解雇・退職110番

解雇・退職トラブルの知識!知っていて良かった~!
by 竹林社会保険労務士事務所

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退職勧奨

2005-07-25 00:09:45 | ケーススタディ

 しばらくブログから遠ざかっていたのですが、せっかくご質問を受けたのにそれに気づかず、大変な失礼をしてしまいました。お知らせに質問もお受けできない旨を記載していましたが、ブログの場合、直接記事に来られる方もいらっしゃるわけで、かか様にはご迷惑をおかけし、誠に申し訳なく思います。

 ところで退職勧奨と解雇の関係ですが、これはまったく別物です。退職勧奨は会社から雇用契約の解除を労働者に申し出る行為であり、すでに契約が成立している以上、会社側が一方的にそれを解除することはできません。平たく言うと、会社はお願いするしかないわけです。
それに労働者が同意すれば退職勧奨が成立し、同意しなければ契約期間満了まで雇用契約を存続させるか、一方的な解除=解雇をするしかないわけです。
そして解雇には制限があるということはすでにこのブログでも別記事に書いているところです。

 かか様のように「退職勧奨に応じなければ解雇」といった脅しを伴う勧奨行為は、退職強要として不法行為と判断される可能性が非常に高いと思われます。
詳しくはこちらをご覧ください。
リンク先のページに書いていますが、かか様のケースでは「被勧奨者の自由な意思決定を妨げるような言動を与えたり、監禁など」に該当する可能性が非常に高いと思われるためです。

 退職勧奨については「下関商業高校事件」という判例が参考になりますので、一度ご参照ください。

 ところで退職勧奨に応じたとき、それは自己都合なのか会社都合なのかということですが、あくまでも合意解約なので、自己都合ということになります。しかし、解雇に準ずるものとして雇用保険(失業手当)の手続上は会社都合扱いとされ、3ヶ月の給付制限は行われません。
ハローワークに手続に行くとき離職票を提出しますが、そこに退職理由を記載する欄がありますので、退職勧奨欄にチェックがされているか確認してください。仮に会社が勝手に自己都合にチェックをしていても、ハローワークで状況を説明すれば救済されますので、予めいつ退職勧奨を受け、どのようなことを言われたか、メモを残しておいてください。

 もっとも退職勧奨には応じる義務はないため、必ずしも会社を辞める必要はありません。正直なところ、そんな酷い会社にしがみつく必要はないと考えますが、再就職が簡単にできる時代でもなく、やむにやまれず会社に残らざるを得ない方もいらっしゃるでしょう。しかし、退職勧奨に応じなければ不当な配転やいじめなどが生じる可能性もあります。ましてや労基法があるとはいえ、1対1では圧倒的に労働者の方が不利です。
もしそういった不安があるときは個人加盟ができる労働組合に相談してください。私のように会社の利益を守る立場で仕事をしている社労士が、労働者の方に労働組合に相談することを勧めるのは少々気が引けるのですが(少なくとも私が関与させていただいている会社ではこういったトラブルが起きないように仕事をしているつもりです)、会社に残ることを前提として労働者の方の身を守るにはそれ以外に方法はないと考えます。

 最後に、経営者の方にも労働者の方にも知っておいていただきたいのですが、労働契約や雇用契約といわれるものも契約の一種です。そして契約は双方が合意して初めて成り立つものであり、解約もしかりです。会社の上下関係はあっても契約上は対等であり、経営者だからといって強権発動することを法律は認めてくれません。
逆に労働者の方も、労働者保護の労働基準法があるからといって、すべきことをせずに(職務専念義務といいます)、また就業規則で定められている、してはいけないこと(懲戒規定)をして、それで法律が守ってくれるといった甘い考えは持たないでください。
双方が相手の立場を理解・尊重し、労働者は誠実に労働力を提供し、経営者は決められた労働条件を守るといった当たり前のことを履行することが無用なトラブルを避ける最良の方法だということを認識していただければと思います。


【参考判例】
ID=03539(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ下関商教諭退職勧奨損害賠償請求事件(山口地裁下関支部・昭和49年年09月28日・判決)

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お知らせ

2005-03-28 17:21:11 | お読みください
 誠に申し訳ございませんが、このブログは当面休止とさせていただいております。
また、お問い合わせについても同様にお受けすることができませんので、ご了承ください。
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解雇の類型-整理解雇-

2004-12-02 18:00:18 | 解雇の知識

 解雇は大きく分けて①整理解雇②普通解雇③懲戒解雇(諭旨解雇)に類型化されます。

【整理解雇】
 不況等によって余剰人員が生じ、工場や部門の閉鎖、経営の縮小などを行うために人員整理をしなくてはならないことがあります。この余剰人員を解雇することを整理解雇と呼びます。
整理解雇は他の解雇と違い労働者の責に帰す理由での解雇ではないため、その要件は厳格です。この整理解雇が正当性を得るためには、過去の判例で積み上げられてきた「整理解雇の四要件」を満たす必要があります。

1.人員整理の必要性
どのくらいの経営危機にあれば人員整理の必要性が認められるかという点がポイントですが「企業の存続が不可能になることが明らかな場合でなければ従業員を解雇し得ないという考え方は、資本主義経済社会における現行法制の下では採用できない」東洋酸素事件と企業の合理的経営をしていく上、でやむを得ないとみとめられる程度の要件があればよいとされています。
2.解雇回避努力
「人員整理はこれ以外の措置を講じてどうしても企業を維持できない場合の最終的措置とされるべきで、できるだけ人員整理を避けるべく何らの努力もなされないまま、安易に実施された人員整理は濫用に亘るものと解される」あさひ保育園事件。時間外労働短縮や出向、希望退職の募集、新規採用中止などの措置を取り、できるだけ解雇を回避する努力が必要です。但し、先述東洋酸素事件では、状況によっては必ずしも希望退職の募集がなくてもやむを得ないとしています。
3.対象者選定の合理性
対象者選定の基準は構成におこなわなければなりません。「経済的打撃の低い者」「勤務態度の悪い者」など客観的で合理的な基準を設けることが必要です。「適格性の有無」という人選基準が抽象的で無効とした労働大学事件があります。
また、日立メディコ事件では「臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、それをもって不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。」と企業への帰属性の薄い者を優先的に解雇することは妥当という判断をしています。
4.手続の妥当性
使用者は労働者や労働組合に対して、整理解雇に至った経緯や時期・規模・方法について説明すべき信義則上の義務があるとされています。「債務者は、解雇の遅れによる人件費の増大を危惧するが、それ故に全く抜き打ち的な解雇が是認されるわけではない。」とした日証事件が参考になります。

【最近の動向】
長期雇用を前提とした日本的雇用慣行が崩れ、雇用の流動化、非正規社員の増大などの社会的変化に応じて、整理解雇の四要件も徐々に緩和されつつあります。しかし、それらの考え方はまだ定着していませんし、十分な注意と配慮が必要なことに変わりはありません。
なお、整理解雇にはいろんな判例がありますから、調べてみてください。


【まとめ】
(1)整理解雇をするためには四つの要件が必要です。

【参考判例】
ID=00630(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ東洋酸素事件(東京高裁・昭和54年10月029・判決)
ID=03801(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日立メディコ事件(最高裁第一小法廷・昭和61年12月04日・判決)
ID=00623(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へあさひ保育園事件(福岡地裁小倉支部・昭和53年07月20日・判決)
ID=06546(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日証事件(大阪地裁・平成07年07月27日・判決)

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辞職-労働条件の明示(労基法15条)-

2004-12-01 18:51:45 | 辞職の知識

【労働条件の明示】

(労働条件の明示)
第15条使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働奨励で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

 労働条件の明示は他にも契約期間、就業の場所、始業終業時刻、退職・解雇に関する事項なども記載しなくてはなりませんが、ここでは省略します。
民法のところでも触れましたが、民法と労基法が違うことを言っているときは労基法が優先します。そして、辞職に関しては労基法は明示された労働条件と実際の労働条件が違ったときのことしか定められていません。

 ここで言う労働条件はあくまでも自分自身の労働条件ですし、社宅の供与など福利厚生とみられるときは労働条件にはなりません。もっとも社宅の供与であっても賃金と見られるとき(均衡手当を払っているようなとき)は、即時解除の要件を満たしますし、仮に労基法第15条が適用されなくても民法第541条の規定によって労働者が催促をしても社宅に入れないようなときは契約を解除することができます。(本当に民法と労基法の関係やややこしいですね。)

 ところで、求人広告と実際の労働条件が違ったときはどうでしょうか?日通信販事件では「右は募集広告であって、いわゆる申込の誘引に過ぎないものであるから、これをもって直ちに控訴人と被控訴人との間で請求の原因3(一)の如き約定が成立したものと推認することはできない。」としていますので、労基法第15条は適用されません。
但し、これも悪用すると職業安定法の明示義務の規定に反しますし、モラル的にもトラブルに繋がりかねませんのでご注意ください。

 なお、第3項の帰郷旅費は当該労働者だけでなく、労働者と一緒に引越ししてきた家族の旅費も含まれます。

 解雇・辞職と労基法との関係は今回で終了です。
できるだけわかりやすくと思いましたが、振り返ってみるとかえって難しくしているかもしれません。今後、すこしずつわかりやすく変えていきますので、時々見てやってください。


【まとめ】
(1)明示された労働条件と実際の労働条件が違うときは、労働者は契約を即時解除できます。
(2)ここでいう労働条件は自分自身の労働条件に限ります。また福利厚生や求人広告に記載された条件はここでいう労働条件に該当しません。
(3)労基法第15条に該当しなくても民法第514条に基づき解除できることがあります。。
(4)帰郷旅費は同居の家族の旅費も含みます。

【参考判例】
ID=00153(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日通信販事件(東京地裁・昭和58年12月14日・判決)

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解雇-適用除外・退職証明(労基法21条・第22条)-

2004-12-01 18:03:08 | 解雇の知識

【解雇予告適用除外】

(解雇予告適用除外)
第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
1.日日雇い入れられる者
2.2箇月以内の期間を定めて使用される者
3.季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
4.試の使用期間中の者

 ここに記載のある者については解雇予告をすることなく(労働基準監督署長の認定もいりません)解雇できます。但し、これらの者であってもいつでも解雇できるというのではなく、解雇するには相応の理由が必要なことは今まで見てきたとおりです。
また、日日雇い入れられる者であっても、1ヶ月を超えて雇用されていたり2ヶ月以内の有期雇用契約者や季節的業務に従事されるものであっても、定めた期間を越えて雇用されているとき、試用期間中であっても14日を越えて雇用されているときは、解雇予告が必要です。
なお、これらは実態で判断されますので、判断が難しいときは労働基準監督署に相談してください。いくつか解釈がありますが、長くなりますのでここでは省略します。

【退職時の証明】

(退職時等の証明)
第22条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
 前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

 ここで注意すべきは、退職証明などの交付を求められたときはなるべく早めに「請求があった事項のみ記載して交付」する義務があるということです。もし労働者が解雇された事実のみを請求したときは、解雇理由は記載してはいけません。また、退職の事由について労働者との見解に相違があったときは使用者の見解を証明書に記載すればよいのですが、虚偽であったときは証明義務を果たしたことになりません。
また、予め図って労働者の就業を妨害してはいけませんが、労働者の再就職先から問い合わせがあったときに事実を述べることは終業妨害にはなりません。

 労基法上の解雇は今回で終わりです。本当はもっと解釈や判例をいれたかったのですが、長くなりますので、今後のケーススタディの中で触れてゆきます。


【まとめ】
(1)解雇予告が適用除外される者であっても正当な解雇理由がなければ解雇できません。
(2)契約内容については実態に即して判断されますので、判断に悩むときは労働基準監督署に相談してください。
(3)退職証明には労働者が請求しないことを書いてはいけません。
(4)退職証明の内容に見解の相違があるときは使用者の見解を記載すれば足りますが、虚偽の記載は法違反になります。
(5)再就職先などからの問い合わせに応じることは就業妨害にはなりません。

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解雇-解雇予告(労基法20条)-

2004-11-25 22:15:53 | 解雇の知識

【解雇予告】
 いよいよ解雇予告、労基法第20条です。労基法の中で一番有名な条文ではないかと思いますが、書いているのは簡単なことです。

(解雇の予告)
第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

①解雇が有効であるとした前提の上で、解雇をするときは少なくとも30日以上前に予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければならない。
②天災などやむを得ないときや懲戒解雇に該当するようなときは即時解雇ができるが、このときは労働基準監督署長の認定が必要。
③なお、解雇予告手当を払ったときは払った日数分予告期間を短縮することができる。
ということです。

 ここで重要なのは、②のときです。法律には労働者の責に帰すべき事由とありますが、私は②に懲戒解雇と書きました。しかしこれはわかりやすくと思ってそう表わしただけで、懲戒解雇だから即時解雇ができるというものではありません。あくまでも労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けてはじめて即時解雇が可能になるのです。
なお、解雇予告除外認定は「労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況などを考慮の上、総合的に判断すべきであり・・・(後略)」(昭和23年2月2日・基発1637号、昭和31年3月1日・基発111号)とされていて、懲戒解雇し、監督署に届けたら認定されるというものではありません。
この認定を受けるためには「解雇予告をすることと解雇事由とを比較したとき、予告期間を設けることが軽すぎる」ということを証明しなければなりません(これが大変な作業です)。

 ですから就業規則に懲戒事由があって、それに該当しても認定が受けられないときは即時解雇できないのです。
例えば、懲戒事由に「14日以上引き続き無断欠勤をしたとき」との規定があったとします。しかし、解雇予告除外認定を受けるためにはこれに「出勤の督促に応じず」というものが必要になります。ですから、出勤するよう督促していなければ解雇予告除外認定は受けられません。

 なお即時解雇をして、後になって解雇予告除外認定の確認をしたときは「解雇の効力は使用者が即時解雇の意思を表示した日に発生する。」(昭和63年3月14日・基発150号)のですが、認定が受けられないときは30日分の平均賃金について休業手当を支払うことになります。


【まとめ】
(1)解雇をするときは少なくとも30日以上前に予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければなりません。
(2)解雇予告手当を払ったときは払った日数分予告期間を短縮することができます。
(3)天災などやむを得ないときや懲戒解雇に該当するようなときであって労働基準監督署長の認定を受けたときは即時解雇ができます。
(4)懲戒解雇だから即時解雇できるというわけではありません。会社の懲戒事由に該当していても認定を受けなければ(得られなければ)解雇予告手当の支払いが必要になります。


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解雇-解雇制限(労基法19条)-

2004-11-23 18:30:37 | 解雇の知識

【解雇制限】
 今回は解雇制限について進めます。文中に「解雇できる」といった表現が出てきますが、第18条の2の解雇要件をクリアしていることを前提として話を進めます。

(解雇制限)
第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

労基法第19条1項では、以下に該当するときは解雇してはいけないと、一定の制限をかけています。
①労災事故によって負傷したり疾病にかかったため休業する間と、復職して30日未満の者
②産前産後休暇中および復職して30日未満の者
また同条2項では
③療養開始から3年後に打切補償(労災法の規定により療養開始から3年後に傷病補償年金を受けているか3年経過以後に傷病補償年金を受けることになったときを含む)をしたとき
④火災、震災など天災に準ずる程度の不可抗力に基づき事業の継続が不可能になったとき(労働基準監督署長の認定が必要)は、同条1項の規定に関わらず、解雇してもよいとしているのです。

 第19条1項と2項は原則と例外の関係ですが、判断には原則と例外が多くて非常にわかりにくくなっています。
例えば一定の期間または一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を結んでいる人が、労災事故に遭って療養休職したとします。その休職期間中に契約期限が到来したときは、期間満了による契約解除ですから解雇ではなく、そのため第19条の規定に関係なく雇用関係を終了させることができます。
しかしまた例外があって、この人との労働契約が何度か反復更新されてきたようなときは、労働者が継続雇用を期待するため解雇として扱われることになり、第19条の規定によって制限期間中は解雇することができなくなるのです。

 また、同条2項では天災事変により事業継続が不可能になったときと言っていますが、経営難による事業廃止のときも実務上は認定され、解雇できることになります。そしてまた例外ですが、事業の経営主体が変わっても事業が包括的に承継されるときは労働関係が継続しているとみなされ、解雇制限を受けることになります。

 ・・・難しいでしょう?解雇制限を受けるかどうか判断に悩むときは、監督署に相談してからにしてください。なお、労基法上の解雇制限以外にも男女雇用機会均等法や労働組合法等でも解雇できないときが定められていますので、ご注意ください。


【まとめ】
(1)労災により休職中の者や産前産後休暇中の者、及び復職して30日以内の者は解雇できません。
(2)上記であっても、打切補償をしたときや天災などによって事業の継続が不可能になったときは解雇することができます。
(3)例外が多数存在するので、判断に悩むときは労働基準監督署に相談してください。
(4)解雇制限は労基法以外の労働法にも定めがあります。


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解雇-解雇(労基法18条の2)-

2004-11-23 11:44:27 | 解雇の知識

【解雇】
 いよいよ労働基準法の条文に入ります。労基法には第18条の2「解雇」、第19条「解雇制限」、第20条「解雇予告」、第21条「解雇予告の適用除外」、第22条2項「解雇理由証明書」が定められています。今回から一つづつ各条文をみてゆきたいと思います。

(解雇)
第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 2004年1月から労基法に加わった条文です。立法の趣旨について通達では以下のように述べています。
「解雇が労働者に与える影響の重大性や、解雇に関する紛争が増大している現状にかんがみ、解雇に関するルールをあらかじめ明確にすることにより、解雇に際して発生するトラブルを防止し、その解決を図ることを目的として、最高裁判所判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を法律に明記することとした。」(平成15年10月22日 基発1022001号)

 難しい言葉が並びますが、結局、今までは解雇に関するルールが労基法上になく、30日前までに予告すればいつでも解雇できるといった間違った解釈を与え、そのためにトラブルが増えてきたので裁判所の解雇に関する考え方を法律に加えたということでしょう。
この条文ができたことによって解雇しづらくなったと言われる方がおられますが、実務上は何ら変わりありませんし罰則も定められてはいません(解雇しづらいのは元々です)。この条文は注意信号くらいに考えておけば良いと思います。
※解雇権濫用法理についてはこちらをご参照ください。

 なお、先の通達では「本法における解雇ルールの策定については(中略)使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではない。」としていますし、「同条の規定に基づき解雇の効力を争う事案については、法104条第1項に定める申告の対象とはならない。」と、労基法違反としての申告対象にはならないと明確に述べています。
労働問題=労働基準監督署と考えてしまいがちですが、解雇の効力を争う事案は監督署では取り締まれませんのでご注意ください。


【まとめ】
(1)労基法に第18条の2が追加されましたが、実務上は従来と変化はありません。
(2)解雇の効力を争うときは使用者側に不当解雇でないことを立証する義務があります。
(3)解雇の効力を争う事案は労基法違反の申告対象外であり民事上の争いとなります。解決は、裁判や裁判外紛争処理機関で図ることになります。


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辞職-就業規則と民法の関係-

2004-11-23 01:21:08 | 辞職の知識

【就業規則と民法はどちらが優先する?】
 就業規則に「自己都合退職のときは退職予定日の1ヶ月以上前に退職願を提出すること」といった定めをしているケースは多いと思いますが、これは有効なのでしょうか?

 「民法の規定は任意法規と解されているため、労働契約や就業規則で民法と異なる定めをした場合にはその定めが優先するが、それが極端に長いときは退職の自由を制限するため、民法90条違反(公序良俗違反)として無効となる」という説がありますが、高野メリヤス事件では「就業規則の規定は、予告期間の点につき、民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効だと解すべく、その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。」と、民法627条は強行法規だと解釈しています。
ここでは後者の強行法規ということを前提に考えてゆきたいと思います。

 前回に見たとおり、時間給制社員や日給制社員の場合は、民法第627条1項により申し入れから2週間後に自動的に雇用契約を終了させることができますし、退職願も不要です。(但し、後々言った言わないのトラブルを避けるためにも退職願は提出するべきでしょう。)

 それでは月給制社員の場合はどうなるのでしょうか?
賃金計算期間の前半に申し入れたときはその期の末日、後半に申し入れたときは翌期の末日というのは今まで見たとおりです。しかし、前半のときは申し入れから最短15日程度で退職することになりますし、後半のときは最長45日程度になります。
このようなときは先の判例にあるように「民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効」なのですから、前半に申し入れたときは民法が優先し、後半に申し入れたときは就業規則が優先することになります。

 もっともこれらは辞職、つまり労働者が一方的に契約を解除するときのことであって、合意退職(合意解約)の場合は「1ヶ月前に退職願を提出すること」と定めることに特に問題はないと思われます。
但しその期間が世間一般常識から言って長すぎるときは「退職3ヶ月前までに退職届の提出を義務づける規定は、退職の自由に反し無効」としたプラスエンジニアリング事件がありますので、合意退職であっても1ヶ月くらいが相場と思われます。


【まとめ】
(1)就業規則の条項とと民法627条が異なるときは、民法627条に抵触しない範囲において就業規則は有効になる。
(2)合意退職の場合は予告期間を1ヶ月程度に定めるのが相当。

【参考判例】
ID=00425(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ高野メリヤス事件(東京地裁・昭和51年10月29日・判決)

ID=07803(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へプラスエンジニアリング事件(東京地裁・平成13年9月10日・判決)


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辞職-民法との関係-

2004-11-22 22:14:03 | 辞職の知識

【合意退職と辞職】
 まず知っておいていただきたいのは「辞職」と「合意退職」は違うということです。
「合意退職(合意解約)」は労働者が契約の解除を会社に申し入れ、会社がそれに応じることによって雇用契約が終了することを言います。
「辞職」は労働者が一方的に契約を解除することで、会社の承認や合意を待たずに民法の定めにより雇用契約が終了することを言います。

【辞職と民法の関係】
 さて、「解雇-民法との関係-」のまとめで(1)解雇の手続は民法でなく労働基準法の定めに従います。(2)労基法に定めがないこと(損害賠償など)は民法に戻って判断します。と書きましたが、辞職の場合はどうでしょう。

 まず、労働基準法上に辞職について記載がないか調べてみると、同法第15条2項に「明示された労働条件と事実が相違するときは、労働者は即時労働契約を解除することができる」と書いてあります。
※労働契約は雇用契約の中に含まれますので、ここでは雇用契約として話を進めてゆきます。

 雇用契約を結ぶときに労働条件を会社は提示することになりますが、その労働条件と実際の労働条件が異なるときは、労働者はいつでも辞職可能ということです。なお、ここで言っているのは、雇用契約を結ぶときに提示された労働条件との相違であって、求人広告などに載っている労働条件との相違を言うのではありませんので、ご注意ください。

 その他には労働者からの辞職に関する定めはありませんから、ここで民法に戻ることになります。民法では第627条と628条が雇用契約の解約に関する条文です。
(1)第627条1項では解約の申し入れをして2週間すれば自動的に雇用契約は終了するとなっています。
(2)同2項では、月給制社員の場合、賃金計算期間の前半と後半で扱いが違ってきます。
(3)同3項は年棒制など半年以上の期間で賃金を決めたときですが、ここでは割愛します。
(4)そして、第628条では有期雇用契約の場合は(627条を満たした上で)いつでも雇用契約を解約できるけれども、どちらかに債務不履行の過失があったときは損害賠償の責任を負うことになっています。
辞職では、時間給や日給の場合は(1)、月給の場合は(2)、有期雇用契約のときは(3)が適用されます。

 ここで注意が必要なのは(2)です。当期の前半に申し入れをしたときは翌期の初日に雇用関係がなくなりますので、その前日、つまり当期の末日が退職日になります。
次に、当期の後半に申し入れをしたときですが、このときは翌々期の初日に雇用関係がなくなりますので、その前日である翌期の末日が退職日になります。
11月15日に申し入れをしたときは11月30日が退職日で、11月16日に申し入れをしたときは12月31日が退職日ということです。

 この他に就業規則との関係がありますが、これについては次回触れたいと思います。ここで初めて合意退職が出てきますので、次回をお楽しみに!

 なお、民法第628条によって有期雇用契約の労働者が辞職したとき、労働者に損害賠償責任が発生するかという問題がありますが、多くの場合、会社がどれだけの損害を被るかを証明することは難しいと思われますし、証明できたとしても訴訟費用など割があわないため、実際に労働者が損害賠償責任を追及されることは殆どないと思います。また、パートタイマーに適用される就業規則に自己都合退職が定められていれば、その手続を守っていれば損害賠償の責任を負うことはありません。


【まとめ】
(1)辞職と合意退職は別物です。区別して考えましょう。
(2)辞職が労働基準法に定められているのは労働条件が違ったときの即時解約だけ。その他のときは民法に戻って判断します。
(3)月給制の場合、民法第627条2項が適用されます。

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