庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

一時の流行的な国策に翻弄されてきた林業。間伐支援も、またか。

2009-04-11 | 森林・林業
10年ほど前には見向きもされなかった林業であるが、ここにきて急に国の政策として林業にテコ入れすることになり、予算がついての大判振る舞いである。
太平洋戦争後の山林の荒廃に対する対策を行った時も、今とは予算の規模は大違いであるが、国策としての植林奨励が実施された。
田畑を開墾する一方、急斜面の山肌にも植林できる場所なら、どこにでも植えていき、1本植えると100円という風に、補助金が出た時代があった。

今はその植林で増加した時期の樹木が育っている。といえば良いように思えるが、実はそうではない。
植林をしたあとは、10年から30年の間に、何度も間伐をして、成長度合いに応じて樹木の本数を減らしていく間伐という作業が必要である。
それを適切に実施していくと、植林した樹木は材木となる性質がそなえられて、40年から60年頃になると、伐採、収穫の時期になる。
そこで、材木としての価格が評価されて、林業は経営できる。

息の長い仕事であり、森林という自然を相手にする仕事としては長い目で見て、手入れや伐採などの適切な処置を施すことが必須である。
ところが、林野庁というお役所は、この長い目で見て森林を育てる、林業を支援するという役目を全くと言ってよいほどしてこなかった。
いったい、なんのための役所なのか、驚きの連続、あきれてしまう程である。

戦後の植林奨励の時期にも失敗している。
それは、面積当たりの本数をキチンと指導しないで、植林に補助金を出した。
だから、畑仕事をしてきて、林業の専門農家ではない人たちは、たくさん植えた方が収穫もよいとおもって、植えすぎている植林地が続出した。
それは、本数に応じての補助金がつくから、多く植えて収入を増やそうとするので、当然の結果である。

また、一時期は材木が将来はもっと需要があるはずだから、天然の広葉樹の森林を伐採して、材木としての用途が多い、針葉樹(杉、マツ、ヒノキ)を植える政策を行った。
これで、貴重な天然林が減っていき、本来は針葉樹に適さない山地にも、針葉樹を植林した人工林を作ってしまった。
それが今は伐採もできずに、過密になっている杉の森林がふえてしまい、樹木は死にかけている。
すると子孫を残そうとして、大量に花を付けて花粉を飛ばすことになる。
日本全国に花粉症をバラマキしている。
30年から40年前の失策のツケを、今の世代が払わされている。

そして、間伐を適正に実施しなければならない植林後の20年から40年の間には、日本の高度経済成長の影響もあって、林産物資源の輸入関税をゼロにしてしまった。
同時に円高が猛烈に進んで行き、国内の林産物の価格競争力は、急激に失って行き、林業の衰退は加速されていった。
この時期に林野庁などの行政が何をしたか。
それは、林道を充実するという名目で、実際には役に立っていない大規模林道、スーパー林道を全国につくろうと画策して、「緑資源機構」などの天下り外郭団体を通じて、道路事業に癒着して堕落していった。
これも、国策と称するお金にすがっている。

今回は森林保全、炭酸ガスの吸収源という役割で、森林・林業の分野に予算を回すことになっている。
それは、キチンと将来を見ての施策にお金を使うのならよいのだが、間伐実施に対する補助制度などは、一時しのぎ的な政策に見える。
例によって1本間伐すると1000円の補助金。
こんなやり方で、適正な間伐作業が実施できるのか。

前歴からみると、またか!になりそう。
以下、次回に。

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