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判例読みますか

2017年04月05日 | 判例
【事案の概要】
原告は,もともと被告会社の発行済株式総数8000株のうち,4350株を有する株主で,かつ代表取締役であった。訴外Dは,2350株を有する共同経営者であった。
原告は,昭和52年9月21日,訴外Dに所有株式全部を売り渡した。その際に,原告が代表取締役を辞任し,訴外Dが後任の代表取締役に就任することが取り決められた。
その後,原告は,訴外Dからの売買代金支払いを2回も拒絶したため,訴外Dは口頭の提供をしたうえ,売買代金を法務局へ供託した。
被告会社は,昭和52年10月31日,臨時株主総会を開催し,取締役である原告及び訴外Aを解任し,新たな取締役として訴外B及び訴外C及びを選任した。

原告は,当初,昭和52年10月31日の臨時株主総会の無効確認と取消を求めて提訴しましたが,控訴審になって商法257条1項但書に基づき任期までの役員相当額の損害賠償請求を追加しました。

まず,地裁の判断です。
【事件番号】 福岡地方裁判所判決/昭和53年(ワ)第6号
【判決日付】 昭和55年7月11日
【判示事項】 被告会社の臨時株主総会において,取締役たる原告及び訴外Aを解任し,訴外B及び訴外Cを取締役に選任する旨の決議の無効確認(予備的に取消し)を求めた事案について,原告は,その所有全株式を訴外Dに売り渡したことにより,本件株主総会当時には,すでに被告会社の株主たる地位を失っていたと認め,株主総会の招集が取締役会の決議を経ていなくとも,招集権者である代表取締役によって招集されている以上,株主総会の決議が当然不存在,無効であるということはできないとして,原告の請求をいずれも棄却

次に, 高裁の判断です。
【事件番号】 福岡高等裁判所判決/昭和55年(ネ)第454号、昭和55年(ネ)第572号
【判決日付】 昭和56年6月16日
【判示事項】 控訴人は,持病が悪化したので,被控訴会社の業務から退き療養に専念するため,その有していた被控訴会社の株式を被控訴会社の取締役訴外Dに譲渡し,訴外Dと代表取締役の地位を交替したこと,そして,訴外Dは臨時株主総会において,経営陣の一新を図り控訴人を取締役から解任したことが認められるとし,被控訴会社が控訴人を取締役から解任したのは会社運営上しごく当然のことであるとして,原判決を相当と認めた

最後に,最高裁の判断です。
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和56年(オ)第974号
【判決日付】 昭和57年1月21日
【判示事項】 商法257条1項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえないとされた事例
【判決要旨】 T株式会社の代表取締役であった甲が持病の悪化により療養に専念するため、その有していた右会社の株式を取締役乙に譲渡し、乙と代表取締役の地位を交替し、その後乙が、経営陣の一新を図るため臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、甲を取締役から解任したときは、右解任につき商法二五七条一項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえない。

参考条文
旧商法第257条 取締役ハ何時ニテモ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得但シ任期ノ定アル場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ其ノ任期ノ満了前ニ之ヲ解任シタルトキハ其ノ取締役ハ会社ニ対シ解任ニ因リテ生ジタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得
1 前項ノ決議ハ第343条ノ規定ニ依ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ

会社法339条 役員及び会計監査人は,いつでも,株主総会の決議によって解任することができる。
 2 前項の規定により,解任された者は,その解任について正当な理由がある場合を除き,株式会社に対し,解任によって生じた損害の賠償をすることができる。



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取締役の解任については,平成17年改正前の商法では,取締役の地位の安定を図るべく,特別決議が要求されていましたが,会社法では,取締役に対するコントロールを重視して,普通決議に改められました。
2項の損害賠償請求については,平成17年改正前の商法で定められていた「任期ノ定アル場合」の要件が掲げられていないことから,定款又は株主総会による具体的な任期の定めがない場合にも,法定任期(332条,334条,336条,338条)の満了前に正当な理由なく解任された場合には損害賠償請求することができます。

そして,正当な理由とは,役員の職務執行上の不正行為や法令・定款違反行為,心身の故障,職務への著しい不適任(能力の著しい欠如)などが該当するとされています。たとえば,①取締役が故意に会社に対して現実の損害をもたらした事情があるとき,②経営者としての能力に著しく欠けることが明らかな事情があるとき,③重病に罹患したときなど体力的に職務に耐えることが困難なときなどはその例ですが,一方で,経営陣の一新という理由だけで多数派株主が取締役を解任することは問題となる可能性が高いといえます。

本件においては,原告は,持病が悪化したため,共同経営者であった訴外Dに全株式を譲渡して,代表取締役を辞任したようですが,株式譲渡後に何らかの事情(原告の気持ちでしょうか?)が変わったため,本件一連の提訴に至ったものと推測されます。
しかし,原告が株式を全部譲渡してしまえば,原告は株主ではなくなってしまうため,その後譲渡を受けた株主が何をしようと,原告にとっては全く関与できないことになってしまうのです。株主の権利,特に,100%株主の権利は絶大なのです。

事業承継などに伴って株式の譲渡する場合もありますが,株式譲渡の際には,譲渡数や譲渡時期だけではなく,譲渡先についても細心の注意を払う必要があるということになりますね。
ジャンル:
ビジネス実用
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