スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王座戦&破門の選択

2016-10-08 19:26:52 | 将棋
 4日に上山温泉で指された第64期王座戦五番勝負第三局。
 羽生善治王座の先手で糸谷哲郎八段の急戦矢倉。中盤で差がつく将棋でした。
                                     
 先手が歩を打った局面。先手が歩損していますので,こう抑え込みにいくのは発想としてあまり浮かばないように思うのですが,確かな大局観に裏打ちされていたようです。
 先手玉も堅いわけではありませんが後手玉はそれを上回る悪形。ということで△9五歩から仕掛けていったのでしょうが,これが局面の悪化を招く要因になったように思います。
 ▲同歩に△9六歩と垂らすのは常套手段。そこで先手は▲4五歩△同歩と勢いをつけてから▲3七桂と跳ねていきました。これが大きかったようで,後手は▲4五歩は取らずに初志貫徹で△9五香と走るのが優ったようです。反撃を含みに△4四銀右と上がる手に期待したものと思いますが▲5四歩の突き出しがありました。これには△同銀。
 ここで▲9六香と歩をもう1枚入手できるのが先手の強み。ここから△7三角▲6四歩△5五歩という手順は明らかに先手の得で,後手はまだしも角を引かずに△5五歩だったのでしょうが,端から仕掛けたのを逆用されていて,それでも苦しいのではないかと思います。
                                     
 第2図以下は▲5三歩△同金と呼び込んでおいてから▲5六歩と合わせていくのが厳しい攻め。そのまま先手が押し切っています。
                                       
 3連勝で羽生王座の防衛。第40期,41期,42期,43期,44期,45期,46期,47期,48期,49期,50期,51期,52期,53期,54期,55期,56期,57期,58期,60期,61期,62期,63期に続き5連覇で通算24期目の王座になります。

 「シナゴーグ離脱の弁明書」は発見されていないのですから,内容がどういったものであったのかについては推測することしかできません。多くの学者の間で一致しているのは,その弁明書の中身には,後の『神学・政治論Tractatus Theologico-Politicus』において論じられている事柄が先取りするような形で含まれていたというものです。
 僕は,この弁明書の標題から察して,それはスピノザがシナゴーグをなぜ離脱しなければならないのかということに関係した内容が記述されていたと推定しています。つまりシナゴーグを離脱すること,他面からいえば破門の宣告を受けるということを前提として,そのことの正当性を弁明したのだと推定しているのです。そしてこの推定は,多くの学者の間で共有されてる見解と隔たりはないものと思っています。なぜなら,『神学・政治論』というのは哲学する自由を守るという意図から書かれたものですが,シナゴーグに留まっている限りはスピノザが自由に思考することは制限され,逆にいえばスピノザ自身が哲学する自由を行使するためには,シナゴーグからすすんで離脱する必要があったと考えられるからです。
 だからといって,破門を宣告されることすなわちシナゴーグから離脱することが,スピノザにとって悲劇的な出来事ではなかったというようには僕は考えません。いい換えればそれがスピノザに対して悲しみtristitiaを齎す出来事ではなかったとは考えません。僕はこの点においては,清水の説明が絶対に正しいとはいいませんが,かといって絶対に誤っているとも考えません。おそらくこのことは,スピノザの哲学において善悪がどういう概念であったかに注意すれば説明できます。
 スピノザにとって破門を宣告されることが悲しみを齎すとすれば,それ自体でみればそのことはスピノザにとっての悪malumです。一方,シナゴーグに留まって哲学する自由を行使することを部分的に制限されるならば,そのこともまたスピノザにとってはそれ自体で悪,すなわち悲しみを齎すことであった筈です。このとき,スピノザにとっては後者の悪がより大なる悪であり,前者はそれ自体では悪でも,より大きな悪を回避するという意味ではむしろ善bonumだったのです。
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