スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

試合までの過程&待てセリヌンティウス

2016-09-18 19:18:20 | NOAH
 『1964年のジャイアント馬場』の柳澤の解釈として僕が問題視するのは,試合内容の解釈というより,その試合の決着のつけ方に関する馬場のアドバイスにあります。これをみるためにはなぜその試合が組まれたかを復習しておく必要があります。
                                   
 1990年4月23日に天龍源一郎が全日本を離脱。次のスーパーパワーシリーズの開幕戦が5月14日の東京都体育館でした。そしてこの日にタイガー・マスクと川田利明が組み,谷津嘉章サムソン・冬木組と対戦。谷津の雑感⑤にあるように,試合中に谷津がタイガーのマスクに手を掛け,最終的に指示されたパートナーの川田がタイガーのマスクを外しました。素顔の三沢光晴に戻ったのです。
 これは最終的に馬場が決定したことだと僕は考えています。天龍の離脱でジャンボ・鶴田と戦う日本人のライバルが不在になりました。そういう選手が必要とされたために,三沢に白羽の矢が立ったということであったと考えます。この流れでシリーズの最終戦,6月8日の日本武道館大会で組まれたのが三沢と鶴田のシングルマッチでした。
 この時点では三沢には鶴田と伍していくための実績というものが決定的に欠けていました。体格差も大きかったので,ファンも三沢が天龍に代わって鶴田のライバルとなり得るのかという点に関しては半信半疑であった,あるいは無理と考えるファンの方が多かったとしてもおかしくありません。ですから三沢が天龍に代わり得る存在であるということを示すためには,この試合では三沢が勝つのが望ましかったことになります。そしてそれは会社として望ましいということですから,経営者としての馬場にとってもそうなった方がよいと思えたのも確かだと僕は思います。実際に試合は三沢が勝つわけですが,三沢が勝つことを最終的に決定したのも,やはり馬場であった筈だと僕は考えます。
 基本的に柳澤もこの流れで解釈していると思います。つまり試合が組まれる過程とその結果の決定については,僕は柳澤の解釈に同意できます。

 人質となったセリヌンティウスはただ城内でメロスが帰ってくるのを待っていただけです。それに対してメロスはかなりの距離を短期間で往復し,かつ暴君ディオニスの差し金であった山賊との戦闘にも勝利した上で期限ぎりぎりで城に帰ってきました。だからこれを物語にするときに『走れメロス』という標題の下にメロスの物語として記述するというのは僕には理解できます。ですがただ待っているだけだったとはいえ,セリヌンティウスもひとりの人間ですから,ただメロスが帰る動機となる道具として現実的に存在しているというものではありません。いわんやディオニスが改心するための道具にすぎないわけでもないのです。
 このことは,『走れメロス』を,ディオニスが改心する物語として読んでみれば明白であるでしょう。ディオニスの改心の動機となっているのは,もしも期限に間に合わなければ処刑を免れることができたメロス,したがって意図的にそのようにすることもできた筈のメロスが,セリヌンティウスが処刑されるのを防ぐために帰ってきたことでした。だからメロスがこの物語においてディオニスの改心のためのひとつの道具にすぎないということはあり得ないでしょう。それと同じように,セリヌンティウスもメロスが帰ってくるときの動機の道具にすぎないわけではない筈なのです。同様にディオニスが改心するときの道具のひとつ,実際のテクストはその道具のひとつにもなっていないように記述されているともいえますが,そういう道具のひとつではないのです。メロスにはメロスに,そしてディオニスにはディオニスに固有の物語があるように,セリヌンティウスにはセリヌンティウスの物語があるのでなければなりません。『走れメロス』に倣っていうならば,『待てセリヌンティウス』という別個の物語がある筈です。ですがそれはテクストの表面には出現していません。そこで『走れメロス』のテクストと齟齬を来さないような仕方で,セリヌンティウスの物語がどういったものであるか考えてみましょう。これを考えることによって,実際の物語のプロットの構成に難があると僕が感じる理由も明らかにすることができると思います。
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