平成二十六年二月二十四日、ａｕのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「白昼の名古屋駅前で“無差別殺傷”未遂事件」
を企画、取材、執筆しました。
けさの各紙は、昨日23日午後2時15分頃、名古屋駅付近の、家電量販店や百貨店が立ち並び、待ち合わせ場所として有名な「ナナちゃん人形」にも近い「笹島交差点」の歩道に車が突っ込み、15～40歳の男女13人を次々にはねて重軽傷を負わし、そのまま街路樹に激突にして車の前部が大破し、警官に取り押さえられ逮捕されるという“無差別殺人未遂事件”を大きく報じている。
事件を目撃した男子高校生（18）は「人が次々に宙に飛ばされ、映画みたいな光景だった。今も震えが止まらない」という。（東京新聞より）
車を運転していたのは名古屋市市西区栄生3在住の無職・大野木亮太容疑者（30）。同氏は「人をはね殺すつもりでやった。誰でもよかった。悪いことだとは分かっている」と警察に供述しているという。
なお、犯人は5人家族で、両親ら4人が最近引っ越し、1人暮らしで引きこもり状態だったこと（毎日新聞）や、近隣の人に「家族のことで悩んでいる」と話していた（読売新聞）ことや、父親は愛知県警幹部の警視とのこと（産経新聞）。
ちなみに、法務省の機関である「法務総合研究所」は13年3月に「無差別殺傷事犯に関する研究」と題する調査報告をしている。これは00年3月から10年3月までの間に裁判が確定した無差別殺傷事件（被害者は複数または一人のケースあり）の犯人52人を対象に調査したもの。
それによると、犯人の年齢は、20、30代で58.9％を占めた。ほかに16～19歳13.7％、40～49歳13.7％など。
性別はなんと男性が98％。
婚姻については、婚姻歴なしが82.7％、婚姻歴があっても離婚、別居が大半で、同居中はたったの2％。異性との交際経験も、「なし」34.6％、「不詳」11.5％で約半数を占めていた。
さらに犯行時の交友関係は、「なし」が53.8％。親密な友達がいる者は5.7％でしかなかった。
犯行前1年間の就労状況は、有職53.2％、残りは無職。有職のうち、正規雇用は40％、残り60％は非正規等。そのうち60％が犯行時は無職に転じている。つまり、非正規、無職が圧倒的に多い。
教育程度は、中学卒業、高校中退が合わせて63.4％で過半を占め、高卒19.2％、大学中退9.6％で、大卒は3.8％だけだった。
犯行動機は、「自己の境遇への不満、いらだちを晴らすため、憂さ晴らしとして他人に対し殺害を企てるものや、自己が正当に評価されていないことから社会に不満を抱き、社会の構成員を殺害しようとするもの」や「特定の者に対する恨みや怒りを晴らすため、その者とは無関係の者に対して八つ当たり的に無差別殺傷におよぶの」が、61.5％を占めた。
犯行を決意した時期については、実に61.5％が犯行当日に犯行決意が芽生えるなど、犯行の1週間以内から犯行当日までに決意した者は96.1％に達しており、計画性に乏しいまま、発作的に犯行に及んでいることが浮き彫りになった。
犯人が犯行前に抱えていた不満や閉塞感については「誰からも相手にされない、必要とされないという疎外感」「失職したことを契機とする将来への不安」「努力しても何も報われないという諦め」「職場いじめを受けたと感じてのストレスや怒りのため込み」「自分だけがみじめな思いをしてきたのに周りがぬくぬく生きているという被害感や怒り」など。その特徴は、生活に対する前向きの希望や意欲を失ってしまっていること、さらに、ものの見方や考え方が極端な方向に偏り、視野の狭い思い込みにとらわれてしまっていることであるという。
犯行前の問題行動については、自殺企図が44.2％、引きこもり23.1％など。自殺については、自殺に失敗し、死ぬことが怖くなったことなどにより、その後の自殺企図は諦め、もんもんとする焦燥感やいら立ちの中で他者攻撃の着想に転じたり、自殺用に用意した凶器をそのまま他者攻撃に転用して無差別殺傷事件に及ぶなど、自殺から他者攻撃への変容が生じているケースが目立つという。
なお、同報告書では、社会全体の対策として、国民全てが意欲と能力に応じ労働市場や様々な社会活動に参加できる社会（「出番」と「居場所」）の実現や、自殺対策の充実などを挙げているが、今、必要なのはそういう政治ではないだろうか。（佐々木奎一）
