9月24日(日)開催のⅢSコンサートでは、「ふるさと・さむかわVol.5」も演奏プログラムと共に配布されました。
今回のスペシャルトークのゲストはピアニストの梯 剛之さんとヴァイオリニストの西永協子さん。
その記事全文を掲載します。
当会の鈴木 茂理事長の挨拶:これまでの活動を振り返って
早いもので、本年度の当会の活動も上半期を終えようとしています。4月の映画祭をはじめとして、寒川駅周辺の美化活動、田植え、子ども未来塾、ⅢS土曜講座(全四回)、そして9月のⅢSコンサートと、会員の皆さんをはじめ、私達の活動に理解と惜しまない支援をいただける住民の方々のお陰で、上半期に計画した全てを、無事成功裏に終えようとしています。
文化に貢献・社会に奉仕の活動を続けると共に、常に新しさをその一年の活動の中に取り入れていくことが当組織の特徴であり、その事が更に多くの皆さんの支持を獲得し、活性化した組織形態を維持発展できると考えています。
今後、更に多くの皆さんの知恵をいただきながら、常に若さ溢れる活動を通して、当会の三つの理念の実現を引続き下半期の中でも図って参ります。切に皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。
以下、対談記事です。
寒川の良さは ゆったりした「空間」と素朴な「時の流れ」を楽しめるところ(梯 剛之)
(鈴木) 初めまして。今日は寒川町岡田にある「和音」で世界的なピアニストの梯 剛之(かけはしたけし)さんにお話しを伺います。
また、「和音」のヴァイオリン講師で、弦楽四重奏団・アンサンブル☆ステラで活躍する西永協子さんにもご参加いただきました。この対談は住みよい町・さむかわにする会の機関誌「ふるさと・さむかわ」のスペシャルトークとして掲載され、9月発刊予定です。早いもので今回で第5回目になります。音楽家さんに参加いただくのは実に3回目です。どうぞ宜しくお願い致します。
(梯さん) こちらこそ、宜しくお願い致します。
(西永さん) 第1回「ふるさと・さむかわ」は、主人と私がゲストでしたから、私としては今回で2回目になります。楽しみにしていました。
(鈴木)私たち住みよい町・さむかわにする会は、読んで字の如く寒川町をもっと住みよい町にしたいと思う仲間によって、4年前に結成されたボランティア団体です。昨年、法人格取得と共に活動の幅が拡がり、現在は会員が約200名となりました。寒川独自の文化が段々と失われて行く昨今、自然を守り、文化の香りがして、子どもからお年寄りまで安心して暮らせる町となるよう活動しています。
さて、梯さんは小学校卒業後にオーストリアのウィーン国立音大に留学されたと聞いています。何をするにしてもご苦労があったと思いますが、それらの体験から、ここ寒川町をどのように感じていますか。
(梯さん)寒川は空間がゆったりしていると感じますね。そして、オーストリアもそうなんですが、住む人々が素朴な時の流れを楽しんだり、歴史が残っていて、その中で一つ一つを育んでいるところがとても気に入っています。
(鈴木)私は寒川生まれで、寒川育ちの純粋の寒川人です。一時期、仕事の関係で関西に住む事はありましたが、寒川が大好きです。この町も少しづつ都会的な側面を持つようになり、人口も僅かですが、増加傾向にありますものの、歴史や文化との折り合いを如何に図れるのか、とても心配しています。
(梯さん)ここ寒川は素朴な雰囲気を感じますし、神社一つとっても息吹が有り、何気ない風鈴の音色が聞こえて来る等、失われつつある昔ながらの「温かさ」が残っていると思っています。
(西永さん)寒川に越して来た時、寒川は夜は限りなく暗く、静かで星が綺麗に見え、昼間は富士山が大きく見えた事にびっくりしました。空気は澄んでいるし、人が生活するに相応しい場所との印象を強く持ちましたね。
(鈴木)ありがとうございます。私たちは、そのような無形文化資産を維持し、次代に繋げていかなくてはなりませんね。
当時、西永さんがどこでも見られる普通の機能が寒川町には無いと指摘された、寒川駅前の交番や観光協会ですが、今では整備されましたし、建設中だった圏央道も開通して、少し都会らしくなりました。
(梯さん)都会には都会の発展した良さがありますが、自然と地域の持つ独特の繋がりが失われて来ています。何度も言いますが、ここ寒川にはそれが脈々と受け継がれている。
オーストリアでは春になると、外にテーブルを出して、ハトや鳥の声を聴きながらアイスクリームやコーヒーを楽しんでいます。レストランでも屋外のテーブル席でワインを飲んだりしています。
「和音」での練習の合間にお茶を飲むのですが、鳥やセミの声が聞こえ、都会には無い自然を常に感じています。今回はこのような場所で、ショパンのピアノコンチェルトを、しかも、カルテットで行えるのです。私としては初めてのプログラムとなり、とても嬉しくて仕方がない。
(西永さん)私達、アンサンブル☆ステラとしても初めてで、とても楽しみなんですね。是非、聴きに来ていただければと思います。
(梯さん)実は何度となくアンサンブル☆ステラの演奏を聴く度に、共演できないかと考えていたのです。今回、寒川で共演できる機会をいただきありがとうございます。
(西永さん)梯さんとのお付き合いは古いのですが、ショパンのピアノコンチェルトを一緒に演奏する事は初めてです。私は寒川に来て十年ですが、寒川の持つ「空間」・「空気感」は、何にも代えがたいものと思っていました。このような中で音楽や芸術が発展して行けたら良いですね。寒川は都会に近い田舎とも言いますが、都会とは違った空気が芸術に合っています。
(鈴木)梯さんは作曲者の気持ちや歴史的背景を深く理解し、自分なりに感じたところを表現していくと聞いています。また、聴いている人に如何に届けれるかを常に意識されている。自分流のスタイルに磨きをかけていると言う事でしょうか。
(梯さん)オーストリア留学して分かった事ですが、音楽との接し方は、正装してコンサート会場に出向いて聴く事だけではなく、子どもが替え歌で楽しんだり、日常の会話の代わりに音楽を取入れて、お道化た会話を口笛吹いて会話をする等、様々なのです。
アンサンブル☆ステラの良さも、正に音楽を通じて親しく会話できている事に尽きますね。ショパンのピアノコンチェルト(ピアノ協奏曲)は、今ではオーケストラをバックにした曲として有名ですが、当時のショパンは、最初は小編成で試行錯誤して作り上げ、都度、親しい友人に聴いてもらい、様々な楽器を追加していったようです。
今回、聴いていただく小編成のピアノコンチェルト第1番ホ短調は、ショパンが大編成でウィーンの国民劇場で演奏する前の、言わば「試行錯誤」していた時期のもので、その再現が図れる事からも注目に値すると思います。このように曲作りに慎重だったショパンの人柄が、とても感じられますね。
また、ショパン19歳の時、ショパンと同じワルシャワ音楽院に通うコンスタンツィア・グラドコフスカという天使の歌声を持つといわれたソプラノ歌手に恋するのですが、ナイーブな彼はなかなか「好きだ」と言えずに、その気持ちをピアノコンチェルト第2番第2楽章に込めています。
ピアノコンチェルトは最初に2番が出来た後、1年後に1番が発表されていますが、よりスケールの大きな曲に仕上がっています。(ショパンのピアノコンチェルトはこの2曲だけと言われている)
(西永さん)ショパンはピアノの詩人と言われるのですが、報われない恋愛や、病弱な生涯を送ったショパンだったからこそ、ショパンの音楽には、私たちの心を激しく揺さぶる強い力が宿っているのかも知れませんね。
(鈴木)話は変わりますが、梯さんは学校や被災地を回ってピアノの演奏活動をされていますね。演奏活動をされた感想は如何でしたか。
(梯さん)音楽を好きになって欲しいし、身近に感じて欲しいと思っています。幸いにも聞いた後に、お母さんを連れて来るとか積極的な子が増えて来ている。音楽を聴くだけでも良いのですが、出来ればピアノをやってもらえたら嬉しいですね。(笑い)
楽器を勉強しなくても、目標に向かって自分の道を貫いたり、諦めないで他の分野であっても活躍できると良いですね。
また、僕の演奏会をきっかけに、僕の事を思い出してくれると、もっと嬉しい。
(鈴木)私達の活動は格別に目新しいものではありませんが、活動によって地域や地域の人々が、寒川を身近に感じてくれるようになったら嬉しいですね。
その意味でも、地域総出で地域の文化を盛り上げて行けるような仕組みが欲しいのですが、ここまで来ると行政の力が不可欠です。幸いにも行政も私達も「寒川を住みよくする」点では、ベクトルは同じですし、町外に出た方が再び家族を連れて戻って来たくなるような、自然が溢れ、文化の香りのする寒川町となるよう活動し続けて参ります。
梯さん、西永さんの今後のご活躍を期待しています。また、近い将来、寒川の文化を活かした演奏会を実現したいと思います。
本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました。
写真は左から
ヴァイオリニスト:西永協子さん
ピアニスト:梯 剛之さん
非営利 一般社団法人 住みよい町・さむかわにする会・理事長:鈴木 茂さん
(撮影場所:ムジークハウス「和音」)