邦画ブラボー

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「みだれ髪」

2008年07月05日 | ★愛!の映画
明治30年、東京。

喧嘩に巻き込み怪我をさせてしまった娘を背負い、病院に駆け込む男あり。
気丈に痛みをこらえながら男(勝新太郎)をかばう心優しい娘
山本富士子
冒頭ですでに人物設定が出来ているのがスゴイ。

奥から「台詞平ら読み?」がいい味出してる
若先生登場(川崎敬三)。
見るからにイイおとこの若先生と
娘夏子(山本)はは見事恋に落ちるが(美男美女カップル)
家柄の壁が二人の前に立ちはだかるのであった。

その間をちょろちょろするのが
勘違い純情男、愛吉(勝新太郎)である。

洋服と和服がまざっている。
西洋文化と和文化の混ざり具合が興味深い。
上流の家は洋風建築を取り入れるなど
文明は開化したようにみえるが
社会は旧態依然。
身分制度は根強く残っていた。

良家の子女を相手に自宅でドイツ語を教えている北林谷栄
その夫で茶道、華道を教える中村伸郎
セレブ夫婦」
材木屋の娘であるお夏をイジメる。

北林の上流階級の奥様然とした、気取った態度と
カッコつけたドイツ語は必見の面白さで
ビルマの竪琴の婆さんとは天と地の差がある。

襟元から刺繍半襟をたっぷり覗かせ、しかも衿あわせはきっちり。
細かい柄行の丸帯に
三分紐を斜めに締めた真ん中には小ぶりの宝石の帯留め。
このイヤミながらも洗練された着こなしはぜひとも真似したいと思った。

衣笠監督の画面は構図が美しい。
スリガラスの間から
除く人物の顔、障子の使い方、日本家屋の直線的な美が強調され
小物ひとつひとつまでもが美しい。
あられ、雪、花など自然界の美しさも取り入れられているが
それは作りこまれた美しさ、本物より美しいのではと思わせる
人工美の極致なのだ。

後半になっても見所は満載だ。

実家が火事で焼け、莫大な借金を背負った夏子は
待ってました!の温泉芸者姿となるが
その後ろには
「お嬢さん、お嬢さん」と、
忠犬のようについていく愛吉の姿があった。

女形出身の衣笠監督は
理想の女性像を山本に重ねていたのに相違ないと思う。
鏑木清方も頷く美しさではなかろうか。

夏子をものにしようと
近づく客(西村晃)と、
ヤキモチを焼く女房(角梨枝子)の痴話喧嘩も最高だ。
角は
女郎上がりの鉄火肌という役どころで、
大胆な縞の着物に青に白い模様が入った半襟。
すらりと立った姿は胸がすくようなイイ女っぷり。
「ちくしょう!」と、
上から西村をひっぱたくシーンでは
客席からも「オオ!」と喜び?の声があがっていた。

人物描写、このようにかなり分かりやすいです。

夏子に優しくするエキゾチックな美貌の芸者は
誰かと思ったら、お茶のCMでもお馴染み市田ひろみ先生(!)で、
時の流れを感じた。

愛吉は無知で馬鹿なヤツ丸出しで
体中から日本犬のような愛くるしさを漂わせている。
ラストには
「大馬鹿」が爆発するが、さすが千両役者で
愛らしい目から涙がこぼれ落ちるや
思わずもらい泣きしそうになる人100万人!
と、思う表現力であった。
あんな哀しい目、
胸がしめつけられるような目は他に見たことが無い。。

愛吉、可哀相だよ、愛吉!!!

山本も負けてはいない。
「白鷺」同様、ここでも目が釘付けになる迫真の演技を見せる。

最もテンションが高まったその時、
川崎敬三がしゃしゃり出た挙句、
コテコテの
僕たちは姿も心も美しい人を不幸にしてしまった!」という台詞を
まっ平らの抑揚で吐くので
泣いていいのか笑っていいのかわからない状況に!

かなり困惑したが、結果的に大満足の一本!

余談:山本富士子は見た目に似合わず軍鶏を可愛がっているという設定だが
夏子と軍鶏が絡んでいる映像が無かったのが不思議。

昭和61年

監督 衣笠貞之助
原作 泉鏡花
脚本 衣笠貞之助
撮影 渡辺公夫
音楽 斎藤一郎

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