(前回からの続き)
アメリカは同じ英語圏の4か国―――イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド―――とともに「Five Eyes」(5つの目)と呼ばれる、機密情報の共有と加盟国間では互いにスパイ行為をしない協定を結んでいます。ドイツは以前からのこの「Five Eyes」への参加をアメリカに求めていますがアメリカは応じようとはしません。さらに昨年以降に明らかになったアメリカによる複数のスパイ行為に関しても、アメリカ(オバマ大統領)はメルケル独首相の携帯電話の盗聴こそ「もうしない」と約束したものの、その他の対独諜報活動についてはけっして「やめる」とは言っていません。
その理由は推測するしかありませんが、個人的には先述のとおり、ドイツがアメリカの同盟国であるにもかかわらず、エネルギー、ロシア、ユーロ、金(ゴールド)、とりわけドルの観点からみて、結果としてアメリカの国益に反するアクションを取ることがあるからだと考えています。
一方、ドイツにとっては、アメリカがしてほしくないこと、つまりロシア産天然ガスのユーロ建て決済とか金準備の自国への移送などは、同国の政治外交面および経済面での安全保障を強化する意味で今後もぜひ進めていきたいこと。したがってこのあたり、どうしてもアメリカとドイツの思いは相反することになってしまう・・・。
かくしてアメリカは今後もドイツを監視し続けるだろう、とみています。もっともこれだけアメリカが執拗にドイツをスパイしていることがバレてしまった以上、アメリカとしてはやりづらくなったことでしょう。メルケル政権ばかりでなくドイツ国民の対米感情も悪化しているわけですし・・・。
アメリカに覗かれる一方だったドイツとしても情報管理をいっそう厳しくするものと予想されます。そのうえで上記の取り組み―――ロシアとのガスやユーロを通じた関係強化など―――を進めるつもりでしょう。場合によってはアメリカの言うことを聞かないで・・・!?
そんなふうに考えると、表面上は落ち着きつつあるようにみえる米独関係ですが、水面下の諜報合戦のほうはこれからが本番だ、なんて気がしてきます。
(「なぜアメリカはドイツをスパイするのか」おわり)
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