ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロの小説、もうお読みなりました?
快挙の報道があった後すぐ図書館に予約を入れましたが
我が町の図書館が所蔵する彼の小説6冊はどれもこれも
もうすでに多くの予約がついていました。
夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語、6 番目。 日の名残り、51 番目。 わたしを離さないで、47 番目。 浮世の画家、22 番目。 わたしたちが孤児だったころ、25 番目。充たされざる者 、19 番目。 忘れられた巨人、39番目。
職場の上司がお昼の休憩時間に
「フルールさん、カズオ・イシグロをご存知でしたか」
と尋ねられたものですから
「いえ、まだ読んだことがなくて・・・すぐ図書館に予約を入れましたが、どの本も予約殺到で、読めるのは来年になりそうです」
そんな会話をしていた翌日
なんと!「わたしを離さないで」の文庫本を手に
「どうぞ、ゆっくり読んでください」
映画化ドラマ化と話題になったころ、すでにお読みになっていた上司の奥様が貸してくださいました。
ゆっくりどころか、読みだしたら止まらない♪一気読み
軽やかで切れのある文体。修辞的技巧を排したシンプルなセンテンスにもかかわらず
物語の状況を充分に読み手に与えてくれるのは、的確な描写力によるものでしょう。
「わたしを離さないで」は、まるでミステリーのように展開 –2006年の「このミステリーがすごい!」で上位に選ばれているようです。
ミステリーというより、小さなパーツ(短いセンテンス)を、周りの状況に合わせて組みあげていくジグソーパズルのようです。
テーマはクローン。翻って人間そのもの。
ロボットに対する人間の感情的反応について、森正弘氏が提唱したのが「不気味の谷」
人間そっくりなクローンは不気味そのもので、恐怖すら抱くのが人間の感覚でしょう。
それが、小説を読み進むにつれ、人間側ではなくクローン側に感情移入してしまっている自分自身を意識してきます。
作家の術中に嵌ったことでしょうか。
声高に多くを語らぬ寡黙さ、静謐で抑制の効いた文章
最後のピースは如何ように置きましょうか
おそらく、置かなくても良いのかもしれません。空いたままで。
そんな気がしてきました。
ところで、クローンで思い出したのが
ご自分にそっくりのアンドロイドを紹介されて話題になったロボット工学者、石黒浩氏
彼もイシグロ。ほんの偶然でしょうけど。
追記です。
kindleのお試し版(最初の部分のみ)で読んだ「日の名残り」にあった執事スティーブンスの語りの一節が印象的でした。
『問題は、美しさのもつ落ち着きであり、慎ましさではありますまいか
イギリスの国土は、自分の美しさと偉大さをよく知っていて大声で叫ぶ必要を認めません』
この小説を読んで思いついた曲がこれです。
メロディーと歌声が好きです。
詩の内容も温かく優しいですね。
共感いただければうれしいです。
♪Song of Bernadette♪ 歌はジェニファー・ウォーンズ
今日撮ってきたバラの数々です。秋バラは涼しいので長く綺麗を保ってくれますね。