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【映評】キックアス・ジャスティス・フォーエバー [監督:ジェフ・ワドロウ]

2014-04-19 09:58:10 | 映評 2013~
65点(100点満点)

ネタバレ注意

もちろん面白かった。またヒットガールに会える。ヒットガールが殺戮する姿を観ればある程度の満足は得られる。
しかし、色々と食いたりなさを感じたのも事実。

食いたりない原因
・根本的にヒットガールの出番が少ない。
キックアス=デイブがヒーローのアイデンティティについて考え悩み成長するのはいいのだけど、正直そんなことよりヒットガールが悪党どもを惨殺するところが観たい。

養父に「ヒットガール」を封印されたミンディが、普通の女の子として学園生活を送り、悪党相手なら無敵な彼女が、学園生活ならではの辛さに涙する姿。
これはこれで興味あるし、観てよかったと思うのだが、やっぱりそこじゃない。そんなのさらっと流してヒットガールの暴れる姿を見せて欲しかった。

だから、物語後半、ついにアクションに参加する素顔のままのミンディ、あの車上アクションは溜飲を下げるスカッとするシーンなのだが、他にはヒットガールが大人どもをぶち殺しまくるシーンが無い、ことも無いが、全体的におとなしい。

11歳の少女が屈強な男どもを情け容赦なくぶち殺すことこそなんだかんだで前作の肝だったのに。

脚本も練り込み不足が否めない。
オープニング、ミンディがデイブを撃つシーンは前作のミンディがパパに撃たれるシーンの反復でしかない。
前作の場合そのシーンが、後半のヒットガールがレッドミストに撃たれるシーンの伏線であり父との別れの会話の伏線にもなっていた。
今作ではどこにも繋がらない。

クライマックス、ヒットガールはマザーロシアと大激闘を繰り広げる。この闘い自体は面白いのだが、ヒットガールとマザーロシアが闘う私的な理由がないため、ただのアクション的見せ場でしかなく、エモーショナルな場面にはなっていない。
思い出してほしい前作のクライマックス、ヒットガールvsマフィアの親玉。2人は私怨に燃えていた。ヒットガールは父を殺された復讐に、親玉は組織を潰された復讐に。
今作ではマザーロシアとヒットガールの間に因縁はない。2人は初対面だし、マザーロシアは傭兵に過ぎずヒットガールに個人的な恨みはないし、ヒットガールにしても劇中でマザーロシアが殺した人たちとのつながりはない。
単に実力的にマザーロシアと対等に戦い得るのがヒットガールだったというだけだ。
ではどうすれば良かったか?
非情で残忍な意見だが、マザーロシアがヒットガールの見ている前で彼女の養父マーカスを殺せば良かったのではないか?
あるいはせめてマザーロシアが殺した大佐とヒットガールの間に何らかの絆があれば良かったのでは。

クライマックスのヒーロー軍団vs悪党軍団バトルは今作のテーマであるのは分かる。
しかし軍団戦への移行が早過ぎやしなかったか?多勢に無勢な戦いで徐々に追い詰められてついに絶対絶命のピンチとなった時に、一度は離れていった仲間たちが戻って来て助けるのがベタベタクソ王道ではあるが、やるべきことではなかったか。
最初から仲間引き連れて敵の本部に乗り込んじゃ感動ポイントがないし、一度離れた仲間が戻る過程も描かれない。

こうして考えると本作で語られた様々なエピソードはすべてお互いに遊離した状態にあって一本の長編映画の脚本としては全くまとまりに欠けていると言わざるを得ない。

ただし断片的に語られる個々のエピソード自体は、素晴らしいやり過ぎ感に満ち溢れ楽しい。
マザーロシアの警官隊惨殺シーンなど、悪党の残虐さの恐怖を吹き飛ばすほどの「アクションの快楽と愉悦」に身震いする。
「なんで芝刈り機を?何でバックしてくる?…ぎゃあああッッッ!」みたいな警官の台詞は正しい説明台詞の使い方の好例である。

レッドミスト改めマザーファッカーの悪党集めエピソードもたまらなく面白い。
そうなのである。「七人の侍」とか「フルモンティ」とか、いいのが思いつかんけど「アルゴ」もかな、仲間集めのくだりは、集まった後のシーンより面白くなるものだ。
「お前をブラック・デスと名付けよう」というマザーファッカーに「人種差別的なネーミングはやめろ」とツッコミ兼諭し担当の腹心が非常にいい。笑えるだけじゃなく、ある意味この映画は差別や偏見と真っ向から向き合っている。
悪党軍団の中の唯一の良心?
そんな腹心が叔父(マフィア)によって殺された時にマザーファッカーが悪として吹っ切れた瞬間。あの瞬間がこの映画で一番エモーショナルな一瞬だった。

マザーファッカーのくたばり方もくたばりきれないところも、悪役の魅力全開。こうして悪の心が育まれていくのか…と、ちょい心にささる。

あれこれ、不満と楽しさがゴッチャになったこの作品。
でもまあ、ヒットガールにまた会えただけ良かったとしたい。
クロエ・グレース・モレッツはやはり素晴らしい。萌え萌え最強女優。
とはいえ、ヒットガールというステージはこれで卒業でよいだろう。
彼女の新たな伝説を見守りたい。


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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」

 小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
 日本芸術センター映像グランプリ ノミネート

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