大阪-ガレキ差し止め訴訟  原告団のブログ

放射能汚染から未来の世代を守りたい!
被曝阻止に立ち上がった原告団の公式ブログです。

ガレキ差し止め裁判・原告団ニュースNo.10 (最終号)

2017-05-15 | 主旨

ガレキ差し止め裁判・原告団ニュースNo.10

最終号

                                 

2017年5月5日

                   放射能汚染ガレキ広域処理差し止め裁判・原告団

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ガレキ差し止め裁判の成果と教訓

                                                        原告団・団長 小山 潔

 

 ガレキ広域処理差し止め裁判を起こして4年を越した今年3月、大阪高裁で控訴審判決が出ました。既に報告の通り、原告側の敗訴でした。3月18日の原告団総会で上告しないことを提案し、原告団からも期限内に上告希望者がいなかったため、この裁判闘争は終了しました。しかし、4年間の裁判の到達点は控訴審判決にはっきりと現れています。

 

 高裁の判決文を読んで先ず思うことは、法的な判断以前に、地裁も高裁も、事実を正しく認定できなかったということです。改めて「こんな程度か」という気持ちです。

放射能濃度、放射線量は測って数値で表されなければ判断ができません。しかし放射線の測定値には測定の誤差や偶然により、必ずバラツキが伴います。そのバラツキの影響を、測定地点、測定回数を増やすことで取り除き、バラツキではない真の数値の変化、すなわち持ち込まれた放射能の影響を見つけ出す際の理論が統計学です。私たちはこれを使って、北港処分場の焼却灰の埋立て場所の空間線量が上昇した事実を証明しました。特に控訴段階の準備書面では「測定値」と「測定値の平均」の違いを説明した上で、大阪市の測定データを利用して空間線量の上昇を立証しました。同様に、宮古市の焼却炉周辺の土壌セシウム濃度が焼却炉からの距離によって異なることを証明した岩見億丈さん等の学会論文を証拠として提出しました。 

しかし大阪高裁も地裁も統計学を理解せず、測定値のバラツキが大きいことを理由に私たちの主張と証拠を否定しました。明らかな事実誤認です。しかも高裁の判決文は、私たちの立証を否定しようとしてわざわざ被告・大阪市側の証拠を持ち出し、事故前にも大阪府下で「高さ1mで測定された空間線量は0.077~0.108μSv/h(中略)、0.031μSv/hの差が出ている・・・・」と言いました。これは明らかに上に述べた「測定値」と「測定値の平均」の違いを区別できない間違いで、裁判所が統計学の初歩を知らないことを自白するものでした。

この種の裁判では統計学の専門家の意見書・証言が重要なのだと痛感するとともに、北港処分場の放射能の蓄積を指摘した私たちの主張は正しく、重要で、今後も主張し続けるべきものだと思います。これが成果と教訓の第一です。

 

第二の点は、低線量被曝の健康被害にかかわる新たな論文で年間1mSv以下の健康被害の証拠と、ICRP勧告の精読により、ICRPも年間1mSv以下で被害が生じる可能性を認めている事実を指摘できたことです。これは専門家と弁護団の努力による大きな成果です。例えば、ICRP勧告は、次のように言っています。

 

● 公衆の構成員が生まれてから継続して年間1mSv被曝した場合の年齢65歳における条件つきがんの年死亡率は100万人当たり45人。

● 廃棄物処理の状況では、公衆の線量拘束値は年間0.3mSvを超えないことが適当であり、年間0.1mSvがより慎重である。

高裁の判決もこれらの点を直接否定することはできず、「ICRPはLNT仮説は疫学的に不確定と言っている」とか、「本件災害廃棄物が(放射線の)線源に当たらない」とか、「(低線量被曝に関する)研究成果が医学的に確定的なものとして幅広い了解が得られている根拠がない」とか言うしかありませんでした。

 

地裁段階では、矢ヶ﨑克馬さんの意見書で、国・大阪市のバグフィルターの性能評価方法の欠陥やICRPの被ばく線量評価を体系的に批判しました。さらに、またこの裁判は、松崎道幸さん、岩見億丈さん、熊本一規さん、松井英介さんらの専門家の方々の力でもって、ここまでたどり着きました。

 

ガレキ差し止め裁判では、大阪府下の広域処理による放射能汚染と健康被害を立証する証拠を見つけられませんでした。それは生活上幸いでしたが、裁判では重要な証拠を欠き、抽象的な部分での争いにならざるを得ませんでした。しかしその分、低線量被曝の健康被害の問題に正面から取り組み、今後の運動への重要な足がかりをつくれたと自負しています。

  最後に、弁護団とご協力ご支援くださった皆さん、本当にありがとうございました。

 

 


 

避難者の悲痛な思いが闘いの原点

原告団・副団長 内海洋一

2012年夏、大阪で放射能ガレキ受入れ(焼却・埋め立て)が強行された前年、私の住んでいる和歌山市においてもその動きがあり、私は避難者の方たちと反対の議会ロビー活動等など行っていました。そして和歌山市の受入れはストップしたものの大阪市は橋下元市長のもと、強行されようとしていました。

 そんな折、ある避難者(京ちゃん)から私は衝撃的な発言を聞きました。「内海さん、主人と別れ家族バラバラで避難してきたけど、また放射能が近くに来るなら、もう経済的にも時間的にも限界なんです。どうして放射能が追いかけてくるの?」と・・・

 私の頭が真っ白になり、15才から原発反対に関わってきた約35年間の経験を吹っ飛ばすぐらいの衝撃と鳥肌が立ち、彼女と私の目には涙があふれ出しました。放射能ガレキ受入れは、正に原発避難者・被害者を二重三重に叩きのめす「非人間所業」であり絶対に許せないと満身の怒りが込み上げ、事務局に関わってきたのが私の闘いの原点でした。

この裁判は結果的には敗訴となりましたが、その闘ったプロセスにおいては、私的には「勝利」したと思っています。特徴的に、第10回期日(2015年5月20日)で低線量被曝の第一人者・矢ヶ﨑克馬さん(琉球大学名誉教授)が原告側証人として証言台に立ち、「直ちに政府は殺人的放射能政策を止めるべきである」と高らかに発言された。そして、その瞬間、原告席、傍聴席の参加者の皆さんから涙があふれ、私たちの思いを法廷の場で発言された歴史的な瞬間であり、私の中でこの意見書と合わせ今後の闘いに大きく寄与できるものと確信しました。

 

最後に、今日まで共に闘ってこられた原告団の皆さま、応援していただいた皆さま、そして、献身的で誠実な弁護団と事務局のメンバーに、心から敬意を表し感謝を申し上げます。

 しかし、放射能拡散の動きはこれからです。大阪や関西で再度、放射能の闘いを繰り広げる必要性も感じています。原告団の方々との繋がりを財産にしていきたいです。ありがとうございました。  


 

 裁判を終えて・・・弁護団より

 

 


 

地道な努力が私たちの生活を守るものであることを信じて

 

弁護士 小林徹也(大阪中央法律事務所)

 

 原告の皆さん、支援者の皆さん、大変お疲れさまでした。

 

 結果は請求棄却でしたが、訴訟を通じて、大阪市・大阪府がいかに市民の健康を顧みず、不十分な根拠で本件ガレキ焼却を進めたかがより明らかになったと思います。

 

 また、ICRPの基準の不完全さなど、今後の同種訴訟の参考となる論点も、提供できたのではないでしょうか。

 

 我が身を振り返ると、専門的な内容に、若手弁護士ほどに十分に理解できなかった点も多く、忸怩たる思いもありますが、皆さんと共に闘えたことを誇りに思います。

 

 秘密保護法や近時の共謀罪(「組織的犯罪処罰法」)に見られるように、政府は、近時、自らに不都合な事実は極力隠し、他方で、市民生活の監視を強めてきています。これほど重篤な被害をもたらした福島第一原発事故についても、何事もなかったかのように、次から次へと原発の再稼働を進めています。

 

 このような動きを止めることは容易ではありませんが、本訴訟のような、地道な取り組みが、政府による権力の濫用に歯止めをかけるものであることを信じて、今後も皆さんと共に、闘っていきたいと思います。


 

 

活動の素晴らしさを実感

弁護士 大西克彦(谷町中央法律事務所)

原告のみなさん、また支援者のみなさん、ありがとうございました。

裁判は残念ながら良い結果ではありませんでしたが、裁判外でのみなさんの活動はしっかりと実を結んでいたと思います。仮焼却や本焼却の期間が予定よりも短かったのは、がれきの量が少なかったのはもちろんですが、みなさんの日々の働きかけを大阪市や大阪府も無視できなかったからだと思っています。

社会や家族のことを心配して、朝も夜も関係なく抗議や陳情、集会などを精力的に行われていた様子には、ただただ頭が下がる思いでした。

裁判においても私はほとんどお役に立てませんでしたが、弁護団の一人として参加させていただき、原発だけでなく、環境や生活について考える機会を与えていただいたことには感謝しております。

今後ともより良い社会、生活を求めて、ご活躍されることを祈念しております。


 

 

がれき裁判を終えて

弁護士 藤本一郎(弁護士法人 創知法律事務所

 何もまだ解決していない。しかし確実に一歩ずつ進んでいる、私はそう思っています。

 私自身は広島で育ちました。父の実家、佐賀県東松浦郡肥前町(現唐津市)には、玄界灘に原子力発電所が存在し、親戚がそこで働いていました。家族の中には、中国電力やその関係会社で働いている者がいます。この環境の中で、私は、原子力の平和的利用と、核爆弾の惨禍とは区別できると思っていました。

 しかし、東日本大震災は、原子力の平和的利用でも、核爆弾の惨禍と同じ被害をもたらし得ることを明らかにしたと思います。

 放射能汚染の恐怖は、良く分かりません。しかし、確実に広がりました。

 私自身、家族とともに2012年春に、尿に含まれる放射性物質の検査をしました。家族の中で、私だけ、僅かではありましたが、セシウムが限界値以上検出されました。外食が多く、東京出張の多い私と、関西に住み、外食をほぼしない家族では、食品等に含まれる放射性物質の量が異なったのではないかと思います。

 様々なルートを辿り、放射能汚染が拡散している恐れが高いのです。私たちが、「がれき」により放射能汚染が拡散していることを心配し、訴訟したことそのものは、寧ろ当然のことであったと思います。誰だって、なるべく被ばくを小さく抑えたい、なるべく良い環境で生きたい、これは当然の主張でしょう。

 裁判では、真偽が不明であれば原告である私たちが敗訴することになります。結果的に私たちが汚染の実態をうまく追及しきれず、勝訴することはありませんでした。しかし色々な成果もありました。特に、「放射脳」と揶揄される言葉が誕生したように、「心配しすぎ」な人がかえって批判されることすらある現代において、同じように不安の声を上げた人達が結びついたことにこそ、意味があったのではないかと思います。

 別に私たちは、放射能汚染の被害が出ることを望んでいる訳ではありません。被害が出てからでは遅いから、声を上げたに過ぎません。裁判は敗訴でも良いのです、勝訴するということは、被害が出たことを証明した、ということを意味するのですから。大事なのは、今後も裁判に下手に勝訴することがないように、被害を出さないように、皆が関心を持ち続け、セシウムがなくなってもいないのに勝手に記憶から風化させてしまわないことではないでしょうか。

 裁判は終わりました。しかし、セシウムはそこにいます。裁判を通じて、皆が色々学んだ筈です。私たちと次世代の健康と環境を守るための戦い、裁判を無駄にしないための戦いは、やっと第一歩が始まったばかりではないでしょうか。


 

弁護団として、下記の先生方にも大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。

梅田章二 先生(大阪中央法律事務所)

吉田正樹 先生(堺筋総合法律事務所)

 


 

 

事務局員所感

 

(足立義子)

 前例ない低レベル放射性廃棄物の一般炉での処理という難問が、日本中の自治体に迫られ、どの自治体住民も手探りの中で始まった非拡散・反ガレキ(被曝)運動だった訳ですが、私も裁判の原告になるというのは初めての経験で、至らない点も多かったかと思います。

各地での住民運動や裁判団体との交流、またマスコミ報道に怒りも感じながらの毎日でもありました。弁護団の先生が「裁判は一番安全な戦い方です」とおっしゃったのはその通りで、専門家による学術的意見書を裁判所に提出し、交渉過程を公式記録に残せる方法はやはり裁判しかない訳です。

 裁判を「核」としながら、私は署名や府市への申入れ、議会への働きかけをし、市民測定所などに検体を持込むなど続け、その甲斐あって、例え低線量でもリスクは侮れないという認識をわずかではありますが、社会全体に拡げる事もできたとは思います。

大阪では環科研と公衛研の統廃合がきまり、線量測定の頻度が少なくなり、近大原子炉と熊取実験炉も再稼働し、小中学校での放射線教育再開が予想され、避難者への住宅援助も打切りが続き、取巻く環境は厳しさを増しています。ますます覚悟をもって、今後も運動を展開しなくてはいけないと思っています。原子力産業との闘いは始まったばかりです。

お支え下さった専門家の先生方、弁護団の先生方、支援する会の皆様に感謝をお伝えしたいと思います。                              

  

(猫熊小)

 控訴審の判決、初めから期待はなかったが中身もあんまりだった。市民の安全を第一に考えない松井知事と橋下元市長を相手に争っていたが、真の争う相手は国、今の司法は国に有利にしか働かない、と再認識させられた。

この裁判に原告だけでなく事務局員としても関わらせていただき、80回くらいあった会議のほとんどに出席したわりには小さな手伝いくらいしかできなかったが、裁判に関わる人たちの様子は、他の原告の方々より感じられたのではないかと思っている。

焼却が終わっても放射性物質の拡散を真剣に考える方もいらっしゃる一方で、幸いにも被害を感じなかったためか関心が薄れていく方も。法廷では陳情書を出し陳述もした。その時に述べた「少しの被ばくであったとしても利のないものは許せない」は今でも強く思う。被ばくの影響なんて数年ではわからない。

「長い裁判、お疲れ様でした」と言いたい気持ちもあるが、これから更に酷くなるであろう国の放射性汚染物質拡散政策を思うと、今はまだ言えない。          

 

 

 (藤田 なぎ)

 私自身がこの裁判の原告となり、事務局員ともなったのは、自分が住んでいる東大阪市で、市長が国・府からの「震災ガレキ広域処理受け入れ」の打診に対し、当初「安全が担保されない中では受け入れはできない」と主張していたにもかかわらず、ある日突然それをひっくり返して「受け入れもあり」との表明を行った、このことが大きな要因になっていたと思います。裏に何かある…と感じました。

なかなか難しい裁判であったことは事実です。でも地裁、高裁とも原告側が大阪府市に執拗に迫ったこともまた事実。弁護団の大変な努力に深く感謝です。私たちは上告という道を選びませんでしたが、放射性廃棄物問題はむしろこれからが正念場。様々しんどいことも乗り越えながら、この裁判に取り組む中で培ってきたパワーを、みんなで次のとりくみに繋ぎ、いかしていくことができたら、と今強く思っております。            

 

 

(光永サチ子)

提訴から4年余。この間、事務局にもいろんなことがありました。方針をめぐって一緒にやれないと離れていったメンバー。仕事が多忙で関われなくなってしまったメンバー。ふと気づいたら、事務局の実動メンバーは当初の半数以下に。最年長の私も、会計をはじめ様々な仕事を担当せざるを得ない羽目になりました。事務作業のかたわら、「意見書」の原稿整理をお手伝いしたり、弁護団会議に出て論議を聞かせていただいたり、証人尋問のリハーサルに立ち会わせていただいたり・・・。でも、そんな中で、傍聴席からは見えないところで、どんなに多くの努力が積み重ねられていたかを知ることができました。

今、地裁12回、高裁5回の法廷を終え、司法が行政に対して「NO!」の判断を下すことの難しさを痛感しながらも、不当判決はとうてい受け入れられませんが、「放射能拡散につながる広域処理は許せない!」と声をあげた人々、そしてそれを精一杯支えてくださった専門家・弁護士の先生方・・・みなさんと出会えたことを本当に良かったと思っています。

ありがとうございました。                      


 

 

専門家の立場から、下記の先生方に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。

矢ヶ﨑克馬 先生(琉球大学名誉教授)

   意見書 『原発事故の影響を受けた放射能汚染がれきの焼却処理は市民の「健康に生きる権利」をおびやかす』 (甲40号証)

   意見書 『バグフィルターのセシウム除去率について』 (甲47号証) 

   意見書 『ICRP体系に対する批判』 (甲48号証)

   証 言  2015年5月20日 大阪地裁 第10回法廷にて (証人調書あり)

熊本 一規 先生(明治学院大学教授)

  意見書 『がれき処理は処理の原則に反する』 (甲41号証)

『海面処理は汚染をもたらす』  ( 同上 )

  証 言  2015年5月20日 大阪地裁 第10回法廷にて (証人調書あり)

松井 英介 先生(岐阜環境医学研究所)

意見書 内部被ばくの危険性、年間1mSvをどう考えるべきか、「脱被ばくを

実現する移住法」制定への提言、等々 (甲42号証)

 

松崎 道幸 先生(旭川北医院)

意見書 『1mSv以下の外部被ばくによる発がん影響』 (甲62、64号証)

 

岩見 億丈 先生(岩見神経内科医院)

  バグフィルターのセシウム除去に関する統計学的考察についてご教示いただく

 (甲50、51、52、63号証)

 

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