K-Net社労士受験ゼミ 合格ナビゲーション

社会保険労務士試験の合格を目指す方を応援するページ

講師 黒川が語る「健康保険組合連合会」

2010-04-06 04:11:21 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る「健康保険組合連合会」



健康保険の保険者とは、被保険者から保険料を徴収し、被保険者・その家族等
である被扶養者に保険給付を行う、すなわち健康保険を運営する主体です。
簡単に言えば、被保険者や事業主が保険料を出し合い、被保険者・被扶養者が
療養等を受けたことにより要した費用を賄うという制度を運営する団体です。

皆さんお手持ちの「被保険者証」はどちらから発行されたものでしょうか?
「全国健康保険協会」「健康保険組合」市区町村が運営する「国民健康保険」
「国家公務員共済組合」「地方公務員共済組合」「私立学校振興・共済事業団」
「国民健康保険組合」等があると思いますが、それぞれの団体がそれぞれ
(所属の)被保険者等を対象に保険制度の運営を行っています。

その中の一つ、「健康保険組合」は主に各企業や団体によって設立されており、
全国で1484組合(平成21年7月時点)、加入者数はおおよそ3000万人で、
国民の4分の1が健康保険組合の被保険者・被扶養者であることとなります。

これらの健康保険組合によって設立されたのが「健康保険組合連合会」です。
条文上、「健康保険組合は、共同してその目的を達成するために」設立する
ことができるとされています(実際には昭和18年に設立されています)。

たとえば、多くの健康保険組合が財政難に陥っていることを踏まえ、医療費の
抑制を国に働きかける等の活動を行っています。

また、試験対策上はこちらの方が重要ですが、医療費の増大、前期高齢者納付金
等の負担増により財政状況の悪化している健康保険組合に対して交付金を交付し、
互助によって健康保険組合制度自体を維持しくことを目的とした事業も行って
います。

その資金として、各健康保険組合は被保険者より「調整保険料」を徴収し
拠出金として健康保険組合連合会に対して納めます。
(ちなみに、被保険者一人当たりの負担は、通常の連合会の運営費に当てるため
に納める「会費」が年間あたり約100円に対し、「拠出金」は同じく約6700円
となっています)

健康保険組合連合会が行う交付金の事業や調整保険料については、
社労士試験での出題実績がありますから、基本的な知識は必要です。

そのほか、健康保険組合連合会に興味があるようであれば↓を。
                         http://www.kenporen.com/


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「労働法関係の沿革」

2009-06-17 05:54:07 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る「労働法関係の沿革」


(1)労働基準法

憲法の
「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを
定める」(27条)の規定を受けて1947年(昭和22年)に制定されました。
その後、1987年(昭和62年)改正で週40時間労働時間制の導入、変形労働
時間制の拡大(従来は4週間単位のみで対象は限定的であった)が図られました
(なお戦前には明治44年の工場法により、文字通り工場が対象でしたが女子・
年少者の就業制限、最長労働時間の法定等が定められた経緯があります)。


(2)労働安全衛生法

従来、労働基準法の一節(「安全及び衛生」の章)として規定されていまし
たが、高度成長に伴う労働災害の増加を受け、1972年(昭和47年)に
同章を抜本的に充実させるべく独立した法律として制定されました。


(3)労働者災害補償保険法

労働基準法と同じく1947年(昭和22年)に制定されました。
またILO(国際労働機関)勧告を受けて1973年(昭和48年)に「通勤
災害」が保険給付に加えられました。


(4)雇用保険法

1947年(昭和22年)に制定された失業保険により、失業者への失業保険金
の支給体制が作られました(同時に職業安定法も制定され、戦後混乱期の
失業対策と雇用の安定が講じられました)。その後、1974年(昭和49年)に
失業保険法の失業給付の体系を大幅に組み替える等した「雇用保険法」が制定
されました(正式には基本手当であるところ現在も俗に「失業保険」と言わ
れるのはその所以なのですね)。
この際、雇用(改善)三事業がスタートしました。
なお、2007年(平成19年)の改正によりうち雇用福祉事業が廃止され二事業
となりました。


(5)労働者派遣法

かつて労働供給業者から労働者の供給を受けることは雇用責任・使用者責任が
不十分であるとして禁止されていましたが実際のところ類似の形態が見られた
ことから、1985年(昭和60年)に一定の規制を施すと同時に労働者派遣業者
から労働者派遣を受けることを適法とした「労働者派遣法」が制定されました。
1999年(平成11年)の改正で派遣対象業務を原則自由化する等、派遣(可能)
業種が拡大されるとともに、平成16年(2004年)には紹介予定派遣についても
法制化されました。


(6)男女雇用機会均等法

前身の勤労婦人福祉法が昭和47年(1974年)に制定されましたが、
国際連合の「女子差別撤廃条約」の批准を受け昭和60年(1985年)、同法の
改正法として制定されました。
当初は専ら女性労働者のために片面的に差別の規制と就業の援助をはかる
法律として、また各規定は「…努めるものとする」とする努力規定とされて
いました。

その後、平成9年(1997年)に、同法の正式名称が「雇用の分野における男女
の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(従来は「…待遇の確保等女子
労働者の福祉の増進に関する法律」とされていました)と改められ、同時に、
募集、採用、配置、昇進による差別を禁止規定とする、女性の機会拡大のため
のポジティブ・アクションを適法とする等の改正が行われました。

平成19年(2007年)には、男性へのセクハラの禁止も含む男性に対する差別
も対象となりました。また同法違反にかかる企業名の公表となる対象事由も拡大
されました。


労働者派遣法、雇用機会均等法以外については社会保険法に比べて「制定の
経緯」が出題される可能性は低いものと思われますが、情報として蓄積頂ければ
と思います。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「社会保障制度沿革」

2009-05-19 05:59:57 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る「社会保障制度沿革」



(1)健康保険

ドイツのビスマルクの社会保障制度を倣って1927年(昭和2年)に健康
保険法、また農村を救済する目的で1938年(昭和13年)に国民健康保険法
(旧法)が制定されました。

戦後、高度成長期となりましたが依然、自営業者や農林漁業者や零細企業
従業員等、約3000万人が医療保険の適用を受けない無保険者でした。そこで
新たな国民健康保険法に基づき1961年(昭和36年)4月、各市町村単位での
国民健康保険制度がスタートしました。

これにより全国民が政府管掌健康保険、健康保険組合、共済組合、国民健康
保険のいずれかに加入する「国民皆保険」体制が実現しました。

その後、高齢者医療の無料化を実現したものの高齢者医療費の増大が財政を
圧迫してきたことから1982年(昭和57年)に老人保健法(現在の「高齢者の
医療の確保に関する法律」)による「老人保健制度」を導入、各保険制度が拠出
金を出し支え合う体制が始まりました。

2000年(平成12年)には介護保険法による「介護保険制度」が新たに始まり
ました。

2008年(平成20年)10月にはご承知のとおり、「政府管掌健康保険」が全国
健康保険協会に承継されました(「協会けんぽ」の開始)。


(2)国民年金

憲法25条第2項で定められている「国は、すべての生活部面について、社会
福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」の規定を
具体的に実現する制度として1961年(昭和36年)4月に施行されました。

これにより被用者については厚生年金、共済組合、これまで自営業者や農林漁業
者等、厚生年金等の被用者年金に加入していなかった者については「国民年金」の
いずれかに加入する「国民皆年金」体制が一応完成しました。

その後、1986年(昭和61年)4月より20歳以上60歳未満の日本に住む
すべての人を強制加入とする制度となり(学生の強制加入は1991年から)、
現在の「2階建て」制度至っています。


(3)厚生年金保険

1941年(昭和16年)に労働者を対象とした年金保険制度(労働者年金保険法)
を創設、その後、事務職員や女子にも対象を拡大する形で1944年(昭和19年)、
厚生年金保険法が制定されました。

前記(2)の健康保険と合わせて戦前に社会保障制度が既に構築されていたの
です(もっとも厚生年金は政府の戦費集めの一環とも言われていますが…)。

とはいえ、「国民皆年金」の実現については前記(2)のとおりです。

その後、平成に入り高齢化に伴う財政の圧迫から、平成6年、12年にそれぞれ
改正が行われ、定額部分の支給年齢の段階的引き上げ(60歳→65歳)、報酬比例
部分の支給年齢の段階的引き上げ(同)がなされました。

平成19年4月からは70歳以上の在職老齢年金、離婚分割請求の開始等の改正
が行われています。


制度の沿革については、ときどき出題されますが、完全な知識問題となります。
初見の細かい沿革が出た場合、把握している内容を手がかりに解答を導き出せる様、
最低限の内容だけは知っておきたいものです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「寄宿舎」

2009-04-23 05:48:17 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る「寄宿舎」


今回は出題実績は少ないですが、「労働基準法」より「寄宿舎」の項目を
振り返ってみたいと思います。

同法ではれっきとした一つの章として項目立てされています。

高度成長期時代、集団就職者を事業場内の寄宿舎に住まわせていた例がよく見ら
れました。
現在でも大規模な工事現場に隣接して仮設式の宿舎があるかと思います。

事業場内、職住隣接となれば、やはり使用者側も支配がしがちになります
(更に不当な労働を強いた例としては明治時代の「女工哀史」等が有名ですね)。

労働者を不当な支配・拘束から守るべく、定められています。


第94条「寄宿舎生活の自治」

第1項:使用者は、「事業の附属寄宿舎」に寄宿する労働者の「私生活の
    自由を侵してはならない」。

→寄宿舎とは、状態として相当人数の労働者が宿泊し共同生活の実態を
 備えるものです。

→アパート式の社宅は福利厚生施設とされており、「寄宿舎」には含まれ
 ないとされています。

→労働関係とは別個の私生活である以上、使用者が干渉することは認めら
 れないとされています。


第2項:使用者は、寮長、室長その他寄宿生活の自治に必要な役員の選任
    に干渉してはならない。


第95条「寄宿舎生活の秩序」

第1項:事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、次の事項に
    ついて「寄宿舎規則」を作成し、行政官庁に届け出なければ
    ならない。
    1)起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
    2)行事に関する事項
    3)食事に関する事項
    4)安全及び衛生に関する事項
    5)建設物及び設備の管理に関する事項

→万一、労働者が設備を破損させた場合(部屋代・寝具の損料等)に、労働者側
 に負担させるのであれば、就業規則中に規定にしなければならないとされて
 います。


第2項:使用者は、前記の1)から4)の作成又は変更については、寄宿舎に
   寄宿する労働者の「過半数を代表する者」の「同意」を得なければ
   ならない。

→作成後に寄宿する労働者の過半数が入れ替わったとしても、新たに同意
 を得る必要はありません。


第3項:使用者は、「寄宿舎規則」の届出をなすについて、第2項の同意
    を証明する書面を添付しなければならない

→この流れはおおよそ就業規則の作成・届出と同じですね。


また
第106条2項:使用者は、「寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則」を、
      寄宿舎の見やすい場所に「掲示」し、又は「備え付ける」等
      の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなけれ
      ばならない。
とされています。



第96条「寄宿舎の設備及び安全衛生」

使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保湿、防湿、
清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀
及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。

→具体的には「事業附属寄宿舎規程」により寝室や食堂などの基準、
 更に「建設業附属寄宿舎規程」では寄宿舎自体の設置場所の基準
 (工事現場付近に設置されることが多いため)等が定められています。



第96条の2「監督上の行政措置」

使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、省令で定める危険な
事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しよう
とする場合においては、法96条の規定に基づいて発する省令で定める危害
防止等に関する基準に従い定めた計画を、「工事着手14日前まで」に、
行政官庁に「届け出なければならない」。



第96条の3

労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた
基準に反する場合においては、行政官庁は、使用者に対して、その全部
又は一部の「使用の停止、変更」その他必要な事項を「命ずることがで
きる」。

→行政側に使用停止命令まで含めた監督権限が与えられています。



短い項目ですので、ざっとほぼ全条見てみました。
マイナーな項目ですが知識として片隅に入れていただければと思います。

余談ですが学生時代、アルバイトで行った大手パン工場の敷地内に「女子
宿舎」があり、正直、平成の時代ではあるものの現実を知った記憶があり
ます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「保険料」

2008-02-10 07:57:57 | 講師 黒川が語る
社会保険労務士の「社会保険」とはどのような意味でしょうか?
勤労者が病気・失業・老齢などで生活困難に陥りそうな場合、その生活を保障
するために設けられた保険制度で、費用は政府・事業主・勤労者の三者が負担
するもの、とされています。
今回は「労働保険」も含め、この費用の部分の「保険料」の負担について
取り上げてみたいと思います。


まず、「健康保険」ですが、被保険者及び被保険者を使用する事業主でそれぞれ
保険料額の2分の1を負担します。
一方で保険料の納付義務は、事業主にあります。
ただし、加入期間等一定の要件を満たした者が(主に退職等により)被保険者
資格を喪失した場合に希望をすれば引き続き加入していた健康保険制度の被保険者
となることのできる「任意継続被保険者」という制度がありますが、この場合は
あくまで被保険者側の希望による加入であることから、全て任意継続被保険者の
負担となり、その納付義務を負います。
保険料額は、各被保険者の標準報酬月額(報酬に応じて5.8万円~121万円まで
47等級の額が設定されている)と標準賞与額にそれぞれ一般保険料率(政府管掌
保険であれば1000分の82、健康保険組合であれば1000分の30~1000分の100
の範囲)を乗じた額となります。
ただし、40歳以上65歳未満の医療保険加入者は介護保険第2号被保険者となる
ことから、介護保険料率(1000分の12.3)が加わります。


次に「厚生年金保険」ですが、健康保険と同じく被保険者及び被保険者を使用する
事業主でそれぞれ保険料額の2分の1を負担します。これも同じく、保険料の納付
義務は事業主にあります(第四種被保険者等を除いて)。保険料額は健康保険と
同じく標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率(平成19年9月~20年8月までは
1000分の149.96。平成29年8月まで毎年引き上げられ、最終的には1000分の
183となる予定)を乗じた額となります。
なお、標準報酬月額の各等級区分は健康保険と同じであるものの、1級9.8万円
から30級62万円までの間での設定となっています。実務上は、所管が同じく
社会保険庁であり標準報酬月額も一部共通であることから、両者の資格の得喪・
標準報酬月額の変更等の届出は同一の届出で済む仕組みとなっています。


続いて「労働保険」も見てみましょう。「労災保険」「雇用保険」の保険料に係る
条項は「労働保険料徴収法」に規定されています(各科目のテキストを開いても
載ってない訳ですね)。

まず「労災保険」ですが、保険料は全て事業主が負担します。
労働基準法75条で労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合において
使用者は療養の費用を負担しなければならない、と規定されているのですが、
この負担に備えて発足したのが「労災保険」制度だからなのです。
保険料の額については使用する全ての労働者に支払う賃金の総額に「保険料率」を
乗じた額となります。
この率は労災発生頻度に応じて業種毎に異なった設定がなされており、
例えば一般の事務オフィス(その他の各種事業)では最低の1000の4.5、水力発電
施設・ずい道等新設事業では最高の1000の118とされています。
なお、各事業の保険料率には通勤災害の発生率・二次健康診断等給付の費用として、
1000分の0.8の「非業務災害率」が一律含まれています。


一方、「雇用保険」の一般保険料にかかる保険料については、一般の事業、農林
水産業・清酒製造業、建設の事業によって3種類の率が定められています(一般
の事業は1000分の15、農林水産業・清酒製造業は1000分の17、建設の事業は
1000分の18)。
この中には、雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)に係る率(事業に
よって1000分の3又は1000分の4)が含まれています。
使用者は使用する全ての労働者に支払う賃金の総額に「一般保険料に係る率
(失業等給付に係る率)」を乗じた額の2分の1及び「雇用保険二事業率」を乗じた
ものの合計を負担することになります。
これに対し、被保険者は「一般保険料に係る率(失業等給付に係る率)」を乗じた額
の2分の1のみとなります(雇用保険二事業率に関する分は負担しません)。

各項目ともごく基本的な内容ですが、横並びにしてみるとどうだったっけ?と
不安になる方も多いはずです(私もその一人でした)。
ある程度学習が進みましたら、同じ項目については他の科目のそれと見比べる
機会をぜひ作って理解を深めるようにしてみて下さいね。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「女性労働者の保護」

2008-02-03 06:36:17 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る「女性労働者の保護」


前回と同じく「労働基準法」から、今回は「女性労働者の保護」を取り上げて
みたいと思います。より具体的な場面での性別による差別を禁ずるルールは
「労働に関する一般常識」科目の範囲である「男女雇用機会均等法」の内容と
なりますが、ここでは労働基準法で定めているルールについて紹介していきます。

大きな流れとして、かつては女性のみを対象とした制限(たとえば休日・
深夜労働等)が多く見られましたが、女性の社会進出を促進する点から男女
雇用機会均等法の趣旨に沿うよう必要な範囲で制限を撤廃してきました。

平成19年の改正では、坑内業務の就業制限についても大幅に緩和されました。

ただ、女性労働者の身体的な特徴(母性)については無視することができない
ことから、この点については引き続き制限を続けることで母性の保護を図って
いこうとしています。
まずこの点について


1 危険有害分野における女性の保護

母体保護の点から、坑内では妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事
しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性については坑内で
行われるすべての業務について、またこれに該当しない女性については
人力により行われる掘削の業務、発破による鉱物等の掘削等の業務について
の就業が禁止されています。
また、妊娠中及び出産後1年を経過しない女性については、重量物を取り扱う
業務や有害ガスを発散させる場所での業務なども、させてはならないものと
されています。


2 産前産後の休業

出産予定日の6週間(双子以上の多胎妊娠の場合は14週間)前より「本人が
休業を求めた場合」、使用者は休業させなければなりません。
産後については、出産日後8週間を経過しない期間において、(本人の希望の
有無を問わず)休業させなければなりません。ただし、6週間を経過後本人が
希望した場合かつ医師が認めた場合に限り、休業させなくてもよいとされて
います。


3 妊娠中、産後1年を経過しない女性の保護

実際には出産後、半年~1年程度、その会社の定めた育児休業を取る例が見られ
ますが、取得前及びその休業後に職場へ復帰しているケースでの場面です。
・同女性から請求があった場合、その職場が1箇月単位等の変形労働時間制を
採用していたとしても、1週間当たり40時間・1日当たり8時間の法定労働
時間を超えて労働をさせてはいけません。非常時等で臨時に必要があった場合
や36協定を結んでいたとしても時間外・休日労働をさせてはいけません。
・同じく本人から要望があった場合、深夜業もさせてはなりません。

なお、妊娠中、産後1年を経過しない女性が支店長等のポストに就く管理監督者
である場合ですが、管理監督的地位に立つ者は労働時間・休日に関する種々の
制限が適用されませんでしたが、深夜業の制限は対象となっていましたね
(不安な方は「労働時間等の適用除外」のところで確認して下さい)。
つまり、これに該当する女性が管理監督者でかつ請求をした場合、深夜業を
させてはいけないということになります。


4 生後1年未満の子を育てる女性の保護

本人から請求のあった場合、休憩時間に加えて1日2回各30分以上、育児の
ための時間を与えなければなりません。労働時間中に取り体力の回復に努める
「休憩」とは異なる性質のものであることから、勤務時間の始め・終わりでの
設定も認められ、また例えば2回まとめて1時間という設定も認められるもの
とされています。


特に3については、時間外労働・変形労働時間制度等の制度も合わせて確認を
してみて下さい。
種々の事情によるものと思われますが、現実には育児を理由に退社する女性の
方がまだまだ見受けられます。育児と仕事を両立できる環境・風潮を作って
いけないか、社労士として担うべき大きな問題ではないかと感じています。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る 「労働基準法・賃金」

2008-01-05 08:40:02 | 講師 黒川が語る
労働基準法では、労働者が労働するに当たって関わる様々な事項、労働時間、
休日、賃金、労働契約等についての(最低ラインの)条件を定めています。
その中から、今回は皆さんにとっても最も関心が深い事項の(はずの)「賃金」
について取り上げてみたいと思います。

人はなぜ働くかといえば、生活費(賃金)を得るためですね。その賃金が確実
に労働者の手元に届くように(支払われるように)、労働基準法では5つの原則
を定めています(賃金支払い5原則)。


1「通貨払いの原則」 

現物支給だと換金の手間が、小切手によると不渡りにより支払いを受けられなく
なる可能性があるからです。


2「直接払いの原則」 

最近は少なくなりましたが、ブローカーによるピンはねを防ぎ直接労働者本人に
支払われるようにするためです。


3「全額払いの原則」 

当然ながら、働いた分(労働の対価)は全て払わなければなりません。


4「月1回以上払いの原則」 5「一定期日払いの原則」 

4は支払期日の間隔が長過ぎることによって労働者の生活が不利にならないよう
にするためです。
また、5は毎月第4金曜日支払いという取り決めも認められません。
例えば、2008年の1月の第4金曜日は25日、2月はその28日後の22日、3月は
その35日後の28日と1週間近く間隔が開いてしまい、一定しないからですね。



さて、賃金の支払いに関して使用者が守るべき5つの原則を見てきましたが、
使用者側の都合も踏まえていくつかの例外的な取り扱いが認められています。


1では「労働協約」で定めた場合、通勤定期券の現物支給等が認めら、
省令で認められていてかつ労働者本人の同意も得られれば、賃金の銀行口座への
振込み等も認められています(賃金の支払いに銀行口座が使われるのが一般的
ですが、通貨で払っていないことには間違いないですからね…)


2では、使者に対して支払うことは可能とされています。
最近は余り見られなくなりましたが、給与袋で手渡しをしていた時代、
労働者本人が入院等していた際に代わりに奥さんが受け取りに来た、
なんていう場合は認められていました。


3では、法令で認められている場合は、いわゆる天引きが可能です。
所得税の源泉徴収、健康保険や厚生年金等の社会保険料の賃金からの控除等。
本来は一旦、労働者が受け取った上でこれらを払うのが筋ですが、
受け取った側の便宜も踏まえてます。


なお、4に関連して最近、年俸制を導入する会社が増えていますが、「月1回
以上払いの原則」が適用されるため、この賃金形態をとったとしても、毎月
1回以上支払わなければなりません。


その他、細かい例外等はまだまだありますが、それらも含めご自身の受け取られ
ている状況とこれらのルールを照らし合わせてみて頂ければより理解が深まる
ことと思います。

もし支払額にミスがあればしっかりと主張しましょう。
会社はあなたが仕事をした分について「全額支払う義務」があるのですから!
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「労働関係調整法」

2007-10-26 06:20:43 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る

今回は「労働に関する一般常識」にて出題範囲とされている「労働関係調整法」
について取り上げてみたいと思います。
学習はまだ先になると思いますが、決して複雑な知識ではないのでこの際、
大枠を掴んで頂ければと思います。

さて「労働関係調整法」とは、労働関係の当事者間(会社側vs労働者側という
イメージ)において争議行為が発生・発生するおそれのある際に、その解決の
道筋を定めた法律です。
労働者には3つの権利、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」(と公民で
習ったのを覚えていますか?)が憲法上認められていますが、「争議行為」は
そのうちの「団体行動権」として、団体交渉が決裂した・成立しない際に再び
交渉のテーブルに着かせるために認められています。

ところでその「争議行為」、ストライキのイメージが強いのですが、使用者側から
の対抗手段としてロックアウト(事業所からの締め出し)をすること等も認め
られています。争議行為の目的はあくまで両者歩みよって交渉を再開させる
こと(妥結すること)なので、使用者側からもパンチが加えられるのです。

さて、労働者の権利として自由に争議行為に及ぶことができるはずなの
ですが、市民生活に影響を与える公共事業の場合は少なくとも10日前までに
労働委員会と厚生労働大臣・都道府県知事のいずれかに争議行為を行う旨、
通知せよとされています。なお、それ以外の事業の場合は、争議行為発生後、
直ちに通知することとされています。

実は先日、勤務先の会社宛に中央労働委員会(労働委員会の上部組織。詳しくは
労働組合法で)より労働組合側より10日後に争議行為を行う通知があった、
との連絡が入り大騒ぎになりました(勤務先は創業以来、ストは未経験です。
なお、結果的に組合側より一方的に回避してきたのですが…)。

また争議行為が長期化する等して当事者間での解決が困難な場合、労働関係
調整法では1)斡旋、2)調停、3)仲裁の3つの調整手段を用意しています。

1)「斡旋」(あっせん)は労働委員会より指名を受けた斡旋員が双方に対し
 「斡旋案」を提示し解決を促します。
2)「仲裁」はその争議に対して設けられた労働者・使用者・公益の代表者から
 なる「調停委員会」が「調停案」を双方に提示します。この「調停案」の受諾は
 自由とされています。
3)「仲裁」は主に公益の代表者からなる「仲裁委員会」が「仲裁案」を作成、
 (調停案とは異なり)双方はこれに従わなければならなくなります(裁判の判決
 のように、一定の遵守義務が生じます)。

収益を上げたい使用者側と(収益によって)労働条件をよりよいものにしたい
労働者側、その主張の隔たりは「水と油」とベテランの先生が言っていましたが、
そこをいかに歩み寄った労務管理制度を構築できるのかが社労士の腕の見せ所だとも。

来夏の合格を経ていち早く飛び出しましょう。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「勉強方法について」

2007-09-29 07:38:36 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る「勉強方法について」 

本年度も引き続きメールマガジンの原稿を担当することとなりました黒川と
申します。どうぞ宜しくお願い致します。

私は2回目の受験で平成15年に合格、その後何を思ったか予備校や大学の公務員
試験講座の講師となり労働法をはじめとした法律科目を担当し、
現在、とある航空会社で企業法務等の業務に従事しております。
直接的に実務に携わってきたわけではありませんが、振り返れば資格を持って
いたことで転職その他の場面で導きにめぐり会えたと思っております。


さて、皆さんは今回新たな、若しくは残念ながら再度の挑戦を始められたこと
と思います。挑戦にあたりぜひ「知略で征する」ことを頭の片隅に置いて頂き
たいと思います。

この試験は真剣に学習に取り組めば誰もがある程度まで達することのできる試験
です。ただ各科目満遍ない得点が不可欠であるため、僅か1、2点で涙を飲む人が
後を絶ちません(偏りのない知識を合格要件とする趣旨は納得できるのですが、
かく言う私も1点に1年を棒に振ったわけです)。
ただ、振り返ればやはりその1年間、反省点もあるわけです。日々の勉強方法も
然り。直前期に余裕を持って合格ラインを超えていれば、というのも事実です。


(1)1順目は予備校の講義、独学の方はテキストに沿ってまずは大枠を掴むことです。

最初に取り組み始めた労働科目に日数を割いてしまいそれなりの時間を要する厚生
年金保険法等社会保険科目がおろそか、という方がよく見受けられます。
初見の科目では目先の事項で精一杯だとは思いますが、まずはその科目も大筋を
掴もうというつもりで臨んで下さい。勿論、労働基準法でいえば労働者、労災保険
の通勤災害の定義等の「基本事項」、健康保険法でいえば傷病手当金の計算式等の
「基本公式」はしっかりと覚えなければなりませんが、発展的な知識は1順目で
完全に理解できなくとも結構だと思います。

残念ながら1順だけで合格できる試験ではありません(学校の中間・期末試験も
何度も読み直しませんでしたか?)。試験までに何度も復習することと思いますが、
その過程で完全に理解できればよいわけです。先は長いですから多少は割切り前へ
と進みましょう。

(2)1科目最低3順は必要です。

理解度の完成は人それぞれとは思いますが、1科目につき最低3順は必要だと
思います。そのつもりで今後1年の計を案じて頂きたいと思います。
ではどのように復習していくかですが、ここでいう1順目とは
テキストの通読(予備校講座を利用されている方は講義後の復習)+その科目の
過去問の練習
としたいと思います。

上記(1)のとおり、科目全体の流れを掴むこと、基本事項の習得が1順目の
目標ですから、「過去問」による問題演習も基礎的な問題のみで構わないと
思います。

2順目は「過去問」を発展レベルにまで広げて解き、分からない箇所があれば
テキストに立ち返る。この繰り返しで1周を図ります。1順目の際もそうですが、
間違った問題には誤答したと分かるように印を付けて。3順目以降(2順目も
そうですが)は間違った問題のみを解答すればよいわけです。
確かに各順の度に掲載されている全問題を解く方がおられますが、自信ある問題に
ついては既に十分理解されている筈。胸を張って、不安であれば多少の見直しに留め、
先を急ぐべきです。

(3)一つのテキスト・問題集と運命を共に。

学習意欲に富む方に多く見られるのですが、多くの教材よりより多くの知識を
吸収されるという傾向があります。ただこの試験は各科目とも万遍ない得点が
求められ、各科目とも正確に理解された基本事項が得点の土台となります。
まずは一つのテキスト・(過去)問題集を徹底的に使いこなし基本事項を習得する方
が効果的と言えます。
私は試験当日、会場へは1年間使い続けたテキストを持ち込んで最後の見直しを
しました。何度も誤った箇所に付けた付箋でビラビラでした。

以上の点は戦略の1例に過ぎませんが、我武者羅に走りつつも時には現在の取り組み
方法を振り返り、時には軌道修正しながら「努力+知略」で来夏の試験をぜひ征して
頂きたいと思います。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る 「最直前期の過ごし方」

2007-08-18 06:34:43 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る 「最直前期の過ごし方」

いよいよ本試験間近となって来ましたね。
今回は私の受験経験・受験指導を通じて実践してきた項目をいくつかお伝えしたいと
思います。

(1) テキストの不安な箇所に付箋を張る、確認したところから外していく

 やりすぎてビラビラだらけになってしまいましたが(笑)、二度とその箇所は見ない
つもりで最後の確認をしました。

(2)紙1枚に各日の確認すべき項目を書く。見直したところから消していく

 普段、何度学習計画を立てても計画倒れに終わっていた私でしたが、これを守れ
なければ受からない、というつもりで立てました。また守れる範囲、最小限の項目に
絞りました。前日、前々日は空白として予備日に当てるとよいでしょう。

(3)保険料の計算問題は基本的な公式、解き方の確認のみとする

 出来ないと気になるところではありますが、最直前期に難解だと感じている計算問題
は残念ながら本試験でも正解を得るのは難しいでしょう。これは多くの人にとっても
同じことです。
 下手に克服しようと労力と時間を費やすよりも、基本事項を一つでも多く確認する
作業に重きを置く方が得策と思われます。

(4)ある程度、割り切って臨む

 よく言われることですが、資格試験に挑戦すること自体、一種の賭けだと思います。
当時はそう言われると反感を覚えたものですが、年数が経つにつれてつとにそう感じ
ます。
 賭けといえば運と度胸、強気で攻めることが必要だと思います。
 今まで基本箇所を忠実に押えてきたわけですから、ある程度の細かい・難解な箇所
は割り切って臨む攻めの心構えも時には必要かと思います。

(5)直前期の伸びを信じましょう

 たかが10数日であっても、かなりの伸びが期待できる時期でもあります。
なぜ早めに学習を進めておかなかったのか…と後悔をさせられつつも、切迫感・
研ぎ澄まされた集中力が実力を向上させるのだと思います。
 かくいう私も最直前模試では合格ラインにも達していませんでしたが、試験数日前
にこれは行けると手ごたえを掴めた感触を覚えております。

(6)迷った選択肢への対応策を決めておくこと

 本試験当日の場面ですが、変えて後悔・変えずに後悔、双方とも聞かれます。
初見の直感(ファーストインプレッション)は意外と当たるのも事実です。
 ご自身の中で「絶対変えない、(逆に)最後の最後まで検討する、余程の自信が
ない限り変えない」等、予めルールを作って臨むことが望ましいと思います。

 最後に体調管理ですが、本試験当日、夏風邪を押して気力で受験をした私でした。
気を付けているつもりでも崩れてしまうものですね。ご注意を。

どうか悔いのない受験ができること、午前午後ともこれまでの学習の成果が存分に
出せることを願ってやみません。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「不服申立て」

2007-07-31 07:38:25 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る

今回は各保険制度で設けられている「不服申立て」の制度について見比べて
みたいと思います。
お手元の各科目テキストの巻末のほうに掲載されている事項ですね。

1「健康保険法」「厚生年金保険法」

「被保険者の資格」、「標準報酬」、「保険給付」の決定に関する処分に
不服がある場合、「社会保険審査官」(各地方社会保険事務局に在任)に
「審査請求」することができます。
同審査官はこれを受け請求内容を判断しますが、この決定に不服の場合、
又は審査請求後「60日以内」に審査官より決定がなされない場合、更に
「社会保険審査会」に「再審査請求」をすることも可能です。
 一方、「保険料」に関する処分(徴収金、督促・滞納処分等を含む)に
不服がある場合ついては、「社会保険審査会」に「審査請求」をすることと
されています。


2「国民年金法」

「被保険者の資格」、「給付」、に加え国民年金法では「保険料」に関する
処分について不服のある場合、「社会保険審査官」に「審査請求」をすること
ができます。1とは異なり、「保険料」に関しても同審査官に対して審査請求
をする点ですが、国民年金の保険料は健康保険・厚生年金保険と異なり額が
少額かつ原則、一律の額であり専門的な審査の必要性が少ないこと等が挙げ
られます。


3「労働者災害補償保険法」「雇用保険法」

「労災保険」:「保険給付」に関する決定に不服がある場合、「労働者災害補償
保険審査官」(各都道府県労働局に在任)に「審査請求」ができます。
「雇用保険」:「被保険者になった/でなくなったことの確認」、「失業等給付」
に関する処分(失業等給付の返還にかかる命令等を含む)に不服のある場合、
「雇用保険審査官」(各都道府県労働局に在任)に「審査請求」をすること
ができます。
いずれも各審査官は請求を受けて判断を決定しますが、これに不服の場合、又は
審査請求後「3箇月を経過」しても決定がない場合、「労働保険審査会」に再審査
請求をすることもできます。

両保険の「保険料の徴収」については「労働保険徴収法」の規定に従いますが
(うっかり見逃していませんか!)、「概算保険料・確定保険料の認定決定」の
処分に不服のある場合、「都道府県労働局歳入徴収官」へ「異議申立て」をする
ことができます。
同歳入徴収官の決定に不服の場合、「厚生労働大臣」へ審査請求をすることも
できます。


なお、一般に行政庁による違法・不当な処分に対しては、行政不服審査法に
より直接処分を下した行政庁に対し「異議申立て」を、更に不服の場合、
上級庁へ「審査請求」ができるものとされています。
ただし、社会・労働保険の給付等に関する問題は専門的かつ具体的な判断が
必要であることから、上記の労働保険料に関する決定を除き、「審査請求」
「再審査請求」制度を採用しています。


また本来、行政事件訴訟に訴えることも可能ですが、裁判所よりもこれらの機関
の方が格段に専門的知識を有し、かつ事前に解決できるケースも多いことから、
各保険審査会・厚生労働大臣の裁決・決定を経た後でなければ提起できないもの
とされています。


「不服申立て」制度は、よく「科目横断整理」と題して比較される事項では
ありますが、整理された表を見ただけでは中々頭に入り辛いものです。
表を見つつ、(余裕のある方は)今まで使ってきた各テキストを見比べて最終の
確認に努めて下さい。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「労働者派遣法」

2007-07-17 07:06:08 | 講師 黒川が語る
今回は少し前にドラマにもなり、またここ最近、雇用形態の選択肢の1つ
として定着している派遣労働者(派遣社員)について定めた「労働者派遣法」
について取り上げてみたいと思います。

 まず
(1)「労働者派遣事業の形態」についてですが、派遣社員として働く、
  と言うと派遣スタッフとして登録をし派遣先が決まった段階で派遣会社
  (派遣元事業主)とその派遣毎に労働契約を結ぶパターンがよく見られますね。
  この事業の形態を「一般労働者派遣事業」と呼びます。
  これに対し、予め派遣会社(派遣元事業主)の社員である者が派遣先に派遣される
  パターン、すなわち常時雇用している労働者のみを派遣する「特定労働者派遣
  事業」という形態もあります。

(2)「紹介予定派遣」という形態が平成15年の改正より認められるようになり
  ましたが、(1)の「一般・特定労働者派遣事業」いずれの場合でも、派遣期間
  (役務の提供)終了前に派遣先に雇用されることを前提としての派遣が認められる
  ようになりました。
  現実には派遣期間を通して雇用先・労働者側とも今後、継続して雇用しても
  よいか・労働に従事できるか見極めるいわばお試し期間とも言えますね。
  「職業紹介」の側面も有している点が最大のポイントです。

(3)「派遣労働者の受け入れが可能な業務」ですが、現在、多くの業務で可能と
  なっています。ただし、「港湾運送業務」「建設業務」「警備業務」等について
  は認められていません。
  これらの業務では、正規雇用者であってもその身分が不安定であることが多い
  という実情を抱え、また「警備業務」についてはその性質上、責任の所在が明確
  でなければならないから、という理由からです。

(4)「派遣事業を行う際の許可・届出」についてですが、「一般労働者派遣事業」
  については「許可」を受ける必要があり、最初の有効期間は3年、その後は5年毎
  に更新が可能です。これに対し「特定労働者派遣事業」の場合は派遣する労働者
  について通常の正規雇用の形態を採ることから、「届出」で足ります。

(5)「派遣労働者の送出・受入れ体制」ですが、派遣元事業主は「派遣元責任者」
  を、派遣先事業主は「派遣先責任者」を選任することとなっています。

(6)「派遣労働者の受け入れが可能な期間」(派遣可能期間)については、
  業務の種類によって異なります。ソフトウェア開発・電話オペレーター等
  (26種類あるので実務上、26業務と呼ばれています)は特に制限はありません
  (専門性がある業務であること、補助業務につき本業の派遣先の労働者の雇用を
  脅かさないといった理由が挙げられます)。
  その他の業務については、一定の場合を除き、制限がありますが、派遣先が
  過半数労働組合等の意見を聴いて受入れ期間を定めればその期間(ただし最長
  3年)、定めのない場合は1年となります。
  更に細かい点については、ご確認をお願いします。

現在、弱小航空会社で「何でも総務屋」をしておりますが、日々必ずといって
いい程、派遣会社さんから売り込み(派遣社員を使いませんか?)の電話が
掛かってきます。
ちなみに弊社では外国人機長が数十名在籍していますが、実は全員「派遣社員」
です。世の中、様々な派遣会社があるものです。
需要が増えているという実情を踏まえた「労働者派遣法」ですが、ポイントは
限られていますのでお手元のテキスト等で(そろそろ?)最後の知識の確認を
してみて下さい。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講師 黒川が語る「労働経済」

2007-05-19 07:36:43 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る

今回は労働保険に関する一般常識のうち「労働経済」について取り上げてみます。
ちなみに18年の本試験ではその殆どが「労働経済」から出題されるという状況
でした(勿論、本年度もこのパターンが踏襲されるとは限りませんが)。
「労働経済」ですが、ご存知の通り、多くの統計データ値を問う問題が多く
出題されます。
私もよく言われたことですが、「木を見て森を見ず」にならないこと、
詳細ではなく大きな動きを掴むことがポイントです。

政府(厚生労働省や総務省等)は企業と労働者に関する様々な統計調査を
実施しており、その中に「毎月勤労統計調査」といわれるものがあります。
その名の通り毎月実施されていますが、平成18年の1年を通しての平均値も
発表されていますので簡単に見てみたいと思います。

1 賃金

「現金給与額」(総額)ですが月平均で約33万5000円です。
17年に比べ0.3%増で大きく見ればよい傾向と言えそうです。
一方でその内訳を見ると、月給等「きまって支給される額」の部分は横ばいである
のに対し、残業手当等の「所定外給与」は2.6%増となりました。
リストラ等人員削減が進行した結果、残された人に業務のしわ寄せが来ている
可能性が伺えます。

2 労働時間

月あたりの平均労働時間(総時間)は平成17年に比べ0.3%増の150時間です。
労働時間設定改善法による「時短」の推進を受け「所定内労働時間」(予め定め
られている時間)は減少傾向にありますが、「所定外労働時間」は逆に1.1%増えて
います。確かに景気の回復で業務が増えている可能性もありますが、残業等が
増えていることも否めません。
なお、1年間の総労働時間(所定内・外を含む)は1811時間と平成17年の1802時間
よりまた増加に転じてしまいました。
今回も政府が目標としている年間1800時間の壁は破られず仕舞いです。

3 雇用

常用雇用は平成17年に比べ0.5%増と景気の回復基調が伺えます。
完全失業率も4.1%と17年よりも0.3ポイント下がり4年連続の減少です。
完全失業者も275万人と平成17年よりも19万人更に減少することができました。
こちらは喜ばしい傾向ですね。

その他についても本試験までに知りたいデータはまだまだありますので、お手元の
テキスト等で確認して見てください。
再度になりますが「森」を見て前後の大きな動向を掴むように心がけて下さいね。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国民健康保険

2007-04-19 06:46:20 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る 「国民健康保険」


今回は「社会保険に関する一般常識」の中から「国民健康保険」について確認
してみたいと思います。

皆さんの多くは自身がお勤めの方、又はその被扶養者である方が多いのでは
ないかと思います。したがって、おそらくお手元には「政府管掌健康保険」か
「健康保険組合」(以下健康保険とします)の保険証があるのではないでしょうか?
ということはこの「国民健康保険」とはお勤めではない方、すなわち自営業者
(開業社労士も含まれますよ)等が対象になります。

私も受験時代疑問に思っていたのですが、「国民」と何やら全国を網羅するような
名が付くにも関わらず保険者(保険を実施する主体)は市町村(国民健康保険
組合もあります)が行います。

まず「国民健康保険」への加入の手続きですが、被保険者の資格を取得したとき、
例えば会社等を辞めて自営業者等になった・退職被保険者となった等、健康保険
の被保険者でなくなったときはその翌日から14日以内に届出を行う必要があります。

また健康保険では被保険者に生計を維持されている者は被扶養者となりましたが、
「国民健康保険」の被保険者にはそのような概念はなく、配偶者であっても幼児
であっても皆「被保険者」となります。
資格の取得・喪失等の届出について、健康保険では各種届出は被保険者を通じて
行っていましたが、「国民健康保険」では各々が被保険者ではあるものの原則、
「世帯主」を通じて行います。ただよく考えてみれば実質、同じようなことになり
ますね(健康保険:父がサラリーマン、母が専業主婦の場合、父を通じて届出を
する。同じように国民健康保険:父が商店を経営、母がその手伝いをしている場合、
同じく父を通じて届出をする。という具合に同じようなモデルになるはずです)。

診察等の療養の給付を受ける場合の被保険者の負担割合ですが、かつては異なった
時期もあったものの、現在は健康保険・「国民健康保険」ともに10分の3(3歳に
達する月以前までは10分の2、70歳に達した月の翌月からは原則、10分の1)です。

「国民健康保険」を運営する上で不可欠な保険料は被保険者より徴収しますが、
「国民健康保険税」として被保険者に課する方式も可能です(殆どの市町村がこの
方式を採用しています。保険料に比べより強制徴収が可能となります)。
ただ退職者の医療保険の受け皿となっている以上、どの「国民健康保険」も財政が
厳しいのが現状です。そこで国は「療養給付費等負担金」「財政調整交付金」等の援助
を行い制度の維持に努めています。

「国民健康保険」はその多くの仕組みが健康保険と似ています。保険者に関わらず
なるべく国民は一律の医療保険サービスを受けられるべきである以上、
それは必然的なことかもしれませんね。
ただ「国民健康保険」特有の点もありますから、その点を中心に押さえて頂ければ
と思います。

実は私も昨年末までは国民健康保険の被保険者でした。
現在、健康保険組合の被保険者に戻っているのですが、戻る際(すなわち国民健康
保険を脱退する際)に健康保険証は返却したものの恥ずかしながら資格喪失届を
しないまま数ヶ月が経ってしまいました(ちなみに資格を喪失したら14日以内に
届出をしなければなりません)。

先日、通帳の記帳をすると毎月国保税が引き落とされており、ようやく気づきました。
近々、手続きに行く予定です・・・
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

厚生年金基金・企業年金連合会

2007-03-25 07:46:38 | 講師 黒川が語る
講師 黒川が語る  「厚生年金基金・企業年金連合会」


今回は厚生年金保険から厚生年金基金・企業年金連合会について取り上げて
みたいと思います。


 まず厚生年金基金とは国が本来やるべき老齢厚生年金等の支給を国に
代わって給付するための団体です。主に企業単位(若しくは業界団体単位)で
かつては2000近く設立されていました。国の本来の支給水準を上回る給付
を行うことが条件となっており、法律上「給付することができる」となって
いますが実際には障害・死亡にかかる年金・給付金も支給してきました。

 国の水準を上回る支給を義務づけられて企業には何の得が・・・と思われますが、
税制面の優遇や支給費用の余剰金を福利厚生費用に回すことが可能であったり
とそれなりのメリットがありました。

 ところで、例えば厚生年金基金が存在する会社に勤めていた人(同時に基金
の加入員でもあった人)が途中でその会社を退職した場合どうなるのでしょうか?
在職中、保険料を国に払うがごとく掛金を基金に払ってきた以上、基金としては
その人が老齢厚生年金の支給を受けられる年齢に差し掛かれば支給しなければ
ならなくなります。
例えば30歳で退職した人について、基金は30年後に居場所を突き止めて支給
しなければならない、というわけですね。
これは一基金にしてはかなりの重荷でしょう。

 そこで、途中で退職した人(すなわち基金を中途脱退した人)が在職中
(基金加入中)に支払った「掛金の総額」を移管し将来の支給時に支払い業務を
委ねることを目的として設立されたのが「企業年金連合会」です。

 連合会は社会保険庁(国側)とデータを相互にやり取りしていますので、
支給対象者の所在を常に把握することができます。また、解散した基金の元加入員
に対しては、解散時までに支払った掛金相当分の支給について、その業務を同じ
ように引き継ぎます。

 現実には多くの厚生年金基金の財政が苦しくなり、これまでに約半数が解散・
代行返上(国に代わって厚生年金の保険給付相当分を支給する業務を返上し、
純粋に義務分に上乗せ支給していた部分の業務のみに規模を縮小)の動きが加速
しました。

 企業年金連合会もかつては厚生年金基金連合会と言っていましたが、加入基金の
半数が上記のようになったことから、年金等を支給する各企業の団体を支援
する団体へと衣替えしました。

 実は私は受験の頃、臨時の身分ながら当時の厚生年金基金連合会に勤務して
いました。最近は「物言う株主」としても注目されていますが、民間ニーズに
根ざした特別法人の先頭を走ることを願うばかりです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする