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意味がわかると怖い話2509 「悲しき復讐者」

2017年06月17日 09時29分38秒 | 意味がわかると怖いコピペ

多恵子がマンションの屋上から飛び降りたのは、今日のように寒い朝だった。 

 その日、ベッドを抜けてリビングに向かうと、部屋はがらんとして誰もいなかった。 

 しばらくして玄関のチャイムが鳴った。 

立っていたのは管理人だった。 

普段は毅然としている人なのに、顔面蒼白で小刻みに震えていた。 

その時の様子は、今でも映像のようにはっきりと覚えている。 

もう五年も前の記憶だ。 

 私は仏壇の前で「多恵子、行ってくるよ」と手を合わせてから会社へ向かった。 


 自殺の原因は私にあった。 

飛び降りる前の晩、彼女を激しく罵倒した。 

何の罪もないお腹に向かっても悪態をついた。 

最低な夫だ。 

 生前、多恵子は私をずっと支え続けてくれた。 

笑顔を絶やさず、毎日、温かい食事を用意して待っていてくれた。 

それなのに。 

たった一度の過ちを許してやれなかった。 

優しく抱きしめて、一緒に泣いてやれなかった。 

 帰りの電車の中、誰もいない部屋を想像したら、私は涙が抑えきれなかった。 

一緒にいた上司に何度も心配された。 



 家の最寄り駅で降りると、甲高い子供の声が聞こえてきた。 

見ると、改札の向こうで上司の奥さんと五才のお子さんが笑顔で手を振っている。 

上司も会社では見せたことのない満面の笑みを浮かべていた。 

 私はこの時、心底、家族の温かさを感じた。 

 父親と母親に囲まれて幸せな子供。 

それこそ私の思い描く理想の家族。 

 冬の夜風が頬をなでた。 

 アナウンスが列車の通過を報せる。 

 その時、ふと奥さんと視線が合った。 

ほんの一瞬。気まずそうな眼。 

 それだけで十分だった。 

 「理想の家族になって下さい」 

 私は上司に笑顔で言った。 

 列車がホームに滑り込んできたのは、その直後のことだ。 

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