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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

アバター [監督:ジェームズ・キャメロン]

2010-01-18 23:21:18 | 映評 2009 外国映画
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

[映評概要]
自身の「エイリアン2」のリメイクのような出だしから、「ナウシカ」「ラビュタ」「もののけ姫」を想起させる舞台設定に、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」や「ラスト・サムライ」のような異民族交流の鉄板物語。
ありふれた題材を寄せ集めてシンプルな物語に再構成し最新技術でラッピングした映画。そこを批判する気は毛頭なく、[シンプルストーリー×最新技術のすごい映像=記憶に残る娯楽大作]のキャメロン方程式の正しさをまたも実証してしまった本作に、この監督の強い作家性を感じ感服するのだった。
ただ「あっさり伝説達成」のとこは笑ったが・・・

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【映評詳細・・・ネタバレ】
宇宙海兵隊がある星に行ってそこで宇宙人と戦う。星まではコールドスリープで運ばれる。海兵隊は高さ3~4mの二足歩行メカを持っている。海兵隊に混じって民間人のシガーニー・ウィーバーがいる。
という「エイリアン2」のリメイクのような序盤に始まり、いつかどこかで観たような既視感のあるストーリー。過去のいい映画のいい要素をいい感じでまとめて最新技術で作り直したような映画。
異民族の中に入り込んだ男が次第に彼らに受け入れられ、仲間と認められる基本ストーリーに私は「ダンス・ウィズ・ウルブズ」を見たし、妻は「ラスト・サムライ」を見たという。
銃で襲う人間たちに、森の動物と弓矢・槍・ナイフで戦う原住民の姿や、森の神が生き死にを決めるというところに「もののけ姫」の面影を見るし、呼吸のできない大気に覆われ、森を焼き払おうとすれば森の怒りに触れるところは「ナウシカ」を想起させる。(もともと「もののけ姫」と「ナウシカ」は似た話なんだけど)
小さなカプセルに入ってシンクロしてアバターを動かす設定にエヴァンゲリオンを感じ、物語でマクガフィンとして機能する「Kgあたりうん千万ドルの価値がある」(と、とってつけた説明のためだけの台詞が面白かった)ふわふわ浮いている鉱石に「ラピュタ」の飛行石を思い出すばかりか、木の根をたれ下げつつ空に浮かぶ巨大な岩場はそのまま「ラピュタ」のイメージだ。
ついでに巨大ツリーの倒壊シーンに、9.11のツインタワー崩落を重ね合わせてしまう。

そんな既製品の寄せ集め感のあるストーリーだが、だからつまらない、などという気は毛頭ない。
前述で例とした映画だってその元ネタはいくらでもたどることはできるからここでキャメロンだけを否定するのはおかしい。
キャメロンという監督はもともと「シンプルな物語×すごい映像」で娯楽イベントを我々に提供し続けてきてくれた人だ。パンフレットにも「見慣れない世界で繰り広げられる見慣れた物語」を目指していた旨の説明があった。
技術さえ新しくしていけば物語の創作能力などさほど重要ではない、という割り切ったエンターテインメント職人ぶりを堪能できるのであった。
物語のテンポは極めて良く、苦悩も反目も落胆も恋愛も勇気もすべて単純で、何一つ悩むことなくキャラクターに感情移入できる。経済のため古来からの文化を破壊する人間が歴史の中で繰り返してきた愚行にたいする批判も、自然と共存することの素晴らしさも、誰も反対しないようなわかりやすいメッセージも、すべて10年に一度の大娯楽イベントを盛り上げてくれる。
すごい映像だったという事以外に何も残らない空っぽさは例のごとくだが、それはそれで、ただひたすらすごい映像を追求することだけにかけてきた監督らしい強烈な個性として印象に残る。
技術は進歩するが映画自体は何も進歩しない。それでも構わない。
陳腐な題材だって、構成し直して金かけて最新技術でくるんじゃえば、すごく面白くなって世界中みんなの記憶に残る娯楽イベントになっちゃうんだ・・・そんなことをまたしても証明してしまったキャメロン。もしかして100年の歴史の末にアイデアなどほぼ出尽くした「映画」というメディアを、再構成によって復活させる救世主なのかもしれない。

また最新技術への傾倒あるいは依存ともとれるスタイルだって、「テクノロジーと自然讃歌は共存できる」という本作のテーマにもつながっている。最新技術の多用はもはやキャメロンにとって表現方法を超えて、映画の思想にまで昇華したとも言えよう。

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【映画の2つの笑いポイント】
物語上の笑いポイントはふたつ、「軍人の迷わない生き様」と「簡単に伝説達成」だ。
「パンズ・ラビリンス」のビダル大尉も記憶に新しいが、ゴリゴリの軍人という役は印象に残りやすいのである。
本作の大佐は、軍人としてブレがなく悪役として頼もしい限りである。「トータル・リコール」の殺し屋などともキャラの被るハリウッド定番悪役であるが、自分や味方の命の危険などお構いなしに有毒大気に着の身着のままで飛び出し、脱走者を撃ち殺すべく持ってる銃の弾が尽きるまで撃ちまくる姿はとても熱い。
大樹とその周辺の原住民をコーヒーのマグ片手に殲滅する場面も、ヒーローとの最終対決でも有毒大気など知ったことかと自分の命より、敵を倒すことを最優先とする姿勢が笑っちゃうほどかっこいい。

そして一番のずっこけポイントは、瞬間伝説達成の場面だ。最強の空の支配者。上からの攻撃が死角という策はあったにせよ、あの星の長い歴史で過去に数人しか達成していない伝説を、軽く達成。
「ドラえもん」なら「桃太郎印のきびだんご」の一言で抜群の説得力を持たすことができるのだが本作ではそうはいかない。だからといってフェードアウトして次の場面では悠々とあの赤い翼竜を乗りこなしている姿を見た時、そのめんどくせーから端折りました的潔さを目の当たりにして椅子からずり落ちそうになった。
ここは上映時間10分伸ばしてでも、壮絶な死闘の末に赤い翼竜とヒーローが戦士の絆を固める様を見せてほしかった。
その前に「絆」を結んだ緑の小さい翼竜の立場がない。瀕死のヒーローの下に駆けつけるくらいの信頼関係があったのに「僕もう用なしですか。ちょっと寂しいです」とか言ってそう。
壮絶な死闘、チビ翼竜は戦いのさなかヒーローを守って命を落とすが彼の意思は赤い翼竜に受け継がれ、そしてお互いに大技を繰り出した後ついにヒーローと赤い翼竜は友情の絆で結ばれる・・・というジャンプ漫画あたりにありがちな定番盛り上がり場面が見たかった。
キャメロンはジブリアニメばかり見てないで少年ジャンプ漫画も研究対象にすべきだ。

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【音楽:ジェームズ・ホーナーについて・・・久々に景気のいいホーナーサウンド炸裂】

恥ずかしいがキャメロンの新作に結構期待していたので、できるだけ前情報を持たずに観に行った。スタッフが誰かなど調べもしなかったが、映画が始まって5秒後には音楽担当がホーナーだと判った。

ホーナー音楽を聞き分けるポイント
尺八でリズムを刻みだしたらそれは8割方ホーナーです。
加えてスペクタクル系の映画で不穏げな時にトランペットが「パラララー」(音感がないので音符で表現できないのが心苦しいですが)と鳴れば99%ホーナーです。
あと自作曲の使い回しが多いです。タイタニックが氷山にぶつかった時の曲は、「戦火の勇気」でデンゼル・ワシントン指揮の戦車隊がイラク軍と交戦する時の曲そのまんまです。大気圏突入したアポロ13と交信ができなくなり、NASAの面々が固唾をのんで見守る時にかかる短いテーマは、そのまま「スターリングラード」のメインテーマ曲になります。「ゴーリキー・パーク」の曲をスチールドラムで鳴らせば「コマンドー」のテーマ曲で、それをトランペットで鳴らせば「今そこにある危機」のアクションシーンの曲です。
でもボクは、そんなホーナーサウンドを楽しみに80年代、90年代を生きた男でした。彼が「タイタニック」で念願のオスカーを手にした時、ホーナーファンを続けていたボクは少なからず感動したものでした。

しかし「タイタニック」以降のホーナーはどうもさえません。いい関係を続けてきたエドワード・ズウィックやジョー・ジョンストンとのコラボはタイタニック後はなくなり、見かけ上は大作然としたさして面白くもない映画でぬるい仕事ばかりしていました。それでも「トロイ」はいい仕事だったし、盟友メルギブとの「アポカリプト」も地味ながらいい仕事でした。得意の尺八をはじめとする木管系の楽器とコーラスで未開の部族たちの世界を表現しました。野生児や未開の異民族や古代文明の音楽表現が得意なホーナーはこの「アバター」のパンドラ星の人々が呪い師の前で踊る場面を観て血が騒いだに違いありません。
主人公が初めてアバターとシンクロした時、自由に走り回る足の感触を楽しむ場面の曲は「ボビー・フィッシャーを探して」や「ビューティフル・マインド」における才能の目覚めや発見の喜びを伝える音楽に似て、森の神の叫びに呼応して猛獣たちがロボに突進する場面の軽快なファンファーレは「ウィロー」の調べを思い出させ、戦闘シーンは「ブレイブハート」や「レジェンド・オブ・フォール」で培った表現力を注ぎ込み、愛のテーマの切なさとやるせなさは言わずもがな。ついでに、テーマ曲をエンドクレジットで主題歌に引き継ぐ「タイタニック」で確立したホーナー必勝パターンも嫌らしいくらいに決まっている。
ホーナー音楽の集大成であり、ホーナーサウンドの大バーゲンセールのような音楽の洪水。久しぶりにホーナー大ファンのボクの心にガツンと響く素晴らしい仕事であった。ひょっとすると2度目のオスカーいけるかもしれない。それほどのホーナー快心の一撃でした。

[追記]
「アバター・ライド」とか絶対、テーマパークのアトラクションで登場しそうだが、地球人側になってロボにのって惑星の猛獣とか殺しまくるゲームにした方が絶対面白いだろうなあ・・・

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