Stahlgewitter2016

ベルリンへの日々

同時進行

2017-06-15 09:45:34 | 日記
 本は初めから書くわけではない。複数の章を同時進行で書く。初めての本の時からそうだったと思う。午前中は自宅で第1章を書き、午後は研究室で第2章を書き、夜は再び自宅で第1章を書く(あるいは第3章を書く)、というような具合である。
 なぜこんなことをするのか。一つの章に集中して書いていると、難航した場合に精神的なダメージが大きい。「今日は何も書けなかった」、と。執筆中はかなりこれがダメージになる。複数の章を進めていれば、仮に第1章で躓いても、第2章が書ければ、「今日もともかく前に進めることができた」という達成感が残る。しかも、章の相互連関も分かり、本全体のインテグリティを高めることができる。経験的に、手がけている全部の章が全面的に書けなくなることはほとんどない。
 こうした複数のことを同時進行させるというのは、同じ本の中に限定されない。ある本の執筆と他の論文の原稿の同時進行などもある。さらに、仕事は執筆だけではないので、他の仕事との同時進行もある。要は、常に複数の課題を抱えて進めるということである。これが自分には合っている。当然、一つのことに集中する場合よりも、一日に進む分量は少なくなるだろう。しかし、毎日、何かしらが蓄積されてゆく。毎日、何らかの達成が得られる。
 語学の習得から研究書の執筆まで、小さなものでもよいから「できた」「わかった」「書けた」という「成功体験」こそが進歩や上達に必要だと思っている。ノーベル賞を受賞したエリアス・カネッティは、『群衆と権力』というライフワークを書きながら、それが一作に集中すべき著作という意味でのライフワークにならないように、並行してさまざまな小さな文章やメモを書いた。これも同じ考えに立っているだろう。ライフワークを頓挫させずに完成させる秘訣は、ライフワークに集中せずに複数のことに毎日少しずつでも取り組むことである。
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