日本経済を成長させてきた「人の和を優先する組織」は、多様性のある人の能力を引き出す「協調性を活かす」やり方である。
これは、目標が皆に共有されていれば、各人の力をつなぐことで、目標達成に向けて大きな推進力となる。
この協調性を大事にする日本流は、達成目標が見えている課題には有効な手段だが、目標の設定が多様になって合意した方向がないと、ことなかれ主義になる。
突出した目標や、革新的な手法を取り入れようとすると、リスクを避ける方の選択が多くなり、悪い場合には【ぬるま湯的な集団】に落ち込んでしまう。
バブル経済崩壊後の日本は、このリスクを避けて先送り体制の非効率に陥った。
1990年代に【金融業界の癒着体質】が問題とされて、護送船団方式のぬるま湯に浸った「銀行の野放図な経営」によって、不良債権のもとになる土地バブルは崩壊した。
バブルがはじけて【不良債権の発生が連鎖的に増加】した時期に、銀行の破綻を避ける救済策ばかりが、政府によって実施された。
そのために、金融業務の合理化が進まずに、金詰まり現象が起きることで、貸し渋りなどの経済に悪影響のある風潮が保班を浴びた。
このために、バブル崩壊以後の経済の再生に必要な、合理化投資や「新事業投資が削減されて景気低迷の原因となってしまった。
この反省によって、【業界の既得権保護の目的の規制は悪法】との国民の間の認識が広まっていった。
お役所が必要以上に関与して、既得権業界を保護するのが、【経済活動の刷新と妨害している】との認識だ。
「人の命や健康の維持に関する規制」は必要だが、経済に影響があるとの理由での規制は撤廃するのが正しい、として「新自由主義」が浸透し始めたのだ、
このような認識が国民の間に空気となって合意されたので、経済再生の目的に沿って、【規制改革、政府規制の撤廃が、将来の目標】になるとされた。
経済活動が低迷していると、規制撤廃が不十分だから、と決めつけられた。
この理由の不明確のままにして、規制改革の国民的合意に【悪乗りしたのが非正規雇用の規制枠の拡大】である。
人材派遣会社などの暗躍活動によって、民間企業の仕事を次々に【正社員の仕事から、外注の非正社員の低賃金労働に置き換え】ていった。
その人件費削減の利益は、大手企業と、人材派遣企業の手数料利益に変身した。
日本人は世の中に風潮に賛同する空気に浸って、【人件費の削減と低賃金労働の増加】が、あたかも近代化の方向だと勘違いをしてきたのだ。
「ぬるま湯的な保護」は経済活動が不活発になるが、かといって、人件費の削減が経済活動の目標だと取り違えた誤りが、賃金デフレの元凶になったのだ。(続)