Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

岐阜県内の第三セクター鉄道の決算報道を見る。

2005-06-25 12:50:22 | 鉄道(地方・専用線など)
岐阜県内を走る第三セクター鉄道は4社。
このうち、廃線が検討されている神岡鉄道を除く、明知鉄道、樽見鉄道、長良川鉄道の2004年度決算が出た旨が報道されていた。
そういえば、神岡鉄道の存廃問題はどうなったのだろうか。あれから音沙汰が全くないのだが・・・。

1 明知鉄道
 「明知鉄道の乗客数最低 04年度決算を発表」(中日新聞岐阜版)
  
 明知鉄道の2004年度決算は経常損益約0.3億円。
 1985年の開業時から20年連続で赤字が続いている。赤字額も前年度を約800万円上回り、一日平均乗車人数も1,297人と前年度から179人減って過去最低を記録した。
 減少した利用者のうち、通学定期利用者が168人を占めており、明知鉄道が通学の足として利用されなくなってきているのか、少子化の影響を受けて学生の数自体が減っているのか。記事からは読みとれないが、恐らく両方の影響はあったのだろうと思う。
 増収策として行われた「グルメ列車」、沿線ハイキングといったイベントの利用者も前年度を下回った。
  
 もう一つの増収策として昨年8月から沿線自治体老人クラブ会員を対象に販売を始めた「シルバー会員券」(年間千円)も対象の7,400人に対する販売実績は33.5%に止まり、目標の50%には届かなかった。
 「沿線自治体老人クラブ会員」だけというのはちょっと不公平だと思ったら、案の定アンケートで指摘を受けたため、加入対象者を沿線自治体の65歳以上、加入料を年間二千円に上げる方向で検討するという。

 しかし、対象者が広がったとはいえ、「沿線自治体の65歳以上」に限定されている。
それは名古屋地区等からやってくる65歳以上の人はこのサービスの恩恵を受けられないということでもある。そう考えると、まだ不公平感は拭えないが、利用実態を調査して観光目的で明知鉄道を利用する人は殆どいないと判断した上での商品設定なのだろうか。

2 樽見鉄道
 こちらはweb未掲載だが、6/22日の中日新聞岐阜県版に8年連続で経常赤字になった旨の記事が掲載されていた。
 また、株主総会の場では65歳以上の人を対象に初乗り運賃180円で全線乗り放題になる「シルバー180」という商品で需要の掘り起こし、増収を図るという方針が示されている。
こちらには居住地域の制約はなさそうだが、よほどPRをインターネット等で手広く行わないと新規需要の掘り起こしは難しいのではないだろうか。

 先の明知鉄道の事例を当てはめてみると、新規の乗客の掘り起こしに繋がるどころか、常時樽見鉄道を利用している65歳以上の人がこの切符に移行して、単に客単価の低下を招くだけに終わるような気がしないでもない。
 今年度は存続理由でもあった貨物輸送が全廃される。また、4月から運賃改定を行い、値上げをしている。この営業施策が利用客の増加に繋がるか、また値上げが収支にどう影響を与えるか注目したい。

3 長良川鉄道
 「赤字最悪1億9594万円 長良川鉄道、台風23号響く」(中日新聞岐阜版)

 引用記事のタイトルが全てを物語っている。
 台風23号による区間運休による収入減もあり、経常損失は過去最悪となった。営業収入も当然減少し、前年度から9%減った。
 支出の方は昨年度のトロッコ列車脱線事故に伴う修繕費の増加もあったが、人件費を抑制したため前年度並みに収まっている。
 長良川鉄道側の言うように「災害があった年としては善戦した」という見方は正しいと思うが、問題はジリ貧のままでいいのか、この状況を放置しておいて良いのか、ということである。
 しかも4月から経営合理化を目的とした減量ダイヤへ移行している。これが更なる利用者減を招かなければ良いが、と思う。

4 まとめ
 ここまで書いてきて何も明るい材料がない。
 モータリーゼーションの進展による鉄道離れ、少子化による通学客の減少・・・典型的なローカル私鉄の問題点を抱えていることがよくわかる。
 これが地方私鉄の現状だと言われれば、ハイそうですかと頷くしかない。
 3社共利用客が厳しい状況にあるが、それが利用者減という形で如実に表れた決算となっていると思う。
 岐阜県は自家用車頼みの交通体系となっており、公共交通に関する手当が十分になされているとは思えない。
 これでは今後の高齢化、人口減少時代を控えて自家用車頼みでは流石に問題だと考えて「総合交通体系指針」を3月に策定しているが、今のところ目に見えた効果は見えてこない。
 長い目で見守る必要があるとはいえ、ただ「見守る」だけでは、ジリ貧に陥っているローカル私鉄の廃止は遠からずやってくる。路線の存廃が問題になると市町村間で利害の対立が必ずと言って良い程発生する。その調整こそが県の役割だと思うのだが。
 利害調整に乗り出す以上、今度は運営資金の問題が出てくる。今後の公共交通の維持・運営には税金の投入が前提となる。
それに岐阜県がどう対応していくか、ようやく公共交通の整備に本腰を入れる気になったと思われる岐阜県の手腕に注目したい。
  

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