天と地と

連載自叙伝『追憶』シリーズ
「ふきのとうノ咲くころ」

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『追 憶』 ⑤ ~ 蕗の薹の咲くころ ~

2016年09月18日 | 自叙伝『追憶』シリーズ
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- 転校届 -

 八王子に来て一週間。春休みもあと残すところ五日位しかなくなった。

 転校届をするため、中野区役所へ叔母について行ってみた。
 区役所に入って行って驚いた。昔風の家の中で、手続きをするのであった。
 故郷では、白く塗った大きな建物が町役場であったため、驚きと共に、何かほっとした気持ちになった。
 そこいらは、付近の景色が故郷によく似ているところがあった。


 春休みも終り、二、三日してから、叔母の手をとって、ぼんやりした春風を感じながら学校の坂道を登って行った。

 校門には、“八王子市立第九小学校”とあった。
 校門からは、広い校庭と大きい校舎がそこにあった。しっかりした古い建物で、郷里の女学校の校舎に似ていると思った。
 玄関の上には、バルコニーがあって、素敵なポーチがついて、両脇には、シュロの木が立ち並び、向かって右側には、二宮金次郎の銅像が建っていた。

 
 
 まっすぐ職員室を伺った。
 職員室からは、私の入る学級が決められるまで待たされた。

 女の先生が近づいて来て、
 「私が担任の吉沢です。よろしく。」

 「この子が中村スヱ子と申します。私はこの子の叔母でございます。大変お世話になります。何分にも宜しくご指導下さいませ。」
 
 「この学年には、男の子だけの級、女の子だけの級、それから男女共学の級がありますが、中村さんは、女子国民学校からお出での様でしたので、
 私が担任する女の子だけの級で、桜組の生徒になることになりました。では、教室にご案内しましょうね。」
 
 私は、男の子の居る学校など考えてもいなかった。男の子と手を繋いで学校へ行くものなら、きかん坊達に冷やかされたり、いじわるされたものであったから、
 もし男の子のいるクラスに編入されてしまったら、きっとおどおどして、悲しくて泣いていたかもしれない。

 吉沢先生は、若くて、綺麗で、その時分流行っていた髪型で、前髪をくるっと二つ位ロールに乗っけて、下げた両側の毛は内巻きにして、耳のところできちんとかき上げ、ピンで押さえて、
 何となく柔らかみを感じたものであった。
 昨年の担任は、吉沢先生と同い年位で、髪を全部束ねてきりっと後ろでまとめていたのと比べて、
 やっぱり都会だからかしら・・・。戦争が終わったからかな・・・。
 でも、そんなことはどっちでも良かった。
 とにかく、先生がやさしい先生で良かったと、ほっとするのであった。




 ~ ⑥につづく




 
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