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【映評】バトル・フロント [監督:ゲイリー・フレダー]

2014-11-21 18:58:50 | 映評 2013~
49点(100点満点)
2014年8月11日、大阪、梅田ブルク9にて鑑賞

俺たちのアクション番長スタローンが自分主演想定で書いた脚本を、かわいくって仕方ない後輩(ただしハゲ)のジェイソン・ステーサムにゆずって作られたアクション映画。エクスペンダブルズ(消耗品)の前の景気付けにと見てみたら、完全に消耗しきったウィノナ・ライダーの姿に愕然とさせられたのだった…
今時珍しい80年代テイストな映画ながら、演出も脚本もダメダメなこれといって魅力のない映画になってしまった。

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いちおハズレ率の低い「潜入捜査官もの」映画である。
冒頭、麻薬密売組織がなんか悪いことしようと集まってくるのだが、さて我らがジェイソン・ステーサムはどんな風に現れるのかと思ったら、なんのケレン味もなく、もったいぶった感もなく、悪党どもが歩くショットのモンタージュの中にシレッと入っている。
普通すぎる登場に、あれ?これはアクションヒーロー映画じゃなくて、もしかして割と真面目な本格サスペンスなのか?と思ったが、主人公の性格もよくわからないうちに銃撃戦となって、ここも壮絶アクションって程でもなく、おきまりのように敵のボスに正体がばれて恨みを買って一味は逮捕。
べつになんでもないオープニングシーン。この後の展開を期待させる要素がなく、序盤からだれてしまった。


その後正体隠して娘とアメリカ南部の田舎町で平和に暮らすジェイソン。
こんな田舎にジェイソンに匹敵する敵などいるはずなかろうと思ったらやっぱり出てくるのは小悪党ばかり。
次々出てきては片っ端からぶっ飛ばされるんなら面白くもなろうが、たまに出てきてはぶっ飛ばされるだけ。スカッとしない映画。

ジェイソンの平和な暮らしを脅かす敵の親玉をジェイムズ・フランコが演じている。彼はなんでこんな映画に出たんだろう?
「127時間」でアカデミー賞候補になり、「猿の惑星」「オズ はじまりの戦い」などまあまあ大作映画の主演が続き順調にスター街道を進んでいる彼にとってこの映画に出ることに何のメリットがあったのか?
彼が演じたのは、普通のアクション映画ならせいぜい中盤で死ぬような品位のない強くも偉くも賢くもない小悪党である。
ジェイソン・ステーサムとの直接対決を避けて主人公の留守に家に忍び込み、娘のぬいぐるみを切り裂く程度のせこい野郎だ。せめて娘のペットの猫の生首を娘のベッドに置くくらいのサイコ野郎にすれば存在感出せたのに、ペットは普通に連れ帰って後に主人公のもとに還ってメデタシメデタシってバカにしてんのか?
そしていざ対決となれば娘を人質にとる小物ぶり。
悪党なりの大きい野望でもあるのかと思えば田舎町で麻薬商売で小さく儲けたいくらい。
演技力など発揮しようもないしょーもない役である。
ってことはあれか?ゆってもジェイソン・ステーサムの敵なわけだし鍛えに鍛えた肉体と格闘スキルでジェイソンとガチバトルすることで存在感を出すつもりか?「エクスペンダブルズ2」のスコット・アドキンズみたいに…と一縷の期待を持ってクライマックスを待ったのだが、少しのカーチェイスと銃撃のあとジェイソンにぶちのめされて対決終了。
何がしたかったんだよジェイムズ・フランコっていうか脚本スタローン


しかしこの映画では彼よりもっと語らねばならない人物がいる。
ウィノナ・ライダーだ!
小悪党の情婦役のウィノナは、アクション的な見せ場もオンナ的な華もない。
「殺し」も「殺され」もないジェイムズ・フランコ以上に品のない馬鹿な女役。
せめて脱ぎくらいすれば元スターの捨て身必死っぷりが失笑を誘って話のネタくらいにはなったろうに、そういう意味でも戦力外であるかのように彼女にはなんら印象深い出番は与えられない。
そのくせ知名度だけはあるから三番目にクレジットされちゃうところもかえって痛々しい。
これがかつて世界中の男子を虜にしていたウィノナちゃんの成れの果てか…
最近ロクな役がなかったとは言え、「ブラック・スワン」では若い娘にスターの座を奪われる元スター役だったり、「スター・トレック」では一瞬で死ぬけどスポックのお母さん役だったりとそれなりにかつてのスターへの配慮を感じる役だったが「バトル・フロント」で突きつけられたウィノナちゃんの現実は過酷だった。
僕は一時期、本気でウィノナに恋していた。ウィノナと付き合おうって決めていた。角を曲がってウィノナとバッタリ出会ったら勇気を出して好きですと言おうと決めていた。
「悲しみよさようなら」「シザーハンズ」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「エイジ・オブ・イノセンス」「愛と精霊の家」「リアリティ・バイツ」…僕の愛したウィノナ。
彼女の痛々しいほどに落ちぶれた今を見て悲しみの沼に沈んだ。
ジェイムズ・フランコならもしかしてスタローンと何かのゲームやって負けた罰ゲームで出演したのかもと思えるのだが、ウィノナの場合ガチでやっとつかんだこの役的な悲壮感が漂ってきて辛い。
仕事で大阪に来ているときに見た映画だった。夜の梅田の繁華街をかつて世界一可愛かったウィノナのことを思い出しながら一人でトボトボと歩いてホテルに帰った

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色々と残念な映画だったけど、ジェイソン・ステーサムのふてぶてしさと優しさの同居した魅力は楽しめるし、ラストの殺したいほどの憎しみを収めさせた少女の眼差しを捉えたショットはとても美しかった…と褒めるところも上げておこう。

『バトル・フロント』
監督:ゲイリー・フレダー
脚本:シルベスター・スタローン
出演:ジェイソン・ステーサム、ジェームズ・フランコ、ウィノナ・ライダー

---以下、鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評---
@shinpen: 「バトルフロント」ウィノナ・ライダーの落ちぶれっぷりに悲しさと切なさがあふれる。
俺、高校くらいのころ本気でウィノナに恋していたのに…
なんか高嶺の花だった学園のアイドルがアラフォーで娼婦やってるのを見てしまったような気分。

@shinpen: 「バトルフロント」
昔ウィノナと共演してたジョニー・デップとかダニエル・デイ・ルイスとかアンジェリーナ・ジョリーとか今やトップ・オブ・ザ・トップなのに、どうしてウィノナはこうもドン底で泥水すすりながら生きているのだろう。

@shinpen: 「バトルフロント」
ウィノナの場合例えば「ブラックスワン」のような使われ方なら納得できるんだよ。完全に消耗品しかも消耗後の使われ方はあまりに哀れ。せめてジェイソンステーサムに捨て台詞の一つも吐かれて撃ち殺されるくらい欲しい。スタさん、こうなったら「エクスペ4」で使ってあげなよ。

@shinpen: 「バトルフロント」
暴力!バイオレンス!制裁!殺し!…な凄惨な映画である一方で、子供も動物も殺さない配慮を見せるスタローン(脚本)の優しさを感じる映画。

@shinpen: 「バトルフロント」
ジェイソン・ステーサムがストレス解消に男どもをぶち殺しまくる映画。しかしラスボスがジェームズ・フランコじゃアクションの盛り上がりに欠ける。
「映画だからジェイソンが勝つにきまってるけど、ガチなら逆なんじゃね?」って思わせる奴との闘いが欲しい。

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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」

 小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
 日本芸術センター映像グランプリ ノミネート

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