庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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原子力発電所の設計思想のレベルを疑う、低レベルの安全システム。

2011-04-27 | 核エネルギー・原子力問題
原子力発電は日本の技術で改良されてきて、今では世界一の水準であり、ソ連のチェルノブイリ原発の様なレベルの事故は絶対におきない。
これが日本の原発推進派の言い分であり、原発立地の地元住民を賛成になびかせる論法であった。
それが、歴史上で最大級の地震(マグニチュード9)の発生によって、想定をはるかに超える津波が襲ってきたので、さすがの日本の一流技術で万全を期した原発も、大事故に至ってしまった。
古今未曾有の天災であって、日本の技術が劣っていたわけではない。

これが、未だに原子力発電を擁護して、存続を貫く論者の認識であろう。
しかし、前回に指摘した様に、想定が間違っていたから事故につながったことは間違いないが、技術面での欠陥が事故を引き起こした面でも、大きな原因となっている。
日本の原発技術は、常識レベルから見ても、レベルの低い安全システムとなっていた。

非常用発電機の設置場所や、燃料のラインを一系統しか装備していないなどの欠陥設計に加えて、1号基、3号基、4号基と、続けざまに水素爆発を引き起こした事態は、事故を重大化させたうえに、原子炉の冷却安定化に大きな被害をもたらした。
なぜ、本来は発生しない筈の水素が原子炉建屋の中に充満してしまったのであろうか。
マスメディアの報道は何も伝えていない。

東京電力も原子力保安院も、この件については深い説明はいっさい避けている。
それは、設計上の大きな欠陥をさらけ出したくないからであろう。
原子炉の中の核燃料棒は、ジルコニウムという特殊な金属で覆われていて、ウラニウム燃料は露出していない。
この燃料棒が、冷却されなくて高温になると、ジルコニウムと水蒸気が反応して水素を発生する。
しかし、核反応を起こさせる原子炉の内部であるから、水素は外に出てくることはない筈である。
さらに、原子炉は全体を格納容器に覆われていて、原子炉内の水素が漏れても、格納容器内に留まる筈である。

つまり、原子炉建屋内に水素が充満したということは、原子炉も格納容器も、水素を密封出来る機能はなくて、じゃじゃ漏れの状態になっていた。
それが、原子炉建屋内にこもったしまったことが、水素爆発の大きな原因であった。
ここで、漏れ出した水素を原子炉建屋の外に速やかに放出しておけば、爆発するほどの水素はたまらない筈である。
しかし、現物の原子炉建屋は、この大量の水素を後生大事に、漏らさない様にできていた。

素人の技術者でも判る様なレベルの低い設計思想によって、いつまでも水素をため込んでいた。
あの大爆発によって無様な鉄骨と瓦礫の原子炉建屋を世界中に晒してしまい、何の為に分厚いコンクリートの建屋を装備したのか、皆目、見当もつかない。
空気より軽い水素は、建屋の上層部に上がるので、わずかの隙間でも設置しておけば水素が大量にたまることはなく、あの大爆発は起こらずに済んでいる筈である。
原発全体を設計した技術者が何を勘違いしたのだろうか、未だにハッキリしない。(つづく)

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