フルール

花と音楽のために♪

カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を読んで・・・”Song Of Bernadette”が響く

2017-10-21 | 日記

 ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロの小説、もうお読みなりました?

快挙の報道があった後すぐ図書館に予約を入れましたが

我が町の図書館が所蔵する彼の小説6冊はどれもこれも

もうすでに多くの予約がついていました。

夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語、6 番目。 日の名残り、51 番目。 わたしを離さないで、47 番目。 浮世の画家、22 番目。 わたしたちが孤児だったころ、25 番目。充たされざる者 、19 番目。  忘れられた巨人、39番目。

とりあえず6冊全部に予約を入れて待つこと、多分、この調子だと日の名残りなどは、一年待ちでしょう。

職場の上司がお昼の休憩時間に

「フルールさん、カズオ・イシグロをご存知でしたか」

と尋ねられたものですから

「いえ、まだ読んだことがなくて・・・すぐ図書館に予約を入れましたが、どの本も予約殺到で、読めるのは来年になりそうです」

そんな会話をしていた翌日

なんと!「わたしを離さないで」の文庫本を手に

「どうぞ、ゆっくり読んでください」

映画化ドラマ化と話題になったころ、すでにお読みになっていた上司の奥様が貸してくださいました。

ゆっくりどころか、読みだしたら止まらない♪一気読み

軽やかで切れのある文体。修辞的技巧を排したシンプルなセンテンスにもかかわらず

物語の状況を充分に読み手に与えてくれるのは、的確な描写力によるものでしょう。

「わたしを離さないで」は、まるでミステリーのように展開 –2006年の「このミステリーがすごい!」で上位に選ばれているようです。

ミステリーというより、小さなパーツ(短いセンテンス)を、周りの状況に合わせて組みあげていくジグソーパズルのようです。

テーマはクローン。翻って人間そのもの。 

ロボットに対する人間の感情的反応について、森正弘氏が提唱したのが「不気味の谷」

人間そっくりなクローンは不気味そのもので、恐怖すら抱くのが人間の感覚でしょう。

それが、小説を読み進むにつれ、人間側ではなくクローン側に感情移入してしまっている自分自身を意識してきます。

作家の術中に嵌ったことでしょうか。

声高に多くを語らぬ寡黙さ、静謐で抑制の効いた文章

最後のピースは如何ように置きましょうか

おそらく、置かなくても良いのかもしれません。空いたままで。

そんな気がしてきました。 

ところで、クローンで思い出したのが

ご自分にそっくりのアンドロイドを紹介されて話題になったロボット工学者、石黒浩氏

彼もイシグロ。ほんの偶然でしょうけど。

 

追記です。

kindleのお試し版(最初の部分のみ)で読んだ「日の名残り」にあった執事スティーブンスの語りの一節が印象的でした。

『問題は、美しさのもつ落ち着きであり、慎ましさではありますまいか

イギリスの国土は、自分の美しさと偉大さをよく知っていて大声で叫ぶ必要を認めません』


この小説を読んで思いついた曲がこれです。

メロディーと歌声が好きです。

詩の内容も温かく優しいですね。

共感いただければうれしいです。

 

       ♪Song of Bernadette♪ 歌はジェニファー・ウォーンズ 



今日撮ってきたバラの数々です。秋バラは涼しいので長く綺麗を保ってくれますね。

 

 

 


 

 


素朴な琴_八木重吉~♪チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレ~静かに歌うがごとく♪

2017-10-08 | 音楽

 

   素朴な琴   八木重吉

この明るさのなかへ

ひとつの素朴な琴をおけば

秋の美しさに耐えかね

琴はしづかに鳴りいだすだろう



 

紅葉の季節

那須高原、日光、乗鞍、美ヶ原・・・と、景勝地は数々ありますが

詩が持つ力でしょうか

秋の美しさが

この詩を読むだけで

ぱ~っと目の前に拡がりふくらみ始めます

高く澄みきった青空 艶やかな紅葉

白いススキの穂 木の実に落ち葉 あかとんぼ

あまりの美しさに

そよ風が風鈴を微かに鳴らすように

琴の弦が震えだすのです

まさに琴線に触れるごとく

  


琴での演奏ではありませんが

この詩で思い浮かぶ曲が

チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレ_静かに歌うがごとく


 この曲は、妹のアレキサンドラが住むキエフ地方にある田舎の別邸を、チャイコフスキーが訪問しているあいだに生まれました。

家屋の塗り替えをするために雇い入れたペンキ屋が、仕事をしながら歌っていたメロディーに魅せられたチャイコフスキー

すぐさまそれを譜面に起し、それをもとに「弦楽四重奏曲、第一番ニ長調」の静かな楽章を作りました。

 冒頭にそのペンキ屋への献辞が添えられている「アンダンテ・カンタービレ」(静かに歌うが如く)は

チャイコフスキーと彼のファンであるトルストイとを合わせるために

親友のニコライ・ルビンシュタインが計画した音楽の夕べのプログラムにも入っていました。

 チャイコフスキーは、その日の日記にこう記しているようです。

"It may be that never in my life have I as a composer been as flattered and touched as I was when Lev Tolstoy sitting beside me and listening to the Andante of my quartet, burst into a flood of tears."

「音楽家としての私の生涯のうちで、レオ・トルストイが私のかたわらに腰かけてアンダンテに耳を澄ましながら涙していた時ほど、心から満足に思い感動したことはなかった」

※ このエピソードはリーダーズダイジェストの「作曲家とその音楽の解説」を参考にしました。

 


 

 

–秋のノゲシ–

 

–ピラカンサ–