違いありません。
「教員に勝利する」それが一番大事なことであり、大学のイメージや未来について2の次という考えを持つ方が、大学管理本部に影響を与える立場にいるのです。

それでは正面切ってぶつからず、何か得たものはあるのでしょうか?
結構あるのですが、わかりやすいもので、名称問題があります。
新大学の大学院の名称は、人文科学研究科も社会科学研究科も、そのままの名前で行くことが決まっています。
実はこの名前はもともと「社会・人間科学・国際文化研究科」とか「法学・経営学研究科」などといった凄い名前でした。
それを会議に出す資料で、いちいち「人文科学研究科」とか「社会科学研究科」と書いて出し続けたのです。
最初は直されていたのですが、いつの間にか「人文科学研究科」と「社会科学研究科」に決まってしまいました。

大したことないじゃないか、と思う方もいらっしゃるでしょうが、この名称というのは実は研究の世界で結構大事です。
法学部の所属する協議会は、実は「法学部のある大学」しか加盟できません。今まで、「法学部」として独立した学部を持ってない大学の加盟申請を退けてきた過去があります。
しかしご存知のように首都大に、法学部はありません。そのせいで協議会から除名される可能性が高いのです。
このことを知りながら、大きな反対をしなかった前田部長のことを、悪し様に言う法学部の先生は結構いらっしゃいます。

似たような例で、臨床心理学会があります。都立大には第2種の臨床心理士コースが認定されていますが、これも「専攻」として独立していないと認定をもらえないのです。
ところが首都大では、心理学専攻は人間科学専攻の中にまとめられてしまいました。しかたがないので、教室単位で入試をすることにして、「臨床心理教室」として独立していることにしています。臨床心理学会にその点を説明に行った先生は、面と向かって、もの凄い嫌味を言われたそうです。

斬新な組織名称を考えるのは結構なのですが、首都大だけ特殊なことをやっても誰も認めてくれません。
法学部や心理学専攻にとっては、実に迷惑な話です。
こういう問題は、理学部や工学部でも起きているか、潜在的に持っているはずです。特に臨床心理士のように資格に関わってくる問題だと、笑い事ではありません。
組織名称と言うのは、実は非常にデリケートな問題なのです。

就任承諾書の提出をめぐって戦いが起きていた4月から、平行して文科省への認可申請の下準備が始まりました。
ところがこの中で大学管理本部の事務能力が暴露されてしまいます。

既に出すことを決めた先生の就任承諾書を、文科省に持っていったのですが、なんと書式が間違っているとして、突き返されてしまいます。
慌てて先生方に出し直してもらい、文科省へ提出に行きましたが、なぜか間違っていると言われた書式を使ってしまい、また突き返されてしまいます。
さらに慌てて先生方に出し直してもらい、提出したのですが、今度は完全に別様式で集めてしまい、またまた突き返されてしまいます。

ここまで読んだ人は思うことですが、同じことを事務側も思いました。
「大学管理本部って、実はバカなのか?」
自分だけでなんとかなるならともかく、教員に書いてもらわなければならない書類です。それを延々間違い続けるなんて普通じゃありません。

他にも教職免許の再申請が必要だと教育の先生が忠告したのに、「大丈夫、大丈夫」と言い続けて、土壇場で「やっぱり必要だと言われました。書類提出してください」と全学の先生に頼んだり、事務屋とは思えない事態を連発で起こしました。
そもそも忠告しているのは、教育政策などを研究している専門家の先生です。
電話で確認すればすぐわかる程度の問題を、どうして悪化させるのでしょう?

毎年7月に行っている大学説明会でも、打ち合わせの場に担当者が来ません。
広報は全て管理本部で統括するから、勝手に学生に話すなという指示があったのに、当の本人が来ないのです。
「なんであいつら(管理本部)が来ない!?」会議室で庶務係長に入試係長が食って掛かる場面もありました。

その大学管理本部は、「7月認可は絶対だ」「大丈夫だ」と言い続けていました。
事務側は、書類不備や不手際を連発しながらこの自信は、何かそうなる政治的な判断があるのかと噂をしていました。

7月3日の数日前。文科省から管理本部に認可見送りの連絡がありました。
理由は4月の設置申請提出内容と7月とで、25名の非提出者がいたこととされています。
とされているのですが、実は50項目近くの注意が入っていました。
はっきり言うと、「ダメだから出し直し」ということです。

これまでの方法で、管理本部が認可申請を出せるのか、これが無理だと言うのは、誰にでもわかることでした。