欧州ではソブリン危機に対処するための施策が立て続けに打ち出されています。
先月末の欧州連合(EU)首脳会議では、金融システムに関する各種のリスクに対処するための恒久的な枠組みである「欧州版IMF」欧州安定メカニズム(ESM)の資金を政府を通すことなく問題金融機関へ直接注入することが認められました。さらに7月5日には欧州中央銀行(ECB)が政策金利の引き下げ(1.00%→0.75%)に踏み切りました。
もっとも当初は7月上旬には発足するはずだったこのESMですが、なかなかスタートできないようです。ドイツ憲法裁判所のESMと欧州財政協定の合憲性に関する審理が終わっておらず、ドイツ大統領がそれらの署名を留保していることなどによるものです。
ECBの利下げやESM発足のもたつきなどの影響で、ユーロ/円は先月末の1ユーロ約100円から96~97円前後にまで値を下げてきています。どうやらこの先も当面はこうした傾向、つまりPIIGS諸国関連等から何らかの悪材料が出てきてユーロや新興国通貨、株式などのリスク資産が売られ、かわりにドルや円が買われて日米独国債に資金が集まるという、「リスクオフ」モードが続きそうです。
ところでユーロ圏でこうした不安材料が出てきたときのリスクオフは、以前から示しているリスクオフの不等式「金>円>ドル>ユーロ>新興国通貨」のとおりになるわけではありません。この不等式はリスクオフのいわば「最終形」で、これに至るまでにはいくつかの段階があると考えています。
このあたりについて、「リスクオフの第一、二、三段階」として、円・ドル・ユーロなどの各通貨に金(ゴールド)も交え、それぞれの段階ごとにこれらの「強さ」の序列がどのように変化していくのかについて、次回以降、私見を述べていきたいと思います。
(続く)