(前回からの続き)
おもにアメリカの視点から対北朝鮮戦略として考えられること、およびそれらに付随するリスクについて、これまで書いてきたことをここで整理してみます。
・最強の経済制裁(石油禁輸策):実現薄で、かえって危険な面あり
・米朝会談・北朝鮮の核容認:リスクだらけ・・・
・限定的軍事オプション(クーデター誘発and/or斬首作戦):核の全面除去は困難
といった感じで、どの選択肢でも北朝鮮の「核」という最大の元凶が取り除けない可能性が高いと思われます(もちろん、確率は低そうだが、現行の制裁包囲網のもと、危機感を募らせた同国内の反体制派が現体制を強制排除、臨時暫定政権を樹立し、米韓などと核廃棄を含めた話し合いに応じる、なんてファンタジックな?展開も想定できなくはないが・・・)。となるともはや・・・最後かつ最●の手段「全面的な軍事オプション」も現実味を帯びてきそうです・・・(?)
・・・で、この場合、アメリカ軍(および韓国軍?)はおそらく、現時点で最大限の武力を一挙に投入して北朝鮮の軍事・核関連施設および権力中枢を迅速かつ徹底的に打撃・破壊するという手に出るでしょう。なにせ相手は「核保有国」、そして国境の目と鼻の先に数千万人もの人々が暮らしているわけです。なので1つの「叩き洩らし」も1発の反撃も許してはなりませんから・・・
上記攻撃の手段は空と海からの爆撃やミサイル攻撃そして艦砲射撃のみで、海兵隊を含む地上戦力の投入は・・・おそらくはしない。犠牲が大きくなることに加え・・・北朝鮮領内への進駐によって(朝鮮半島における韓国、つまりアメリカ陣営の版図拡大に猛反発しそうな)中国とロシアをいたずらに刺激したくはないからです。
・・・と、あっさりと書いてみました。他のオプションと違って、これならば北の核の脅威を地上から完全に消し去ることができそうです(?)・・・が、これこそ究極のプレッシャーのかかるリスクMAXの選択であることはいうまでもありません。双方に一般人を含む多数の死傷者や膨大な物的被害が出るのは避け難いうえ、瞬殺に失敗した場合、深い傷を負った独裁者らの死に物狂いの核報復を韓国、そして・・・日本(!)が食らうリスクがゼロとはいえないためです・・・
さらにアメリカにとってとりわけ怖いのが・・・ここでも「ドル暴落」(≒長期金利爆騰)となります。朝鮮半島で有事勃発!→戦費拡大で米財政収支が急速に悪化!→さらに大量の米国債振り出しへ!→金利急騰懸念から米国債そしてドルは暴落へ!というわけです。これに関連して超~懸念されるのは中国の動向。このとき同国は、アメリカを強く牽制するべく、おそらくロシアとともに大規模な軍事介入・・・ではなく市場介入に打って出る、すなわち手持ちドル資産の相当量を投げ売りするしょう。これが決め手となってドルの鍋底は崩落、長期金利が急騰、アメリカは戦費調達に窮し、中露の狙いどおり本作戦の続行が困難に・・・!?
足元では人民元がドルに対して2015年以来の高値に上がってきました。ということは・・・マーケットはすでにそんな戦争の気配を織り込み始めたのか・・・?