(前回からの続き)
といった個人的な試算は別にしても、消費税などと比べると、わが国においては相続税の課税余地が非常に大きいことは疑いないところだと思っています。1年間の相続遺産の合計額が少なく見積もって30兆円台、多く見積もった場合は90兆円近くもあるのに、実際の相続税収は1兆円あまりしかないわけですから。
にもかかわらず、そして多くの人々が財政再建の必要性と税収増加を訴えているにもかかわらず、これまた消費税と違って相続税の増税強化を進めようという声はそれほど上がっていない印象があります。どうしてでしょうか・・・。
以前、こちらの記事に次のように書いたことがあります。
<引用はじめ>----------
・・・富裕層にとって消費増税は次の点からメリットとなりえます。逆進性については上述のとおり、消費税負担額が生活保護層などと同じ金額ですむことになります(お金持ちにとっては担税感が軽い)。そして重要なのは、財政再建の手立てとして消費増税が前面に出てくれば、所得税の最高税率や相続税の引き上げがその陰に隠れ、富裕層増税が回避あるいは軽減される可能性が高まること。つまり「消費増税で買い物の際に支払う金額は多少は増えるかもしれないけれど、所得税や相続税の増税でガッポリ国に持っていかれるよりは・・・」ということ・・・
----------<引用終わり>
やはりそういうことなのではないでしょうか。この見方に立って消費増税に積極的な方々―――財界人、学者、評論家、市場関係者・・・を思い浮かべてみると、個人的には何だか「うなずけるな~」といった感じがするのですが・・・(僻みっぽい言い方でスミマセン)。
こうした人々は「有識者」として政府の審議会委員になっていたり各種メディアで自説を述べることも多いため、これまでのところ「財政再建=消費増税」という図式を国民の意識に植え込むことに貢献してきたといえそうです(消費税率がさらに上がる今後はどうなるかわかりませんが)。それとともに(自分たちのような?)富裕層の納税負担が大きい相続税のような資産課税強化に対する関心から市民の目をそらす役割も果たしているのではないかと・・・。
「消費増税を唱えることで相続増税の脅威から身を守りたい!」―――こうしたインセンティヴの強い人たちの代表格は世襲政治家、いわゆる「二世議員」の皆さんなのではないでしょうか(そういえば安倍総理も麻生財務相も二世議員ですね)。与野党の違いにかかわらず、彼ら彼女らにとっては、選挙地盤に加えて、親の財産は1円でも多く自分たちが引き継ぎたいはずです。
「パパやママからもらった遺産に国家に指一本触れさせてなるものか。でも国会議員として財政健全化をないがしろにすることはできないし・・・。ここはやっぱり消費増税だ!」といったわけで、このままでは近い将来、二世議員とか三世議員だらけになった国会が消費税率20%引き上げ法を可決成立させてしまうかもしれません!? 国会における世襲議員のシェアが高まることの最大のリスクはこんなところにあるような気がしています。
もっとも、こちらの記事に記したとおり、この国における真の「lawmaker」(英語で「法律を作る人」つまり「国会議員」の意)は、そんな国会(立法府)のセンセイ方ではなく、政府の役人(つまり「官僚」)であることは周知の事実。で、ここは日本一の頭脳を持つ財務官僚に大いに期待しています。税法を起草できないわが国のlawmaker(とほほ・・・)になりかわり、どうか財務省の皆さんには本稿の趣旨を織り込んだ税制改正を進めてほしい、と願っているのですが・・・。
(続く)
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