戦場のレーサー(2)
ラグナロクオンラインのエンペレースを愛する全ての人々にささげるアサシンクロスの戦いの日々
 



駅前のスーパーは品揃えが良い。

特に生鮮食品の品揃えは目を見張るものがある。
時々腐った人参を掴まされてトラウマになることがあるが、匂いがしばらく鼻から消えてくれないことがあるが、
それでも品揃えは良い。

一体こんな野菜どこの誰が、どんな顔して、どんな気持ちで、どんな奴に食べてもらおうと思って作ってるのだというような野菜が置いてある。
大体そんな野菜となると、どんな風に調理して食べれば良いのかわからず、手を出しにくいのだが、
ありがたいことに野菜の値札のところに「甘みが強い」とか、「豚バラと一緒にいためると美味しい」とか、
野菜の特徴やら簡単な調理法やらが書かれていて、何気に親切である。

さて、そんなスーパーで近頃「大長茄子」が売られている。
名前のとおり、長い。
べらぼうに長い。
そして太い。
まとめていうとデカイ。
とにかく、デカイ。

初めて見たら誰しもがびっくりする。
天変地異が起きたのかって。
ついに茄子が本当の姿を現して人間を滅ぼしにかかったのかって。

そこまでの規格外サイズの茄子だから、当然扱いに困る。
店の者の助言が無ければ当然、調理する勇気等微塵も起きない。
そんな人間の手にあまる大長茄子の値札のところには、こう書かれていた。










「長い」 








わかるから!

それは見ればわかるから!

ていうかもっと言うことあるだろ!

長くて太くてデカいけど、怖くないよって!
かみついたりしないよって!
切ってやけばただの茄子ですよって!




結局、大長茄子の扱いがわからず、
フォトさんは二日連続で目が合ったにもかかわらず、手を出せずにいる。



・・・




話は魚売り場に移る。

ここもなかなか新鮮な魚介類がそろっている。
水槽の中に、まだ生きているミル貝がぎっしり詰まっている。

ミル貝というのは、まぁ一言で言うと、貝である。
デカイ貝である。
本当にデ貝。

擬態語で表すと、ミルっとしている。
多分ミルッとしているというのは、ああいうのを言うのだと思う。
ミルっとしているから、ミル貝なんだと思う。

そんなミル貝も、ミルからに扱いに困るのだが、こちらは店のおじさんが刺身にしてくれる。
何気に親切である。


ちなみにえすかいは、以前このスーパーで鰤を買おうとした際、
黒いエプロンを身につけ白い帽子をかぶった所謂魚屋スタイルのおじさんが、
近くでパックに入った魚の鮮度を、鋭い眼光で確かめていたのを見て、
このスーパーは只者ではない、こんな職人がいるようなスーパーは日本には他にあるまいと思いながら「この鰤、生で食べられますか?」と聞いたとこ ろ、
「私この魚屋のもんじゃないからわかりません」と言われたことがある。
しかもその職人が鰤をみて言った言葉が「生食って書いてないから食べられないと思いますよ」である。
今でもあのオッサンがどこの何者だったのかわからない。


ミル貝を捌いてもらっている間、暇である。
そんなとき、魚介コーナーの一角にある水槽が目に入る。

熱帯魚用の水槽みたいなのが二つ置いてある。
一つには大きな鰻が入っており、「多摩川でとれた鰻です」とデカデカと書いてある。
「鰻って海水魚じゃなかったっけ」とか思いながら隣を見ると、伊勢海老が入っている。

サイズは小さいが四匹も入っていて、なかなかに立派である。
目は真っ黒でまん丸している。
中心部が少し白っぽくて、吸い込まれそうな気がしてくる。
村上龍の小説に出てきそうだと思った。


その伊勢海老の視線の先に、ヤドカリみたいな生き物がいた。


正体はよくわからない。
ただ、貝殻の中に体を隠して足だけ見せるその姿は、おそらく我々が普段ヤドカリと呼んでいるものであろう。

―ヤドカリも食べるのであろうか。

我々夫婦の間にそんな疑問がよぎったとき、
「おまちどぉ」みたいなことを言って、店員が捌き終えたミル貝をくれた。

意を決して聞いてみた。
一体このヤドカリのような生き物は何なのかと。
このヤドカリも食べることができるのかと。


店員は最初、店の奥から覗いているだけであったが、
我々が質問するとわざわざ水槽の前まで出てきた。
もしや、水槽から出そうというのではないか。
はたまた、買うと思われているのではないか。

我々はビクビクしている。
店員は水槽まで来る。
少し屈んで水槽を眺める店員は、
こう言い放った。








「うわ、なんだこりゃ!でけぇ!」





ちょっと!おっさん!








ぽかんとする我々のことなどお構いなしに、おっさんは「初めて見た、すげー」とか言っている。

聞けば、この鰻も伊勢海老もヤドカリ?も、売り物ではなく観賞用のこと。

別に何だって良いが、自分の店の自分のエリアにおいてあるものくらい把握しておいて欲しいものである。


そんなわけで、捌いてもらったミル貝は家で食べたが、美味しかった。
どんな味かと言われたら、ミルっとしていた。

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