「あの日、どんなことが待っているか知っていたら、
女も土工も私も天城を越えようなどとは思わなかっただろうに」
宇野重吉の回想から始まる「天城越え」は当時油が乗っていた
和田勉演出ドラマの中でも珠玉の作品といえる。
有名な田中裕子主演の映画もよいが、
こちらは殺される側の土工、娼婦、少年、三人のドラマがあぶりだされ、
交錯している点で映画をしのいでいるかも知れない。
映画では、慕っていた母親の情事を目撃したことも
(「影の車」的でもあった)
動機のひとつとして示唆されていた。
が、ここでは動機をはっきりとは書いていないがゆえに
胸が詰まるような深い余韻を残す。
和田勉のすごいところだ。
松本清張ご自身が現場を目撃しながらも去っていく遍路役で出演している。
めった刺しにされた土工(佐藤慶)が、
よろよろとトンネルから出、
そよぐ木々と晴れ渡った空を仰ぐ。
彼の頭には何がよぎったのか。
幼い頃、父親に殺されかけ、虚無の人生を歩んできた男は
清張:「鬼畜」の子供が大人になった姿でもあった。
大谷直子はまぶしいほどに色っぽいし
鶴見辰吾はこの作品が今まで見た中で一番すごい。
「もう二度と会うこともないだろうけど、
私みたいな女のことを本気で思ってくれたのは、
にいさんだけかもしれない。ありがとうよ」
その言葉を聞いた少年の顔が忘れられない。
柔和な表情の中で時折キラリと光る目が恐い元刑事、
中村翫右衛門VS表情だけですべて表現する(し得る)宇野重吉の
重厚なシニア戦もみものだ。
深緑の梢、清流のすがすがしさを映し出すカメラ。
「にいさん」と呼ぶ美しい声、白いうなじ。
トンネルの向こうには違う世界が待っているのだ。
1978年第33回芸術祭大賞受賞作品。
原作: 松本清張 脚本: 大野靖子 音楽: 林 光 演出: 和田 勉
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女も土工も私も天城を越えようなどとは思わなかっただろうに」
宇野重吉の回想から始まる「天城越え」は当時油が乗っていた
和田勉演出ドラマの中でも珠玉の作品といえる。
有名な田中裕子主演の映画もよいが、
こちらは殺される側の土工、娼婦、少年、三人のドラマがあぶりだされ、
交錯している点で映画をしのいでいるかも知れない。
映画では、慕っていた母親の情事を目撃したことも
(「影の車」的でもあった)
動機のひとつとして示唆されていた。
が、ここでは動機をはっきりとは書いていないがゆえに
胸が詰まるような深い余韻を残す。
和田勉のすごいところだ。
松本清張ご自身が現場を目撃しながらも去っていく遍路役で出演している。
めった刺しにされた土工(佐藤慶)が、
よろよろとトンネルから出、
そよぐ木々と晴れ渡った空を仰ぐ。
彼の頭には何がよぎったのか。
幼い頃、父親に殺されかけ、虚無の人生を歩んできた男は
清張:「鬼畜」の子供が大人になった姿でもあった。
大谷直子はまぶしいほどに色っぽいし
鶴見辰吾はこの作品が今まで見た中で一番すごい。
「もう二度と会うこともないだろうけど、
私みたいな女のことを本気で思ってくれたのは、
にいさんだけかもしれない。ありがとうよ」
その言葉を聞いた少年の顔が忘れられない。
柔和な表情の中で時折キラリと光る目が恐い元刑事、
中村翫右衛門VS表情だけですべて表現する(し得る)宇野重吉の
重厚なシニア戦もみものだ。
深緑の梢、清流のすがすがしさを映し出すカメラ。
「にいさん」と呼ぶ美しい声、白いうなじ。
トンネルの向こうには違う世界が待っているのだ。
1978年第33回芸術祭大賞受賞作品。
原作: 松本清張 脚本: 大野靖子 音楽: 林 光 演出: 和田 勉
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晴れて進学、新しい回線からロムしてます。
この作品、NHKアーカイヴスで観ました。
ロマンチシズムを排したゴツゴツした鑑賞後感は和田勉さんらしさ、なのでしょうか。
コメディ・ギャグの<ワダべンだぁ>しか知らないもので。(笑)
映画の方は、ラストの取って付けたような暴走族の描写さえなければ、大のお気に入り。
田中裕子さんの巫女的な演技に戦慄が走ります。
少年役の伊藤洋一さんは、TBS『江戸を斬る』の堅太郎ぼっちゃまですね。
同心である父・石橋堅吾(関口宏!笑える名前)の一粒種、彼が出ているシリーズは結構好きです。
田中美佐子さん主演のTVドラマもあるんですが、そちらは成長した姿を演じる長塚京三さんがホントに素敵でした。
おっしゃるとおりざらりとした感触の作品でしたね。
田中裕子さんの存在感は圧倒的でしたね。
ゆら~り漂う感も素敵でした。少年も大きくなったのですね。
長塚さん版は見ていないなあ~
これは、何が元なのだろうか。
外国映画のような話の気がする。
映画版で流れ土工を演じたのは金子研三で、彼は黒テントの役者だったが、今は商業演劇の演出をしている。
ほとんどしゃべりませんが
大変印象的でした。まるで動物のようだなと
思いましたが、黒テントの人だったんですか・・
なるほど~~~「霧の旗」は来月
ケーブルテレビで放送されるので
楽しみにしています。(森雅之も出ますし)
和田勉さんの演出が冴えています。
特に、土工役の佐藤慶さん、土工の人生までもが炙り出されるような演技、お見事です。
宇野さん、中村さん名優お二人の対峙は見ごたえがありました。
そして、忘れてならないのが、巡礼役の清張さんの名演技です。説得力ある名場面です。
「天城越え」タイトルも原作もドラマも素晴らしい!
名優たちが演じる登場人物が
見事に「立って」いて
いつまでも心に残りました。
清張さんも良かった。
忘れられない作品です・・・
私もこのたびあらためて
和田勉演出の「天城越え」、堪能しました。
和田さんはストップモーションを
ここぞと言うときに
使いますね。
私はあのシーンで思わず涙が出てしまったのですが・・
う~~ん
陽ちゃん、読みが深いですね~~~