星の四葉の黒騎士団

主にヲタク的ダメ日常や心の病気とかユルユルと。
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メタルサーガSS

2010年07月23日 16時30分23秒 | 二次創作小説
それから、もうそろそろ半日は立ったかな、と感じ始めて来た頃。

一つ一つのフロアにて、探索と徘徊するモンスターとの戦闘を繰り返して。
フロア9階にたどり着いた頃には、すでに窓から見える景色は夕暮れの黄昏を映していた。
もうその日はこれ以上の探索は終わりにする事にして、比較的安全そうな区画で野宿をする事になった。

だだっ広い区画の開けた入り口の大きなシャッターを閉めきって、更に壁代わりに塞ぐように戦車を配置して停車させて。
区画の隅っこに野外野宿セット一式を準備して、みなでオルファリルの作ってくれた弁当を広げている頃には、窓の外は完全に夜になっていた。
キャンプ02にたどり着いてから、廃工場で暮らし始めた当初よりも食生活が少し豊かになったと感じる。
カンパニーそのものが少しずつ大きくなって経済的に潤ってきたのもあるが、キャンプ02でより良い食材をより安価で取引できるようになったのが大きいと感じる。
今、こうして食べるオルファリルの弁当は以前に比べて内容が豊富で、量も十分に満足できるものだった。

「おいしいわね、あのオルファリルって子の作ってくれた料理」
ミサトさんが、弁当を嬉しそうに一つ一つ味わってほおばりながら言う。
その言葉に、私自身なんだか自分の事が褒められたような感じになって嬉しく感じる。

「シェリーも料理に関しては相当の腕前だけれど・・・やるじゃない、子供たちも」
ミサトさんは自分の言う事に自分でうんうん頷きながら、弁当を本当に大切そうに味わって食べている。

「ご飯作る時は、作る量がたくさんだから、オルファリルが音頭をとってみんなで当番制で料理作るのですが。
 なんというか、ヒメコは普通だけれどベルは完全にダメダメなのです。ベルに一人で料理させてたら絶対にいけないのです」
唐突にプリシラの振って来た話題に、ベルが飲み干していた水をあやうく噴き出しそうになる。

「ちょっと!プリシラ、言うに事欠いて唐突に何を言い出すんですの!?」
ああ、始まった・・・懲りずにまた始まった・・・。

「以前、ベルと一緒に当番で晩御飯作っていた時。ベルの焼き魚は、ことごとく毒々しい紫色で青い煙を吹いていたのです。
 ・・・あれは、明らかに人間が食べていいものじゃなかったのです、とても」
「あ、あれは・・・たまたま、そう、たまたまですわよ!」
「カレーを一緒に作っていた時もそうだったのです。
 たまたまオルファリルとプリシラがその場を離れざるを得なくて、仕方なくベルに任せたところ、それはそれは酷い事になったのです。
 ・・・その日のカレーは、まずいとかそんなのを超越してたのです。臭くて痛くてがきがき鉄っぽかったのです」
「あ、あれは・・・あれは・・・わたくしにも、どうしてああなったのか未だにわかりませんですことよ・・・」
「不思議な事に、オルファリルがつきっきりでベルの料理の様子を見ていた限りでは、全く普通だったそうなのです。
 ・・・にも関わらず、出来上がった料理は普通の煮込みうどんのはずなのに、なんかタコの触手みたいのがうねうね動いていたそうなのです」
「そ、そういう事を言うプリシラはどうなのでしてッ!?」
「プリシラは至って普通なのです。むしろ、合成甘露が得意料理なのです」

二人のやり取りにため息つきながらミサトさんを見ると、凄く面白そうに「観戦しながら」弁当を更においしそうにほおばっている。
私は、それでもうめんどうくさくなって完全に放置する事に決め込んだ。

食事も終わって、そろそろ夜も更けてくる頃。
お互いに思い思いにくつろいでいた。
今のところ、この区画に敵が侵入してくる気配は全く感じられない。
私はチェーンソーのメンテナンスを、プリシラは自分の車両整備用工具のチェックを。
ベルはランタンの灯りで自分で持ちよって来た本を読み、ミサトさんはモバイルパソコンで何やら熱心に仕事をしている。

とりあえず、チェーンソーに異常は無し、と・・・。

チェーンソーのメンテナンスを終えて、他のメンバーの姿をちらりと見る。
そうすると、ベルの読んでいる本に目が止まった。

「ベル、それってマンガ?」
ベルの持ってきた本は、どうやら大破壊前の古い少女漫画らしかった。

「ええ、水色時代、ですわよ。こちらに読み終わった巻がありますけれども、ヒメコも読みたいですの?」
試しに貸してもらって少し読んでみたところ、自分にはとても想像つかない物語が描かれていて不思議な気持ちだった。

「ベルって、こういうのが好きなの?」
ランタンの灯りの向こうで、ベルが私のその声にちらりと私を見る。

「・・・あくまでも、ファンタジーとしてなら割と好きで憧れを感じるのですわ。
 正直、わたくしってガサツですから男子に全然もてなくて、恋愛なんてとてもとても縁がないからですし」
少し照れて恥ずかしそうに苦笑いするベルに、意外と乙女なんだなぁと失礼ながらも思った。

「ベルって、いつも男子に冷たいじゃない。
 前から、男子に髪が綺麗とか美人で可愛いとか言われると逆に怒って相手をへこませてるじゃない」
私が不思議そうにそう言うと、ベルはしばらく思い出すように思案を巡らせて、やがて思い出したかのように本にしおりを挟んで閉じてそばに置いた。

「わたくし、お世辞やおだてって嫌いなんですわ。
 特に、あんな風におどおどと媚びるような態度で言われると怒りがこみ上げて仕方ないんですわ」
うーん、プライド高いとは日頃から思っていたけれど、こういう方向でここまでプライド高いなんて。
もったいないなあ、見た目本当に綺麗で、基本的に人間の根っこも優しくて暖かい子なのになあ。

「・・・ベルに憧れて、恋心を募らせてる男子は意外と多いのです」
チェックがすんだのか、整備工具を片付けながらプリシラが話しに混ざってくる。

「そ、そんなの初耳ですわよ」
プリシラの言葉に居心地悪そうに少し頬を赤く染めながら、わかりやすいくらいうろたえた声でベルが答える。

「そりゃ、ベルが毎回毎回、口説いてくる相手に怒りまくってるもんだから相手は怯んじゃうのです。
 そんな事が何度も数知れず続くので、そのうちベルを口説く事を『鈴なりギロチンの金山越え』というようになったのです」
ああ・・・その単語は以前から何度も聞いた事がある。
というか、男子の間でも女子の間でも決まって忘れた頃に話題になる単語だ。

「く、口で言えないなら文面で伝えればいい事ですわ!」
ベルのその、なんだかもう必死になっている言葉にプリシラは軽く首を横に振る。

「いつだったか、女子で好みのタイプを話題にしていた時なのです。
 ベル、あの時離れていた男子にも聞こえるほどの大声であんな事言ったの忘れたのです?
 ・・・自分の口で女の子に気持ちを真っ直ぐ伝えられないような軟弱な男子なんて願い下げですわ、なのです」
ああ、あったあった、そんな事も確かにあった。
プリシラのその台詞に、ベルは可哀想なくらいがくーっと肩を落として、うなだれてしまっている。

「青春ねえ」
相変わらずモバイルコンピューターのキーボードをカタカタと打ち続けながら、ミサトさんがそんな事を呟いた。

「そういえば、ベルってさ」
私の言葉にベルが跳ね跳ぶように顔を上げる。

「ホッパーといつも喧嘩してるけど、実際どう思ってるの?」
私自身としては、素朴な疑問のつもりだった。

「ウルトラだいっっっきらいですわッ」
即答だった。
本当に、思いっきり心底イヤそうな顔で。

「そ、そうなんだ」
ある程度は予想していたけれども、これ程とは予想外だったので少し驚いた。
まあ、何でも理詰めで無駄を嫌うホッパーと感情最優先で大雑把なベルじゃ相性は良くないと思う。

「・・・ベル、ヒメコはホッパーのカノジョなのです。
 さすがにもう少し言葉を選んだほうがいいと思うのです」
プリシラが、そうベルをたしなめてくる。

「ホッパーとはカノジョとか、恋人とかそういうんじゃないの。
 過去にちょっとあって、長く一緒にいるだけで・・・お互いにそういう事を言った事はないの」
少し、うつむいて言った自分のその言葉に、自分で少し胸がちくりと痛くなる。

「でも、ホッパーはいつも俺はヒメコと生きるだのなんだの言ってるなのです。
 実際、今まで見てきたヒメコへの献身ぶりはとてもただ事じゃないのです」
そのプリシラの言葉にまた更に胸がちくちくと痛くなって、何か言わなければとは思うのに無言になってうつむいてしまう。

「そのただ事じゃない献身ぶりが一番気に入らないですわ。
 11歳の頃からあの調子じゃ、ヒメコも知らず知らずのうちに依存して縛られてしまいますわよ。
 わたくしには、どうしてもああする事でヒメコを自分に縛って、離れられないように自由を奪ってるようにしか見えませんわ」
ベルのその言葉に、どうしようもない切なさがこみあげてきて、思わずベルの目をじっと見つめる。

「・・・今、このメンバーだからこそ初めて言えますのですけれども。
 ヒメコ、わたくしは本音を言うと復讐には反対ですわ。
 みんなで生きるために、わたくしたちみんなでカンパニーを作って働く事には何の異論もありませんわ」
突然、ベルがぐっと私の顔に自分の顔を近づけて、両手で肩を強く掴んでじっと見つめ返してくる。

「でも、わたくしの大事な友人が。
 かけがえのない兄弟姉妹が憎悪に心を曇らせるのは我慢ならないですわ」
ベルが力強く肩を揺さぶるのが、さっきからちくちく痛む胸にとても熱い。

「ヒメコ、わたくしから一生のお願いですわ。
 どうか、どうか・・・ホッパーを信じすぎないで欲しいんですの。
 信じてもいいのですけれど、取り返しのつかないくらいお互いに依存してしまわないで欲しいんですの」
ベルの目は、本気で私の事を心から心配している色を映している。 
 
「ヒメコ・・・後生だから、これ以上阿修羅にならないでくださいまし」
ベルは、泣いている。
私の肩を掴むベルの手にそっと私の手を重ねると、ベルの手はとても優しく暖かい。

「ホッパーは・・・ヒメコが阿修羅になってゆくのを少しも止める気配がありませんことよ」
そう言って、ベルは真下にうつむく。
床に、ぽた、ぽたりとベルの大粒の涙がいくつもの水滴の染みを作る。

「今は・・・情けないけど、どうしたらいいのか何もわからない。
 ・・・でも、ありがとう。今は、それしか言えない。
 ごめんね、ベル・・・ごめんね」
ぎゅっ、と強く私を抱きしめながら嗚咽をもらすベルに、私はただ謝る事しかできなかった。
ベルは、ほんの少しだけホッパーの事を誤解しているとは思う。
けれども、今はあえてわざわざ言わないでおこう、と私は思った。

ミサトさんは、そんな私たちを物憂げに、少し悲しそうに無言で見つめていた。

それから、夜もすっかり更けた頃になって、私はふと寝袋の中で目を覚ましてしまった。
何か、気になるものを感じて寝袋から上半身を起こす。
窓からさす月明かりの中を見渡すと、私と並んでいるプリシラとベルは完全に熟睡している。
そうしていると、その向こうで同じく寝袋で寝ていたはずのミサトさんがそこにいないのに気がつく。

ミサトさんは、窓のそばで月明かりに照らされながら、じっと座り込んで夜の砂漠を見つめていた。
枕もとに置いておいた、ふた付きの小箱から猫耳型超高性能補聴器を取り出して装着する。
そうしてから、そっとプリシラとベルを起こさないように気をつけながら出来るだけ足音を立てないようにミサトさんのそばにいく。

「ミサトさん、眠れないんですか?」
私のその言葉にゆっくりふりむいたミサトさんは、なんだかいつもの快活さと全く違う、憂いをおびた影のある寂しそうな微笑みだった。

「ヒメコの過去の事、ご両親と11人の少女たちの復讐の事。
 それから、今の自分自身たちの復讐の事・・・全部、スネークとシェリーから話しは聞いているわ」
ミサトさんのその言葉に、私は何と言っていいのかすぐにはわからなくなって目を伏せた。

「私もね、復讐に生きているの。
 ・・・父さんの、仇よ。私怨のために生き続けているの」
いつも明るいミサトさんが、私みたいに復讐のために生きているなんて全く想像もできなかった。

「でもね・・・怨んでばかりいると、年を取って疲れ果ててしまうのよ。
 私はは時々、鏡で自分の顔を見ていると・・・鏡の中の自分の顔が、ひどいしわだらけのお婆さんになったように見える事があるわ」
それは、私にも覚えがある。正直、私は鏡を見るのが嫌いだ。でも女の子だから、鏡に頼らないではいられないけれども。

「私たちって、お互い生きづらい性分よね」
少しだけ皮肉そうに、だけれど寂しそうにミサトさんは微笑んでみせた。
私は、そんなミサトさんのそばに座り込んで、そっと寄り添わずにいられなかった・・・。


そして、翌朝。

次のフロア10階層にて、私たちはようやく目指すべきものを見つけた。
屈強そうなキャタピラに、鋼鉄の箱のような武骨な外見が頼もしい装甲車両。

「バトルワゴン、なのです」
プリシラが上機嫌な口調でいつものように戦車オタク知識を披露してくれる。

「アメリカ 装甲騎兵強襲車 M113CAV バトルワゴンなのです」
プリシラの台詞にわー、と目を輝かせてバトルワゴンの装甲をぽんぽんと叩くベル。
興味深そうに、窓から差し込む朝日に鈍く装甲を輝かせるバトルワゴンを少しまぶしそうに眺めるミサトさん。

プリシラとベル、ミサトさんで入念にチェックした結果、バトルワゴンは少しの修理と整備をすれば問題なく運用できると結論。
早速、ベルのレンタルタンク3号の後ろにレッカー連結して牽引して持ち帰る事にした。

一通りの作業を終えて、ふと大きく開かれたフロアの大きな窓から外の景色を見る。
戦車が幾数台もおさまるようなばかでかい建造物の10Fの窓の外には、はるかな朝の砂漠が広がっていた。

窓の近くまで歩み寄って、ふと空を見上げる。
そして、昨夜の事、ベルの事、ホッパーの事、みんなの事、あの日の事を思い出す。

砂漠の空は、あくまでもカラッと何処までも晴れていて雲も無かった。

これから先、私たちはどう生きていくのだろう。

これからまた明日を、私はまた誰と一緒に生きているのだろう。

この晴れた空の下で。

そんな事を、ベルとプリシラに呼びかけられるまでずっと考えていた。

いつしか、この晴れた空の下で。


続く。
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この晴れた空の下で 煮込みうどん メタルサーガ
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